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宮崎市南部の青島を海沿いに歩くなら、干潮の前後に弥生橋を渡り、鬼の洗濯板を眺めながら周囲約1.5kmの島を一周するのが基本の歩き方です。出発の時刻は、潮の時刻から決めます。陸から島までは約150mの橋で、歩いて渡れば誰でも島に入れます。
鬼の洗濯板と呼ばれているのは、青島をぐるりと取り囲む海岸で、波を打つように筋が並んでいる岩場のことです。その姿が洗濯板にそっくりなので、この呼び名がつきました。宮崎を代表する景勝地として親しまれている場所です。
島の中には青島神社があり、島そのものが神社の境内地になっています。岩場の景色だけでなく、神話にまつわる社殿や、南国らしい植物の林も同じ散策の中で見られます。橋の対岸の植物園や、少し離れた道の駅まで足をのばすと、半日ほどの散策になるでしょう。

鬼の洗濯板は干潮の前後に歩き、満潮時はほぼ水の下
鬼の洗濯板を見に行くなら、干潮の前後に時間を合わせてください。満潮のころには岩場のほとんどが海に沈み、筋模様はほぼ見えません。青島神社も、岩場を見たい参拝者に対して、干潮時の前後に訪れるよう案内しています。
潮が引くと、幅20〜100mほどの平らな岩の面が水の上に姿を現します。遠くから眺めると、巨大な洗濯板が海に置かれているように見えるのはこのときです。干潮時には、青島から南の巾着島までの、およそ8km続く海岸線でこの景観が見られるとされています。
干潮の時刻は気象庁の潮位表で確かめる
干潮の時刻は季節によってずれます。気象庁のホームページで公開されている潮位表を開き、訪れる日の干潮時刻を見ておくと安心です。満潮と干潮の差が大きくなる大潮は、新月や満月のころにめぐってきます。
青島のウォーキングコースはJR青島駅を起点にする
歩いて回るなら、出発点はJR日南線の青島駅がいちばん便利です。駅から青島までは徒歩で約10分、青島神社までは約15分で着きます。
車なら宮崎ICから約12分、駐車場は1回500円が目安
車の場合、宮崎ICから国道220号を通って青島海水浴場まで約11km、時間にして約12分です。島の中には車が入れないので、橋の手前の駐車場に停めて歩きます。
青島参道口の有料駐車場は約100台が停められ、料金は1回500円で、24時を境に切り替わります。周辺のほかの有料駐車場も、1回500円ほどが相場です。無料で停めたいなら青島園地駐車場があります。青島海水浴場には海水浴客専用の駐車場が用意されておらず、案内先はJR青島駅のすぐ隣にある無料駐車場です。料金や運用は変更されることがあるので、着いたら現地の表示を見てください。
混雑は午前10時から14時ごろがピーク
青島が混み合うのは、ゴールデンウィークのような行楽シーズンです。無料の駐車場も有料の駐車場も午前中のうちに埋まりやすく、8時より前ならまだ比較的余裕があります。11時から14時ごろには、ほぼ満車になる日もあります。
島の周辺や参道が人でいっぱいになるのは、午前10時から14時ごろです。ゆっくり歩きたい人には、朝の早い時間か夕方が向いています。
弥生橋を渡り、岩場に囲まれた島を一周するのが定番
島に入るには、「弥生橋」を歩いて渡ります。車で橋を渡ることはできません。満潮の時間帯でも、橋を渡ること自体には問題がありません。
青島神社にお参りしてから、海岸に出て岩場を眺めつつ島を一周する、というのが定番の回り方です。
かかる時間は、橋を渡って神社の中を見て回るだけなら40分から60分くらいです。島の外周まで歩くなら、それより長めにみておきます。参拝できる時間は午前6時から日没までです。
鬼の洗濯板は硬い砂岩と軟らかい泥岩が交互に重なった岩場
鬼の洗濯板の正式な名前は「青島の隆起海床と奇形波蝕痕」です。1934年(昭和9年)5月1日に国の天然記念物となり、宮崎市が管理団体を務めています。
筋模様の出っ張った部分は硬い砂岩で、へこんだ部分は軟らかい泥岩です。波に洗われるうちに軟らかい泥岩のほうが先に削られ、硬い砂岩が畝のように残りました。砂岩と泥岩の一組は、合わせて数十cmほどの厚さしかありません。
砂岩も泥岩も、砂や泥が層状にたまって固まった岩なので、どちらも堆積岩に分類されます。両者を分けるのは粒の大きさで、粒が1/16mmから2mmなら砂岩、1/16mm以下なら泥岩と呼びます。泥岩の粒は肉眼では一つずつ見分けにくいほど細かく、層になった構造をしています。細かい泥は沖のほうに、砂は岸に近いほうにたまりやすいため、二つの岩の違いは、積もった場所の違いでもあります。
数百万年前の海底にたまった宮崎層群が持ち上がった
鬼の洗濯板のもとになったのは、宮崎層群という地層です。宮崎層群は宮崎平野の地下に広がる新第三紀の地層で、海の底でできました。砂岩と泥岩、それに両者が交互に重なった互層が主体で、分類上は堆積軟岩に入ります。積もった時期については、約700万年前から200万年前ごろという研究報告があります。
数百万年前に深い海の底でたまったこの地層は、のちの地殻変動で傾きながら隆起しました。そして浅い海で波に削られ、海面に顔を出したのが今の鬼の洗濯板です。宮崎層群には、凝灰岩の層も挟まっています。
縞模様には海底で起きた巨大地震の跡が刻まれている
この縞模様は、当時の海底で起きた巨大地震によって積もったものとされています。地震のたびに土石流のような流れが起き、運ばれた砂や泥がたまりました。少なくとも数百回の大地震があったといわれます。
この流れを混濁流といいます。水より密度の高い、泥や砂を含んだ流れで、海底の斜面を高速で下ります。地震や洪水、海底地すべりが起きて、大陸棚の斜面などにたまっていた堆積物が舞い上がると、この流れが生まれます。勢いがおさまると運ばれてきた堆積物が沈み、その地層はタービダイトと名づけられています。
タービダイトの層は、下ほど粒が粗く、上にいくほど細かくなっています。これを「級化層理」といい、タービダイトのいちばんの特徴です。この積もり方が何度も繰り返されると、砂の層と泥の層が交互に重なる縞模様ができあがります。タービダイトは、深い海の底で過去に起きた地震の歴史を調べる手がかりにもなります。ただし、洪水や大波でできるタービダイトもあります。
干潮時に現れる平らな岩場は波食台
青島の干潮時に見える平らな岩の面は、波食台と呼ばれる地形です。岩の海岸が波の力で削られてできた平らな岩盤のことで、海食台や波食棚と呼ばれる場合もあります。
青島神社は海幸彦・山幸彦の神話の舞台とされる縁結びの社
青島神社に祀られているのは、彦火火出見命(ひこほほでみのみこと)、豊玉姫命(とよたまひめのみこと)、塩筒大神(しおつつのおおかみ)の三柱の神です。青島は「海幸彦・山幸彦」の神話の舞台と伝えられ、山幸彦の別名が彦火火出見命にあたります。山幸彦と海神の娘である豊玉姫が結ばれた話から、青島神社は縁結びの神として信仰を集めてきました。
神話は、兄の海幸彦と弟の山幸彦が道具を取り替え、互いの仕事をやってみるところから始まります。兄の釣り針を借りて海に出た山幸彦は、その針をなくしてしまいました。困り果てた山幸彦に、塩椎(しおつち)という老人が、海神の宮殿を探すよう知恵を授けます。海神の宮に着いた山幸彦は豊玉姫と結ばれ、三年を過ごしてから地上に戻りました。釣り針も見つかって兄に返し、兄弟の争いは収まります。
山幸彦と豊玉姫の子は鵜葺草葺不合命といい、さらにその子どもが、初代の天皇とされる神武天皇です。つまり山幸彦は、神武天皇の祖父にあたります。
島の中心にある元宮へは御成道を歩く
本殿から「御成道」という参道を進むと、島の中心にある元宮に着きます。道の両側には、熱帯の雰囲気をもつビロウの林が茂っています。
元宮は古い歴史をもつ場所で、地下からは土器や骨、貝殻などが出土しました。弥生時代の儀式で使われた品とみられています。元宮では、願い事を紙縒に書き、それをそばの木や縄に結んでからお参りします。1907年には、当時皇太子だった嘉仁親王(のちの大正天皇)が参拝しており、その後も皇族の参拝が続いています。
青島神社では、願いを唱えながら皿を投げる「天の平瓮」という一風変わった神事も行われています。
毎年1月の裸まいりでは新春の海に入る
冬の青島神社では、毎年1月に「裸まいり」が行われます。海から戻った彦火火出見命を村人たちが迎えたとき、衣装を整える間もなく普段着を脱ぎ、裸のまま出迎えたという古事がもとになっています。年明けの海に大勢がそろって入る伝統行事です。この日に海へ入れば、お百度参りを10回したのと同じだけの御利益を授かるといわれます。
2026年は1月18日(日)に開かれました。過去には、2023年が1月21日、2022年が1月22日に開かれています。参加の申し込みは当日には受け付けていません。
4,300本から5,000本ほどのビロウが茂る青島は植物群落ごと天然記念物
青島に生えている植物は226種あり、そのうち27種が熱帯や亜熱帯の植物です。島の植物の集まりは「青島亜熱帯性植物群落」の名で、国から天然記念物の指定を受けています。
島でいちばん多い木はビロウで、本数は4,300本から5,000本ほど、最も古いものは樹齢300年から350年ほどです。ビロウは一年中葉を落とさないヤシ科の植物です。学名をLivistona chinensisといいます。高さは最大で15mほどまで伸び、春に白や黄色の小さな花をつけます。扇の形をした葉は、平安時代に重宝されたそうです。分布は四国、九州、沖縄、台湾で、青島はビロウなどヤシ科植物の群生地として、北半球で最も北にあるといわれます。
ビロウが多い理由は遺存説が有力
なぜ青島にこれほどビロウが多いのかは、まだ完全にはわかっていません。説は二つあります。一つは、種や幹が黒潮に乗って南から流れ着いたという説です。黒潮とは、東シナ海から日本の太平洋岸に沿って北へ流れる暖流のことです。もう一つは、地球がとても暖かかった第三紀以前に広く茂っていた植物が、暖かい青島に残ったとする遺存説で、今はこちらが有力です。
散策の締めは宮交ボタニックガーデン青島と道の駅フェニックス
島を一周したあとの寄り道先は、橋の対岸にある植物園と、車で少し走った先の道の駅です。
宮交ボタニックガーデン青島は入園無料で約600種の植物がそろう
宮交ボタニックガーデン青島(県立青島亜熱帯植物園)は、入園料のかからない植物園です。JR青島駅からは歩いて約10分です。
園内には熱帯や亜熱帯の植物が約600種、2万5000本植えられていて、ビロウ、ヤシ、ソテツ、ハイビスカスなどが見られます。温室には大温室と熱帯果樹温室があり、パイナップルやパパイヤを栽培しているのは果樹温室のほうです。温室の中はブーゲンビリアの種類が豊富です。大温室の西側にはマーライオン像が立っていて、これはシンガポール植物園と姉妹園の提携を結んだ記念のものです。海沿いの遊歩道に出ると、青島と青島神社の鳥居が見えます。
道の駅フェニックスの展望デッキから鬼の洗濯板を見下ろす
道の駅フェニックスは、青島から車で約8分の場所にあります。展望デッキに立つと、道路の向こう側に鬼の洗濯板が広がり、フェニックス(ヤシ)と岩場を一緒に見下ろせます。散策コースの終盤に立ち寄る場所として紹介されています。
物産館には、宮崎県産の完熟マンゴーなどの果物や焼酎といった特産品、観光みやげが並びます。看板商品は「マンゴーソフトクリーム」と「日向夏ソフトクリーム」の2種類です。ほかにも、明日葉やえびを使った珍しい味のソフトクリームがそろいます。ご当地グルメや直売所も、この道の駅の特徴です。営業はおおむね9時から17時で、定休日はありません。
鬼の洗濯板を歩くときの注意は足元と天然記念物の保護
遊歩道には岩場や砂利道の区間があるので、靴はスニーカーのような歩きやすいものにしてください。波をかぶった岩は滑りやすく、弥生橋の路面が海水で湿っている日もあります。ヒールのある靴やサンダルは、この散策には向きません。
もう一つ守ってほしいのが、岩や植物に手を加えないことです。鬼の洗濯板も島の植物も国の天然記念物で、指定物件に手を加えて姿を変えることや、保存に差し障る行為は、文化庁長官から許可を得なければできません。島の自然は厳しく保護されていて、植物の採取などは禁じられています。
まとめ
青島は、橋を一本渡れば、神話が伝わる神社と国指定の天然記念物の岩場を一度に歩ける小さな島です。干潮の前後に合わせ、歩きやすい靴で出かければ、鬼の洗濯板をいちばんよい状態で眺められます。島の一周に加えて、青島神社へのお参りや対岸の植物園、道の駅からの眺めまで回れば、宮崎市の海沿いを半日ほどかけて歩く散策になります。








