ウォーカブル推進都市とは?全国397都市の事例とウォーキングコース整備を解説

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ウォーカブル推進都市とは、国土交通省が推進する「居心地が良く歩きたくなるまちなか」づくりに賛同し、事業推進に取り組む自治体のことです。2025年11月時点で全国397都市がこの取り組みに参加しており、姫路市や大阪市、名古屋市、札幌市など各地で先進的なウォーキングコースの整備や歩行者空間の創出が進められています。本記事では、ウォーカブル推進都市の概要から全国各地の具体的な事例、そして自治体が整備するウォーキングコースまで、最新の情報を詳しく解説します。これからウォーカブルなまちづくりに取り組もうとしている自治体担当者の方や、歩いて暮らせるまちに興味をお持ちの方にとって、参考となる情報をお届けします。

目次

ウォーカブル推進都市とは何か

ウォーカブルという言葉は、「歩く(walk)」と「できる(able)」を組み合わせた造語であり、「歩きやすい」「歩くのが楽しい」という意味を持っています。国土交通省では、ウォーカブルなまちなかを「居心地が良く歩きたくなるまちなか」と定義しています。この概念が日本で注目されるようになった背景には、少子高齢化や人口減少という深刻な社会的課題があります。

特に地方都市では、自動車の普及によって郊外に大型商業施設が建設され、その一方で中心市街地の空洞化が進んできました。車社会の発展は利便性をもたらした反面、交通渋滞や大気汚染、歩行者や自転車の安全性低下、地域のにぎわい喪失といった様々な問題も引き起こしてきたのです。こうした課題に対応するため、国は車中心から人中心のまちへの転換を図っています。

国土交通省は2019年に「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」を実施し、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」をつくる方針を固めました。その中で「WEDO」という4つのキーワードが掲げられています。WEDOとは、Walkable(歩きたくなる)、Eyelevel(まちに開かれた1階部分)、Diversity(多様な人々が集まる)、Open(開かれた空間が心地よい)の頭文字を取った言葉です。この4つの要素を満たすまちづくりが、ウォーカブルシティの基本理念となっています。

ウォーカブル推進都市の参加状況と推移

ウォーカブル推進都市とは、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」づくりを目指す政府の方針に賛同し、事業推進に取り組む自治体のことを指します。国土交通省が2019年7月に募集を開始し、市区町村だけでなく都道府県も参加することができます。参加対象は人口規模の大小に関わらず、首長をはじめ団体として賛同する地方公共団体であり、何らかの取り組みを実施中、あるいは構想等を持つ自治体が参加できる仕組みになっています。

推進都市数は着実に増加を続けてきました。2020年8月時点では160自治体でしたが、2022年6月には328都市、2023年11月には358団体、2024年9月には382自治体へと拡大しました。そして2025年11月時点では397都市に達しており、全国的なムーブメントとなっています。

国による支援制度の充実

国はウォーカブルなまちづくりを推進するため、法律、予算、税制のパッケージによる支援を行っています。2020年度に創設された「まちなかウォーカブル推進事業」は、車中心からひと中心の空間に転換するため、まちなかで街路や公園、広場などを修復・利活用する自治体に対し、必要な経費の半額を国が補助する仕組みです。事業主体は市町村、市町村都市再生協議会、都道府県、民間事業者等であり、国費率は2分の1となっています。

「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」により、市町村がまちなかにおける交流・滞在空間の創出に向けた官民の取り組みをまちづくり計画に位置付けることができるようになりました。令和5年12月時点で、全国102自治体において滞在快適性等向上区域(まちなかウォーカブル区域)が設定・公表されています。

2020年11月に施行された「歩行者利便増進道路」(通称:ほこみち)制度も重要な支援策です。道路管理者が歩道の中に「歩行者の利便増進を図る空間」を定めることができ、特例区域内では道路の占用許可基準が緩和されます。占用期間が通常5年から最長20年まで可能となり、占用者が道路の維持管理に協力することを条件に占用料が10分の1に減額されるというメリットがあります。

さらに国土交通省は「マチミチ会議」という場を設け、自治体の担当者が実践例や課題を持ち寄り、意見交換できる場を提供しています。官民が連携して知見を共有することで、ウォーカブルシティの考え方は全国へと広がりを見せています。

ウォーカブルなまちづくりがもたらす効果

ウォーカブルなまちづくりは、地域経済、住民の健康、まちのにぎわいなど、多方面にわたる効果をもたらすことが国内外の事例で実証されています。ここでは、その具体的な効果について詳しく見ていきます。

地域経済への波及効果

海外の事例を見ると、アメリカのニューヨーク・タイムズスクエアでは、2010年以降に車道を歩行者専用道路に転換したことで、同地区への来訪者数が11%増加しました。また、同様の政策を実施したニューヨークのブルックリン地区の店舗では、近隣地域よりも47%も売上がアップしたという報告があります。

国内においても、大阪の御堂筋では歩行者空間化によって周辺の街路に立地している小売店・飲食店の売上が向上しています。短期的な歩行者空間化でも周辺環境への経済効果が波及し、エリア全体として売上が底上げされたと評価されています。都市研究者のジェフ・スペックは、「歩いて生活できるライフスタイルを選択した世帯ではかなりの節約効果があり、その節約分の多くは地元での消費に回されている」と指摘しており、ウォーカブルなまちづくりが地域経済の活性化に寄与することが示されています。

住民の健康増進効果

ウォーカブルなまちづくりは、住民の健康増進にも大きく寄与します。国土交通省では、各種研究から「歩く」ことの医療費抑制効果が0.065~0.072円/(歩・日)になると推定しています。これは1日1,500歩の歩行量増加で年間約35,000円の医療費抑制効果に相当します。

歩くことは高血圧や肥満のリスクを低減するといわれており、まちがウォーカブルであることは住民の歩行量を増加させる後押しとなります。交通開発政策研究所の研究によると、歩きやすいまちでは大気汚染や交通事故による被害リスクの低減、遊び場が多いことによる子供の成長へのメリットなども報告されています。高齢化社会が進む日本において、歩いて暮らせるまちづくりの健康面での意義は今後ますます高まっていくと考えられます。

にぎわいの創出とコミュニティ活性化

ウォーカブルシティによって人中心のまちづくりをすることで、高齢化が進む地方都市などの関係人口を増やし、にぎわいのあるまちを再構築することが期待されています。車社会であったエリアに人が集えるスペースをつくることで、人中心の空間が生まれ、新たなつながりやにぎわいも生まれます。歩行者空間の拡大は、偶然の出会いや交流を促進し、地域コミュニティの活性化にもつながっています。

全国各地のウォーカブル推進都市の先進事例

全国各地でウォーカブルなまちづくりの取り組みが進んでいます。ここでは、特に先進的な事例として注目される自治体の取り組みを詳しく紹介します。

姫路市の取り組み

姫路市は、ウォーカブルなまちづくりで全国でも先進的な取り組みを進める自治体として知られています。令和3年3月末に策定された姫路市ウォーカブル推進計画は、中心市街地において歩行者優先の居心地が良く歩きたくなるまちなかを目指し、公共空間利活用の仕組みやリノベーションまちづくりなどの取り組みを進めていくための指針となっています。

2015年3月までに実施した姫路駅北駅前広場の再編では、芝生広場や水辺の空間を設け、一般車両を排除した歩きやすい歩行空間を確保しました。JR姫路駅から姫路城まで一直線に延びる大手前通りでも、ベンチのある休憩スペースを設けて人が中心となる空間を創出しています。大手前通りは、日本で初めて大阪市の御堂筋、神戸市の三宮中央通りとともに「歩行者利便増進道路(ほこみち)」として指定された道路の一つです。

姫路市では独自の「ウォーカブル促進プログラム(道路活用ガイドライン)」を作成しました。このプログラムの一環で、産業振興課、都市計画課、道路管理者、警察などで構成される部署横断の会議体「姫路市公共空間活用会議」が設置されました。民間事業者への相談や助言を担当する窓口がチームの全体コーディネートを担当し、ワンストップで相談できる体制が整備されています。また、道路を歩行者天国にして様々なイベントを実施するなど、公共空間利活用の仕組みの検討にも積極的に取り組んでいます。

大阪市・御堂筋の歩行者空間化

御堂筋は、大阪市の南北を貫く延長4.2km、幅員44mの大動脈であり、フルモール化(完全歩行者空間化)を目指した壮大なプロジェクトが進行しています。大阪市では2019年に「御堂筋将来ビジョン」を策定し、御堂筋完成100周年にあたる2037年に車中心から人中心のフルモール化への空間再編を目指しています。

淀屋橋交差点から難波西口交差点間の3.1kmにおいて、「歩行者利便増進道路」に基づく「滞留・賑わい空間」を設けるため、側道を歩行者空間化する工事が進められています。御堂筋の東西に設けられている側道幅は各5mですが、この両側の側道を歩行者空間として再編すると、歩道幅員は片道13.5mと現況の片側幅員と比べ2倍以上広がります。新橋交差点以南の区間では、人に優しく歩きやすい空間を目指した緩速車線の歩道化工事が2025年に完成しました。

「御堂筋まちづくりネットワーク」は大阪市と官民連携し、歩道と緩速車線の一部を使い、仮設の休憩施設を整備・管理運営する「御堂筋パークレット社会実験」を2017年より開始しました。2024年には高麗橋地区において、恒久的な2基目として「いちょうテラス高麗橋」が設置されました。沿道企業が中心となりウォーカブルなまちづくりと「パークストリート」を掲げるエリアマネジメント組織が複数立ち上がっており、「御堂筋まちづくりネットワーク」「御堂筋・長堀21世紀の会」「ミナミまち育てネットワーク」などが取り組みを進めています。

神戸市・三宮中央通り

神戸市の三宮中央通りは、姫路市の大手前通り、大阪市の御堂筋とともに、日本で初めて「歩行者利便増進道路(ほこみち)」として指定されました。三宮中央通りまちづくり協議会がほこみち制度の存在を知り、神戸市に呼びかけて1号指定の取得に至ったという経緯があります。地域の民間団体が主体となって行政に働きかけた好例として、他の地域からも注目を集めています。

名古屋市の取り組み

名古屋市では2020年に「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」が制定されたことを受け、2022年にウォーカブル・景観推進室を新設しました。2024年には「Nagoyaまちなかウォーカブル戦略(Nagoまち戦略)」を策定しています。令和7年度版では、「サードプレイスあふれるNAGOYA」をコンセプトに、人中心の都市空間の創出を推進しています。広大で豊かな道路空間や緑豊かな公園などの都市基盤を活かし、居心地が良く歩きたくなる空間「ウォーカブルなまちなか」の形成を目指しています。

名古屋市ではウォーカブルなまちを目指す取り組みの一つとして、久屋大通公園のリニューアルを実施し、2020年に「Hisaya-odori Park」として整備されました。さらに南エリアの再整備構想案も発表され、「新たな創造が生まれるウォーカブルタウンのコア」というテーマを掲げています。錦通から若宮大通までの約800メートルの区間を4つのゾーンに分けて整備が計画されています。

社会実験イベント「PARK?」は、名古屋市が目指す「新たな創造が生まれるウォーカブルなまちづくり」の具現化に向けて、久屋大通(南エリア)の使い方や過ごし方のアイディアを試行する社会実験として2022年より開始されました。第3弾「PARK?」では、実施範囲を公園だけでなく歩道に拡げ、「公園と沿道が呼び合う空間づくり」の可能性を提案しています。沿道施設前の歩道スペースに「まちなかレストスペース」を設置したり、アートスタンプラリーによるウォーカブルな仕掛けを実施したりしています。

札幌市の取り組み

札幌市では、令和5年10月に策定した「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン(戦略編)」に基づき、「居心地が良く歩きたくなるまち(ウォーカブルシティ)」を実現するため、都心、地域交流拠点、住宅市街地それぞれにおいて、ハード・ソフト両面から効果的な取り組みを推進しています。令和7年度には「(仮称)札幌市ウォーカブルビジョン」の策定を予定しており、「(仮称)Well-Moving City SAPPORO 2045ビジョン」として、2045年を見据えた長期的な計画が検討されています。

2025年7月29日には、「サッポロウォーカブルシンポジウム2025」が開催され、市内各地でまちづくりに取り組む団体が一堂に集いました。会場には135名が集まり、ビジョンの説明や各団体の取り組み発表、トークセッションが行われました。

また、地域団体等が主体となって道路や公園、広場等の公共的空間を活用することでウォーカブルなまちづくりの可能性を検証する「サッポロウォーカブル公募型実証実験」も実施されています。道路上にベンチ等の滞留空間を創出する活動や、道路空間でのイベント開催などが行われており、令和6年11月17日には成果報告会が開催され、平岸、宮の沢、真駒内の3団体から実証実験の成果発表やワークショップが行われました。

仙台市と横浜市の取り組み

仙台市は2019年8月に「ウォーカブル推進都市」に登録しました。行政による公共空間再整備や民間による滞在快適性等向上事業などのハード整備と、民間主体による公共空間利活用の日常化に向けた支援といったソフト施策を両輪で進めています。

横浜市では、「まちなかウォーカブル」の推進に取り組むエリアとして、JR関内駅を中心とする一帯があります。関内駅周辺では複数の拠点開発が進められており、市はこれらの拠点開発をつなぐ「みなと大通り」と「横浜文化体育館へのアクセス動線」という1本の道路を軸にエリア内の回遊性を向上させようと、関連道路の再整備を計画しています。沿道との連携を図りながら歩行者空間の居心地を高め、交流・滞在を促すことで、イノベーションに欠かせない「セレンディピティー(偶然性)」を求める取り組みです。

沼津市の取り組み

沼津市では、連続立体交差事業をきっかけに、沼津駅南側を人中心の街にする計画が進められています。計画の中でリンク&プレイス理論を用いている点が特徴的です。リンク&プレイス理論とは、イギリスのピーター・ジョーンズ氏により提唱された考え方で、リンク(交通)とプレイス(空間)の2つの機能を両輪とする新たな街路機能の考え方です。

行政が取り組むアクションプランとして「沼津市公共空間再編整備計画」、民間と行政が取り組むまちなみづくりのガイドラインとして「沼津市都市空間デザインガイドライン」を策定しました。この両計画を進めていくエンジンとしての役割として「OPEN! NUMAZU」に取り組んでいます。公共空間をひらくことで見える未来の沼津のまちなかの風景を日常へとつなげる取り組みとして位置づけられ、まちなかの実証実験を通して、計画実現に向けたアジャイル的な検証システムを構築しています。

沼津市の社会実験では、期間中に該当エリアの歩行者通行量、滞留者はいずれも大きく増加しました。また時間経過と共に、利用者の属性や行動も多様化し、ベンチに座って飲食や会話をする以外にも、学生が勉強する姿や、パソコンを使って仕事をする方など、様々な行動が見られました。

岡山市の取り組み

岡山市は、魅力と賑わいのある中心市街地の創出に向けて、先進的なウォーカブル事業を展開しています。岡山市の賑わいの核である「岡山駅周辺エリア」と「旧城下町エリア」をつなぐハレまち通り(旧県庁通り)において、車道を2車線から1車線にすることによる歩道の拡幅を行い、快適でゆとりある歩行空間を創出する整備が令和4年3月31日に完成しました。

対象区間は市役所筋から柳川筋までの約600mで、「車中心」から「人優先」の安全で快適な「歩いて楽しい」道路空間の創出を目的としています。デザイン面では、都的(アーバン)で飽きの来ないスタイリッシュなデザインを採用しており、落ち着きのある舗装材の色・パターン、温かみのある照明やアッパーライトによる夜間の良好な景観形成、樹形が美しく季節感のある植栽が特徴です。

道路空間の活用として、沿道事業者と協力して仕組みやルールを作り、特に「1M事業」では道路上に1メートルまでは沿道の店舗がオープンテラス等で使用できるようにしています。官民連携による持続可能な空間活用の仕組みとして注目されています。まち歩きを楽しむ人が憩える空間を増やすため、ハレまち通りから徒歩圏内にある下石井公園に天然芝の広場をつくる計画も進められており、大学と連携してストリートファニチャーを製作するなど、多様な主体との協働も特徴です。国土交通省のウォーカブル推進事業として、第9回マチミチstudy現地勉強会が岡山市「ハレまち通り」で開催されるなど、全国的な先進事例として高く評価されています。

千葉県・千葉市の取り組み

千葉県は、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成を目指し、「ウォーカブル推進都市」となりました。県内では、千葉市、木更津市、松戸市、野田市、習志野市、柏市、市原市、流山市、八千代市、酒々井町、白子町、長柄町がウォーカブル推進都市に参加しています。

千葉市では、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成による都市の再生や地域の活性化を図るため、「車中心」から「ひと中心」へと転換するウォーカブルなまちづくりを推進しています。千葉都心地区における都市再生整備計画では、快適性、魅力向上を図るための整備などを重点的に行う必要がある区域として、滞在快適性等向上区域(まちなかウォーカブル区域)を指定しています。

JR千葉駅から中央公園に向かって延びる「千葉駅前大通り(中央公園プロムナード)」におけるひと中心の空間づくりを目指す取り組みが進められています。「自動車中心」の整備から「ひと中心」の空間づくり、地域の事業者・市民・行政の連携による「歩きたくなる」空間づくりを推進しています。「千葉都心ウォーカブル推進社会実験」では、道路、公園の公共空間を市街地と一体となり日常的に多様な用途、使い方として開放することで、まちなかに多様な人が集い、交流し、滞在する新たな価値創造や地域課題の解決の可能性を検証しています。

千葉市は「ちば・まち・ビジョン」を策定し、「ウォーカブル(歩きたくなる)、リバブル(暮らしやすい)、サステナブル(持続可能)な美しく心地よい千葉へ」という将来像を掲げています。ウォーカブルを都市の基本理念の一つとして位置づけた点が特徴的です。

その他の自治体の取り組み

静岡市では、静岡都心地区の骨格を成す「青葉シンボルロード」に滞在空間を創出する社会実験「アオバリビング」が実施されています。民間企業との連携により、ウォーカブルなまちづくりに貢献する取り組みが進められています。

松江市(島根県)では令和6年3月7日に「市道鉄道北沿線」を歩行者利便増進道路として指定しました。島根県内でのほこみちの指定は初の事例となり、地方都市においてもほこみち制度の活用が広がっている例として注目されています。

自治体が整備するウォーキングコースの全国事例

ウォーカブルなまちづくりと並行して、多くの自治体が健康づくりを目的としたウォーキングコースの整備やマップ作成に取り組んでいます。生活習慣病予防や高齢者の健康維持のため、歩くことを促進する施策が全国で展開されています。

都道府県レベルのウォーキングコース整備

東京都のポータルサイト「TOKYO WALKING MAP」は、日常的な身体活動量(歩数)の増加を目的に、区市町村などが作成したウォーキングマップを集約したサイトです。自分に合ったウォーキングコースを手軽に検索でき、Googleマップ上でルートを確認できるのが特徴です。

宮城県では県内市町村作成のウォーキングマップを紹介しており、各市町村の健康づくり担当課と連携して情報を提供しています。岐阜県でも各市町村に魅力的なウォーキングコースが設定されており、いつもと違う道を歩くと新たな発見があるとして、ウォーキングの際の参照を推奨しています。

区市町村レベルの多様なウォーキングコース

渋谷区の「シブヤウォーキングマップ」には各コースの名所や、コース距離、所要時間や消費カロリー等を掲載しており、健康づくりのツールとして活用できます。

新宿区の「健康づくりウォーキングマップ」は、歴史、花、緑の見どころなどのまちの魅力や子どもと一緒に歩けるコース等を盛り込んだウォーキングマップを配布しています。全12コースを完歩したウォーキング記録表を健康づくり課に持参すると、完歩証と記念品がもらえる仕組みを設けており、継続的なウォーキングを促進する工夫がなされています。

府中市の「健康応援ウォーキングマップ」は、市民の健康増進を図るため、元気いっぱいサポーター自主グループ「ノルディックでつながる会」が市と協働して作成しました。コースは、史跡などを巡りながら自然を満喫できる市内8コースとなっています。

中央区の「健康ウォーキングマップ」は、生活習慣病予防のため、初心者の方から運動習慣のある方まで幅広く歩けるコースを掲載しています。ウォーキングマップのコースは健康アプリにも反映されており、アプリを使いながらコースを歩くことで景品に応募できるポイントが獲得できます。デジタル技術を活用した新しい健康増進の形として注目されています。

世田谷区では健康づくり運動「健康せたがやプラス1」の一環として、誰でも楽しく簡単にできる「歩こう、動こう」の取り組みを普及啓発しています。

台東区の「ウォーキングマップ」は、各地区の健康推進委員おすすめの14のウォーキングコースを紹介しています。ウォーキングの進め方や正しいフォーム、健康遊具を設置している公園やラジオ体操を実施している広場も紹介しており、総合的な健康づくり情報を提供しています。

ウォーカブルなまちづくりの課題と今後の展望

取り組みを進める上での課題

日本でウォーカブルまちづくりを進める上で、いくつかの課題が指摘されています。「とにかく大変なのは管理者協議である」という声が多く寄せられており、関係部局との連携が課題となっています。道路、公園、河川など、所管が異なる公共空間を横断的に活用しようとする際、各管理者との調整に多大な時間と労力を要します。姫路市のように、部署横断の会議体を設置し、ワンストップで相談できる体制を整備することが一つの解決策として注目されています。

また、大都市と地方都市、その中間にある都市では、それぞれ独自の状況があり、ウォーカブルの議論を複雑にしています。公共交通と自動車の利用バランスは地域によって大きく異なり、一律の施策では対応できない面があります。

社会実験の重要性

ウォーカブルなまちづくりにおいて、車両通行制限や空間配置を一時的に変更して実際に検証する社会実験は、地域課題や改善点を明らかにする重要な手段です。国内でも年々「歩きたくなるまちづくり」に向けた社会実験を行う地域・自治体が増えています。コロナ禍における道路占用の特例措置では全国150自治体、360の事例が誕生し、多くの自治体がウォーカブルなまちづくりの可能性を実感する機会となりました。

今後の展望

ウォーカブル推進都市は引き続き増加傾向にあり、2025年11月時点で397都市に達しました。国土交通省の支援制度も充実しており、今後も取り組みは拡大していくと予想されます。特に、ほこみち制度の活用は地方都市にも広がりを見せており、大都市だけでなく全国各地でウォーカブルなまちづくりが進展しています。社会実験から本格整備へと移行する事例も増え、持続可能なまちづくりの形が見えてきています。

高齢化社会の進展に伴い、歩いて暮らせるまちづくりの重要性は今後ますます高まります。医療費抑制効果も見込まれることから、健康政策としてのウォーカブル推進も期待されています。また、脱炭素社会の実現に向けて、車依存からの脱却を図る取り組みとしてもウォーカブルなまちづくりは位置づけられています。環境面でのメリットも含め、多角的な視点からウォーカブルシティの価値が再認識されています。

人口減少、高齢化、中心市街地の空洞化といった課題に直面する日本において、ウォーカブルなまちづくりは持続可能な都市の姿を示す重要な取り組みです。今後も官民連携のもと、各地でさらなる発展が期待されます。

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