熊本市の水前寺江津湖公園、湧水の湖畔を歩くウォーキングコースは約6キロ

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江津湖のほとりを歩くなら、上江津湖と下江津湖をぐるりと囲む周囲約6キロメートルが、ひと回りの距離の目安です。湖の縁には遊歩道が通っていて、湧水をたたえた湖を眺めながら歩けます。入園は自由で、料金もかかりません。

水前寺江津湖公園は、熊本市の中心部から東へ少し足をのばしたところにあります。湧水がつくった湖と、江戸時代の大名庭園である水前寺成趣園を、ひとつの公園としてつないでいるのが特徴です。熊本市の公式ページを開くと、江津湖、水前寺成趣園、健軍水源地の3つが、このあたりに集まる湧水群として並んでいます。

江津湖は江戸時代から行楽地として人が集まった場所で、今も熊本市民のオアシスとして親しまれています。

目次

湖畔を歩くウォーキングコースは江津湖の外周約6キロが目安

江津湖は、上江津湖と下江津湖の2つに分かれた、ひょうたんのような形の湖です。端から端までの長さは2.5キロメートルあり、湖面は約50ヘクタールに広がります。

湖畔の遊歩道沿いには、夏目漱石や中村汀女らの文学碑がところどころに立っています。環境省は名水百選の紹介のなかで、こうした碑をたどりながら散策を楽しめる場所として江津湖を取り上げています。

加勢川に沿って整備された遊歩道もあります。この遊歩道を歩いていくと、そのまま江津湖に行き着きます。

下江津湖ではボートやカヤックで湖面から景色を見られる

下江津湖では、ボートに乗って湖に出られます。遊歩道に加えて、民間のボートハウスもあります。

夕暮れどきの湖をカヤックでこぐ体験も催行されています。集合場所は下江津湖の漕艇部艇庫駐車場で、料金は5,000円からです。岸から見ていた水辺を、今度は水の上から見返すことになります。

園内はサイクリングやペット連れの散歩もできる

園内は自転車で回ることもできます。ペットを連れて歩くのも可能ですが、リードをつけること、排泄物を持ち帰ることが条件です。

歩くときに気をつけたいのは、水辺ならではの危険です。水際は足を取られやすく、増水や冠水が起きることもあります。熱中症や虫にも注意してください。

水前寺江津湖公園の広さは126.9ヘクタールで6つの地区に分かれる

公園の範囲は、南北が約3.5キロメートル、東西が約2.0キロメートルに及び、面積は126.9ヘクタールあります。熊本市はこの公園を、全国でも有数の湿地を抱える広域公園と位置づけています。

6地区と主な施設

園内は、水前寺地区、出水地区、上江津地区、下江津地区、庄口地区、広木地区の6つの地区に分けられています。

地区のなかには、庭園や運動施設、文化施設が点在します。水前寺成趣園のほか、熊本県立図書館、くまもと文学・歴史館、市総合体育館、青年会館、熊本市動植物園があり、水前寺江津湖公園サービスセンターも園内にあります。

熊本市動植物園の前身である熊本動物園は、1929年(昭和4年)に開園しました。日本で6番目、九州では初めての動物園です。現在の敷地は、もともと下江津湖だった場所の一部を埋めて造成したものです。

水遊びは水前寺児童公園と上江津地区の湧水池で

水に入って遊べる場所もあります。水前寺地区では水前寺児童公園のちびっこプール、上江津地区では湧水池が使えます。

広木地区では、芝生のあいだを湧き水の小川が流れています。

1960年の計画決定から1996年の開設まで

公園の始まりは、昭和35年(1960年)5月までさかのぼります。このとき、上江津湖地区が都市計画公園(総合公園)として計画決定されました。

その後、周りの地区をまとめていく形で区域が広がります。1982年には水前寺成趣園などが加わり、名称と区域が変わりました。広域公園として開設されたのは1996年のことです。

広域公園の目安50ヘクタールを大きく上回る規模

水前寺江津湖公園は、都市公園の種類でいうと「広域公園」に当たります。広域公園とは、ひとつの市町村にとどまらない、広い範囲から寄せられるレクリエーションの需要に応えるための大規模公園のことです。

配置の目安は、地方生活圏などの広域ブロックごとに1か所、面積50ヘクタール以上とされています。126.9ヘクタールという広さは、その目安を大きく上回ります。

湧水めぐりの見どころは上江津湖付近の湧水群と水前寺成趣園

湧水を目当てに歩くなら、熊本市が公開している湧水マップが手がかりになります。マップには、動植物園の南門のそばで湧く水、菅原神社の境内の湧水、芭蕉苑のなかの湧水、そして上江津湖のまわりに集まる湧水群が載っています。

水前寺成趣園は、湧き出る池を庭の中心に置いた、江戸時代を代表する大名庭園です。園内には細川家ゆかりの出水神社が建ち、「長寿の水」と名づけられた湧水もあります。

水前寺成趣園は細川家の藩主三代が1630年代から1680年ごろまで手がけた

成趣園の始まりは、熊本藩の初代藩主である細川忠利が1630年代に建てた御茶屋です。そこから細川光尚、細川綱利へと引き継がれ、1680年ごろまで3代の藩主が庭づくりを続けました。

池に引き込まれているのは阿蘇山の湧水です。池の向こう岸には、富士山に見立てた築山が盛られています。

「成趣園」の名の出どころは、陶淵明(中国・東晋の詩人)が書いた「帰去来兮辞」です。そのなかの「園日涉以成趣」という一句から取ったと伝わっています。

回遊式庭園は池のまわりを歩いて景色の変化を楽しむ庭

成趣園は回遊式庭園です。回遊式庭園とは、池を真ん中に据え、そのまわりを歩きながら移り変わる景色を味わう形式の庭園を指します。

湖畔の散策と組み合わせると、同じ湧水を、庭園の池と、自然の湖という2つの姿で見比べられます。

江津湖の湧水は日量約58万トンで熊本市最大の湧水池

熊本市は江津湖を、日量約58万トン(令和3年度)の水が湧く、市内でいちばん大きな湧水池と説明しています。市はこの湖を、熊本の水の循環を象徴する存在としても扱っています。

阿蘇に降った雨が15年から20年かけて湧き出る

湖の水がどこから来るのかをたどると、阿蘇に行き着きます。阿蘇を源とする白川の中流域では、水田などから雨水が地下へしみ込みます。その水が15年から20年という時間をかけて地下を進み、水前寺や江津湖のあたりで地表に湧き出てくる仕組みです。

水が地下にしみ込みやすいのは、地質のおかげです。阿蘇山は4度の大噴火で火山灰を積み重ねてきました。この火山灰の層はすき間が多く、降った雨が地下水になりやすい性質を持っています。

熊本市の水道水は100パーセント地下水

熊本市の水道は、水源のすべてを地下水に頼っています。熊本地域(熊本市など11市町村で、人口は約100万人)に広げて見ても、水道の水源はほぼ地下水です。

「日本一の地下水都市」という呼び方も、この点から来ています。日本一なのは地下水を汲み上げる量ではありません。水道水源をすべて地下水でまかなう都市として、人口の規模が日本一だという意味です。

湧水群のひとつである健軍水源地は、熊本市の水道水のおよそ4分の1を受け持つ、市内最大の水源地です。

一方で、地下水には不安材料もあります。都市圏が広がったことなどから、地下へしみ込む水(かん養量)が減ること、地下水位が下がること、硝酸性窒素で水質が悪くなることが心配されています。

2004年度から白川中流域の水田で地下水涵養を続けている

涵養(かんよう)とは、雨水や川の水を地面から地下へしみ込ませ、地下の帯水層にたまる水を増やすことです。

熊本地域では地下水位が長い目で見て下がり続け、江津湖から湧く水も減る傾向にありました。そこで2004年度(平成16年度)から、白川中流域などで人の手による地下水涵養が始まりました。

使われているのは「湛水(たんすい)」という方法です。転作田などの田んぼに水を張り、その水をそのまま地下へしみ込ませます。熊本市は、白川中流域の農家が転作水田での営農として湛水をする場合、助成金を出しています。対象になるのは、実施時期が5月から10月で、湛水を途切れさせずに0.5か月以上4か月以内続けた場合などです。

白川中流域の田んぼには、もともと水がしみ込みやすい特徴があります。一帯を開いたのは加藤清正で、約400年前に堰を設けて用水路を通しました。この水田には、ふつうの5倍から10倍もの水がしみ込むとされています。この水田と地質の両方が、地下水が豊かになった要因です。

水田湛水事業を担っているのは、「水循環型営農推進協議会」と「くまもと地下水財団」です。水張りは冬にも行われ、こちらは冬期湛水と呼ばれます。研究報告によると、2004年に湛水の取り組みを始めてから、地下水位が上がる期間は20日ほど長くなりました。熊本市は事業を広げるための経費として2500万円を予算に盛り込んでいます。

江津湖は加藤清正が築いた堤防「江津塘」で生まれた

江津湖は、加藤清正の治水事業のなかで生まれた人造湖とされています。清正は加勢川の右岸に「江津塘(えづども)」という堤防を築きました。この堤で水がせき止められ、川幅が広がって湖になりました。

堤ができる前、このあたりは広い湧水地帯だったと伝わっています。江津塘には清正堤という別名もあります。築いた当時の様子は、『肥後国誌』という江戸時代の地誌に記録が残っています。いまも公園の歴史資源のひとつとして残る堤です。

名水百選には2008年に「水前寺江津湖湧水群」として選ばれた

江津湖は、環境省の名水百選に名を連ねています。選ばれたのは2008年の「平成の名水百選」で、登録名は「水前寺江津湖湧水群」です。環境省の紹介では、熊本市の水のシンボルとして扱われています。

名水百選には、昭和と平成の2つの選定があります。先にあったのは1985年(昭和60年)の「昭和の名水百選」で、当時の環境庁が選びました。全国の澄んだ水辺を見直し、守ることの大切さを広く知ってもらうための選定です。都道府県から推薦された候補を専門家の委員会が審査し、湧水や河川、地下水など100か所を選びました。

熊本県からは、昭和の選定で菊池水源、白川水源、轟水源、池山水源の4か所が入りました。平成の選定では、水前寺江津湖湧水群に加えて、金峰山湧水群、南阿蘇湧水群、六嘉湧水群・浮島の4か所が選ばれています。

熊本市は、昭和と平成を合わせた熊本県の選定数8か所を、全国で最も多い数として紹介しています。

湖畔の文学碑と水前寺界隈の約120分コース

江津湖のほとりは、俳人中村汀女の生まれ故郷です。誕生は明治33年(1900年)でした。生まれた家はもう残っていません。それでも江津湖といえば汀女、と結びつけて語られる土地です。

水前寺の周辺には、夏目漱石の第三旧居があります。漱石はこの家から小天への旅に出ており、その後に小説「草枕」が発表されています。建物の中には入れません。ただ、敷地には漢詩碑が立っていて、散策の途中で立ち寄れます。

水前寺の界隈をしっかり歩きたい人には、熊本商工会議所がまとめた約120分のコースがあります。水前寺成趣園や熊本洋学校教師館(ジェーンズ邸)などをめぐる道順です。

江津湖には約600種の動植物がすみ野鳥は2年間で59種を確認

熊本市によると、江津湖には約600種の動植物がすんでおり、そのなかには絶滅危惧種も多く含まれます。上江津湖には、国が天然記念物に指定したスイゼンジノリの発生地もあります。

水前寺江津湖公園サービスセンターによれば、カメラを構える人たちのお目当ては、野鳥のなかでもカワセミとミサゴです。ある中学校が上江津湖で調べたところ、2年間で59種の野鳥が見つかり、カモ類などの水鳥が目立ちました。冬になると多くの冬鳥がやってきて、熊本市は観察会も開いています。

熊本市が江津湖の生き物として挙げているのは、ほかにカヤネズミ、ササゴイ、ヒメバイカモなどです。ササゴイは夏に渡ってくる鳥で、釣りをすることで知られています。ヒメバイカモは水草です。

ミサゴは水面に飛び込んで魚をつかむ猛禽

ミサゴは、魚をおもな獲物にする猛禽です。体長は50センチから60センチほどで、白と黒のくっきりした色分けが目印になります。翼を広げるとトビと同じくらいの大きさですが、体つきはトビよりほっそりしています。海岸や大きな川、湖沼で暮らし、1年を通して見られる留鳥です。

狩りでは、水面の上をゆっくり飛び、ホバリングから一気に急降下し、水に飛び込んで魚をつかみます。獲物が大きすぎて持ち上がらず、失敗することもあるそうです。

ヒメバイカモは梅に似た小さな花をつける水草

分類でいうと、ヒメバイカモはキンポウゲ科キンポウゲ属に入ります。バイカモに比べて葉も花も小ぶりで、花の柄があまり長く伸びません。湖沼や河川に生えるほか、冬の水田やため池で見つかる例も多い植物です。バイカモという名前は、花が梅の花に似ていることから付きました。

スイゼンジノリは1872年に江津湖で見つかった淡水の藍藻

スイゼンジノリは、水前寺と江津湖のまわりに昔から自生してきた、食べられる藍藻(シアノバクテリア)の一種で、淡水で育ちます。学名ではAphanothece sacrumと表記されます。発見の記録は1872年(明治5年)で、見つかった場所は熊本市の水前寺と江津湖でした。

日本では古くから食用にされてきました。養殖の歴史を300年以上とみる研究報告もあります。保水性の高い「サクラン」という多糖を含んでいるのも特徴です。

その歩みは平坦ではありません。1953年(昭和28年)6月26日の白川の大水害では3万を超える家屋が浸水し、スイゼンジノリもいったん姿を消しました。野生の株が再び確認されたのは1966年のことでした。その後も水の富栄養化で数が減り続け、1997年には絶滅危惧I類に分類されています。

駐車場は園内5か所に全360台で無料

園内の5か所に合わせて360台分の無料駐車場があります。使える時間はふだん9時から20時までです。

ただし、春休みやゴールデンウィーク、夏休みは、早い時間のうちに満車になりやすい時期です。車なら、JR熊本駅からは約27分、九州自動車道の益城熊本空港ICを降りてからは約20分かかります。

市電の電停から各地区までの徒歩時間

市電を使う場合は、目的の地区によって降りる電停が変わります。

行き先の地区最寄りの電停電停からの徒歩時間
水前寺地区・出水地区市立体育館前2分
上江津地区八丁馬場約5分
下江津地区動植物園入口約15分
広木地区健軍町約20分

トイレは24時間使えるがトイレットペーパーは持参

園内のトイレのうち、旧体育館跡地にあるものや、上江津地区の南側と下江津地区の西側にあるものなどは、熊本県の「おでかけ安心トイレ」の協力施設になっています。どれも24時間使えます。

気をつけたいのは、トイレットペーパーが備え付けられていない点です。必要な人は各自で持っていってください。

江津湖では外来種と外来水草の対策が続いている

江津湖の在来種は、外来種に捕食されて数を減らしているとされています。熊本市は国土交通省の熊本河川国道事務所と組んで、魚類の調査や捕獲調査を進めてきました。湖で確認された外来種の一覧には、ブルーギルやオオクチバスなどが並んでいます。

水草の問題もあります。下江津湖ではウオーターレタスやブラジルチドメグサなどの外来の水草が増え、枯れたあとにヘドロになってしまいます。湖面に広がった外来の水草は、緑川水系水草対策連絡協議会が、加勢川へ流れ出す前に取り除いています。

市民や企業も清掃に加わっています。肥後東ライオンズクラブ主催の清掃には約130人のボランティアが集まり、湖から外来の水草を引き上げました。Honda Cars熊本も、江津湖の清掃を続けています。

2026年5月17日には、江津湖ボランティア一斉清掃が開かれました。主催は熊本市で、熊本市ローイング協会と肥後東ライオンズクラブが共催に加わっています。時間は7時30分から9時30分まで、場所は上江津と下江津の両地区です。

お金の面からの支えもあります。熊本市は、江津湖の希少種を守る活動や外来生物の駆除などに使うため、企業版ふるさと納税での寄附を受け付けています。市民といっしょに進める在来種の保全や外来種対策を、資金で後押しする仕組みです。

まとめ

江津湖の湖畔を歩くなら、ひょうたん形の湖をひと回りする約6キロメートルが距離の目安です。遊歩道沿いには夏目漱石や中村汀女らの文学碑があり、加勢川沿いの遊歩道から湖へ入ることもできます。

湖を満たす水は、阿蘇に降った雨が15年から20年かけて地下を通り、湧き出たものです。熊本市はこの江津湖を日量約58万トン(令和3年度)が湧く市内最大の湧水池と説明しており、2008年には平成の名水百選に「水前寺江津湖湧水群」として選ばれました。

126.9ヘクタールの園内には、細川家の藩主三代が造った水前寺成趣園や、1929年開園の動物園を前身とする熊本市動植物園もあります。駐車場は5か所に全360台で無料ですが、春休みやゴールデンウィーク、夏休みは、早い時間帯のうちに埋まりやすくなります。

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