高齢者が冬に安全にウォーキングを続けるためには、滑りにくい靴選びと正しい歩き方、そして日頃からの転倒予防対策が重要です。冬は路面の凍結や積雪、寒さによる筋肉のこわばりなど、転倒リスクが高まる要因が重なる季節であり、65歳以上の転倒・転落による死亡者数は交通事故の4倍以上にのぼります。適切な靴を選び、凍結路面での歩き方のコツを身につけ、筋力トレーニングを継続することで、高齢者でも冬のウォーキングを安心して楽しむことができます。
この記事では、高齢者の冬の転倒事故の実態から、転倒予防に効果的な靴の選び方、凍結路面での安全な歩き方、自宅でできる筋力トレーニング、そしてウォーキングがもたらす健康効果まで、冬を健康に過ごすために知っておきたい情報を詳しく解説します。

高齢者の転倒事故の実態と冬季に増える理由
転倒による死亡事故は交通事故の4倍以上
高齢者の転倒事故は、多くの方が想像する以上に深刻な問題となっています。厚生労働省の人口動態統計によると、令和5年の1年間に不慮の事故で44,440人が亡くなっており、そのうち65歳以上の高齢者は39,016人と、死亡者数の87.8%を占めています。
特に注目すべきは、65歳以上の転倒・転落・墜落による死亡者数が9,509人にのぼり、これは交通事故による死亡者数2,150人の4倍以上という数字です。さらに、スリップやつまずき、よろめきによる同一平面上での転倒による死亡者数は8,085人で、転倒関連死亡の8割以上を占めています。
高齢者の介護が必要となった原因として、「骨折・転倒」は「認知症」「脳血管疾患(脳卒中)」「高齢による衰弱」に次いで4番目に多く、全体の13.0%を占めています。高齢者の3人に1人は1年間に一度以上の転倒を経験するとされており、転倒予防は高齢者の健康維持において極めて重要な課題です。
冬季に転倒事故が増加する5つの要因
冬季は転倒事故が特に多発する季節です。その主な原因として、まず路面の凍結や積雪による滑りやすさが挙げられます。東京消防庁のデータによると、毎年12月から3月までの期間に、積雪や凍結路面により滑って転倒した事故で、過去5年間に2,803人が救急搬送されており、その半数以上が高齢者です。
次に、寒さによる筋肉のこわばりがあります。寒い環境では筋肉が硬くなり、反応速度が低下するため、バランスを崩した際のとっさの対応が遅れてしまいます。また、防寒のための厚着による動きにくさも原因の一つで、体の動きが制限されることでバランスが取りにくくなります。
さらに、日照時間の減少による視認性の低下があります。冬は日が短く、朝晩の暗い時間帯に外出する機会が増えるため、路面の状態を正確に把握することが難しくなります。加えて、暖かい室内から急に寒い屋外に出ることで血圧が急激に変動し、ふらつきの原因となる室内外の温度差によるヒートショックも見逃せない要因です。
転倒が起きやすい危険な場所
屋外で転倒が起きやすい場所として、凍結した歩道、階段、駐車場があります。特に交差点は白ラインの塗装部分が水分を吸収しないため、見た目以上に滑りやすく、さらに車の走行で雪が固められてアイスバーンになっている可能性が高いため、最も危険な場所の一つです。
橋の上は地熱の影響がなく、上下を風が通り抜ける構造のため、路面温度が下がりやすく凍結しやすい場所となっています。トンネルの出入り口付近も同様に注意が必要です。また、路面が乾いているように見えても、薄く氷が張っていたり、新しく降り積もった雪によってツルツル路面が隠れている場合があるため、常に路面状態に注意を払うことが大切です。屋内では、浴室、玄関、階段が転倒の多い場所となっています。
高齢者向け冬のウォーキング靴の選び方
滑りにくさが最優先の選択基準
高齢者が冬のウォーキングで使用する靴を選ぶ際、滑りにくさが最も重要な条件です。靴底をよくチェックし、凹凸がはっきりしている靴底を選びましょう。靴底に滑り止め加工がされているシューズや、滑り止めラバーを使用したものがおすすめです。登山靴などにも使われる「ビブラムソール」を搭載したシューズも優れた選択肢となります。
つまずき防止機能も重要なポイントです。年齢とともにつま先が上がりにくくなる傾向があるため、つま先が少し反り返っているウォーキングシューズを選ぶと、すり足でもつまずきにくく安心してウォーキングができます。
クッション性については、着地時の衝撃をしっかりと吸収・分散してくれるものを選びましょう。アウトソールは前進する力を強化し滑りにくくする機能があり、インソールは足にかかる負荷を調整し、歩行の安定感を高めてくれます。
幅広設計と軽量性で足への負担を軽減
高齢者に支持されているのは、「3E」や「4E」といった幅広設計で、長時間歩いても疲れにくい靴です。特に4Eや5Eは、足幅がかなり広い方や高齢者に適した設計となっています。
軽量性も見逃せないポイントです。片足300g未満の軽量設計がおすすめで、軽い靴は足の疲れを軽減し、長時間のウォーキングでも負担が少なくなります。
着脱のしやすさも考慮すべき点です。足の甲の部分が広く開くつくりの面ファスナータイプは、着脱のしやすさから高齢者に好評です。ファスナー付きタイプのシューズを選べば、靴紐を結ぶ時間を軽減でき、つらい姿勢で長時間かがまなくてもよくなります。腰や膝が痛い方には特にファスナータイプがおすすめです。
靴底(ソール)の種類と滑りにくさの特徴
ウォーキングシューズのソール(底)は、アウトソール、ミッドソール、インソールの3つに分かれており、特にアウトソールは地面と直接触れる部分で、滑りにくさに直結します。
| ソールの種類 | 特徴 | 冬場の適性 |
|---|---|---|
| ゴム製ソール(ラバーソール) | 耐久性が高く、濡れた路面でも滑りづらい。路面との摩擦係数が高い | 低温でも硬化しにくい種類は冬に最適 |
| ビブラムソール | グリップ力に優れ、軽量で丈夫、衝撃吸収力も高い | 凍結路面でも高い防滑性能 |
| スポンジソール(ウレタン底) | 軽量でクッション性が高い | 磨り減ると滑りやすくなるため注意が必要 |
ゴム製ソール(ラバーソール)は、天然ゴムと合成ゴムの2種類があり、ゴムは路面との摩擦係数が高く、濡れた地面でもしっかりとグリップして滑りにくい性質があります。特に、低温でも硬化しにくい種類のゴムは、冬の冷たい雨の日でも性能を維持しやすいです。
ビブラムソールは、ソール専門メーカー「ビブラム」社が製造しているソールで、登山用として開発されたのが始まりです。激しい凸凹のパターンが特徴で、グリップ力に優れているので滑りにくく、軽量で丈夫、衝撃吸収力も高いという特徴があります。
靴底の溝(ソールパターン)の形状と深さは滑りにくさに直結する要素で、多方向への溝や細かい切れ込み(サイピング)が入ったデザインは、水を排出しグリップ力を高める効果があります。
信頼できるブランドとシリーズ
アシックスは日本の高齢者の足を研究し尽くした機能性で安心感があります。「ライフウォーカー」は落ち着いたデザインで脱ぎ履きしやすく、つま先が少し上にあがることでつまずきにくくなっていたり、ソールの傾斜部の厚みで安定歩行しやすいなど、高齢者が歩きやすいように工夫されています。
ミズノの「LD40シリーズ」は、歩く動作を様々な角度から研究し、ミズノ独自の機能を満載したロングディスタンスシリーズです。安定性を追求し、ミズノウエーブのクッション性が着地時のかかとへの衝撃を和らげます。脱ぎ履きしやすい内側ファスナー付きで、価格は19,800円(税込)です。
ミズノの「YOUDOシリーズ」は、膝への負担が軽減できるよう、日本人の膝を研究した医学博士との共同開発で生まれました。ひざ優導ソールは高弾力性があり、膝を自然と内側へと誘導するよう設計されています。
「マキシマイザー」はミズノのロングセラー商品で、発売から20年以上愛され続けています。ソール素材がやわらかく足に優しく、3E相当の幅広でゆったり履きやすい設計です。かかと部分にライト等に反射する素材を配置し、安全面にも配慮しています。
足のサイズを正確に測定する方法
靴選びで失敗しないためには、自分の足のサイズを正確に知ることが重要です。
足長(縦の長さ)の測り方は、平らな床の上に白い紙をしき、その上にまっすぐ立って足を肩幅くらいに開きます。かかとの一番出っ張っているところと、最も長い足指の先がわかるように紙に印をつけ、印の間の長さを測ります。
足囲(ワイズ)の測り方は、親指の付け根と小指の付け根の最も膨らんでいる部分を通るように一周まわして測った長さです。親指の付け根と小指の付け根の一番出ている部分に合わせてメジャーをまわし、0cmの目盛りと重なる部分の数字が足囲です。
ワイズは足囲をもとにした幅の基準で、日本ではJISで決められた基準があります。幅の細い方からA、B、C、D、E、2E、3E、4E、Fまであり、日本人は2E〜3Eが多いとされています。
足の大きさは加齢や体重変化、日常の活動量によって少しずつ変わるため、半年から1年に一度は測り直す習慣を持つと、常に自分に合うサイズを選びやすくなります。また、一日の終わりは足がむくんで足囲も大きくなりやすい時間帯なので、実際に靴を履く時間を想定して、そのタイミングで測定すると誤差を減らせます。近くの靴屋さんで「シューフィッター」に相談することが、自分に合った靴を見つける最も確実な方法です。
靴の滑り止めアイテムで転倒リスクを軽減
靴底用滑り止めスパイクの種類と特徴
普段履いている靴に装着するだけで滑り止め効果を高められるアイテムがあり、急な積雪や凍結時に特に役立ちます。
スパイクタイプは、10個程度のスチールスパイクで凍結道路や雪道での転倒防止に効果的です。靴の上から簡単に装着でき、かかとに引っかけられるので外れにくいのが特徴で、小さく軽いので携帯にも便利です。
スプリング・チェーンタイプは、安定性を重視する方におすすめです。靴の底面全体にチェーンが配置された安定感のあるタイプで、接地面が多いため防滑力が高く、バランスをとって歩きやすいのが特徴です。
貼るタイプは、手軽に貼れて簡単に使えます。ただし、北海道のような厳しい凍結路面では貼るタイプでは対応しきれないことがあるので、スパイク付きの簡易アイゼンをおすすめします。
おすすめの滑り止め製品
キャプテンスタッグの「滑らんぞー」は、運動靴や長靴の上から装着できる靴用の滑り止めです。伸縮性のあるプラスチックを使用しており、耐寒性マイナス40度まで対応しています。
モンベルの「アイスグリッパー」は、雪道や凍結した路面でのスリップ軽減を目的に開発された氷専用のソールです。氷面でも高いグリップ力を発揮し、日常生活や冬の旅行などで活躍します。
高齢者の方には、装着が簡単で安定感のある10ピン前後のスパイクタイプがおすすめです。携帯用の収納袋付きのものを選ぶと、外出時にカバンに入れて持ち運べて便利です。防滑力については、ピンが多いほど地面をしっかり捉えるため滑りにくくなります。頻繁に使う場合は、金属製や高品質のゴム素材のものが長持ちします。
応急処置として輪ゴムを活用する方法
滑り止めアイテムの用意がない場合の応急処置として、輪ゴムを使う方法があります。太い輪ゴムを靴に巻くことで靴底にひっかかりができ、ある程度の滑り止め効果が得られます。ただし、これはあくまで緊急時の対処法なので、できれば事前にスノースパイクなどを常備しておくことをおすすめします。
凍結路面で転ばないための歩き方のコツ
小さな歩幅とペンギン歩きが基本
雪道や凍結路面で転ばないための歩き方で最も重要なのは、小さな歩幅で歩くことです。歩幅が大きいと足を高く上げる必要があるため、重心移動(体の揺れ)が大きくなり、転倒しやすくなります。滑りやすいところでは、基本的に小さな歩幅で歩きましょう。「ペンギン歩き」をイメージすると良いと言われています。
足の裏全体をつけて歩くことも重要です。重心を前におき、できるだけ足の裏全体を路面につける気持ちで歩きましょう。道路の表面が氷状の「つるつる路面」では、小さな歩幅で足の裏全体をつけて歩く「すり足」のような歩き方が有効です。親指と人差し指の下あたりに力を入れ、足裏全体で踏むようにします。路面を踏むときも上げる時も、できるだけ垂直に動かしましょう。
ゆっくり歩くことも大切です。常にバランスがとれるようにゆっくり歩き、時間に余裕を持って行動しましょう。冬は夏より移動に時間がかかることは仕方がないと考え、「余裕をもって」行動し、「急がず、焦らず」に歩くことが大事です。余裕を持って歩くことで、しっかりと「滑りそうな道」を見分けながら歩くことができます。
特に注意が必要な危険スポット
交差点は最も危険な場所の一つです。白ラインの塗装は水分を吸収しないため、見た目以上に滑ります。また、車が走行しているので雪が固められ、アイスバーンになっている可能性が高いです。
坂道も要注意です。特に下り坂では、重心が前に傾きやすく、バランスを崩しやすくなります。手すりがある場合は積極的に利用しましょう。
日陰の場所は、日光が当たらないため雪や氷が解けにくく、長時間にわたって滑りやすい状態が続きます。建物の出入口付近は、雪が踏み固められていたり、解けた雪が再凍結していることがあります。
転んでしまった場合の対処法
万が一転んでしまった場合は、慌てて立ち上がろうとせず、まず周囲の安全を確認しましょう。痛みがある場合は無理に動かず、必要に応じて周囲に助けを求めてください。
転倒時には手を突いて受け身を取ろうとしがちですが、これは手首の骨折につながる可能性があります。できれば体全体で衝撃を分散させるように転ぶことが理想的ですが、実際にはなかなか難しいものです。日頃から転倒予防のトレーニングを行い、バランス能力を維持することが重要です。
冬のウォーキングに適した服装と準備
防寒と動きやすさを両立する重ね着スタイル
冬のウォーキングには、着脱しやすい重ね着スタイルがおすすめです。運動で体が温まると汗をかくことがあるので、上着を脱げるようにしておきましょう。
防風性と吸汗速乾性を重視することが大切です。身体の冷えを防ぐためには、防風機能のあるウィンドブレーカーやジャケットなどの着用がおすすめです。インナーやアウターには、ポリエステルやナイロンなどの素材が汗を外に逃がしやすく乾きも早いため、ウォーキングに適しています。
コットン素材は避けることをおすすめします。冬であっても、汗で濡れたままでいると汗冷えをしてしまいます。コットンは汗を吸いやすい素材ですが、汗をかくと服が体に貼り付くことがあり、不快なだけでなく体が冷えてしまいます。
マフラーや帽子、手袋といった防寒具も忘れずに着用しましょう。パンツの下にレギンスをはくのも防寒対策として効果的です。
準備運動とストレッチの重要性
冬場は室内と室外の気温差があるため、暖かい室内から寒い屋外に出ると血圧が急激に上がりやすくなります。外に出る前に暖かい室内で十分にウォーミングアップを行ってからウォーキングを始めましょう。
寒さで冷えた体をいきなり動かすとケガをしやすいため、準備運動は念入りに行います。ストレッチや軽い体操で体を温めてから歩き始めると、筋肉や関節への負担が軽減されます。特に、足首や股関節をしっかりほぐしておくと歩きやすいでしょう。
冬でも忘れてはいけない水分補給
冬のウォーキングは他の季節に比べて汗をかきにくく感じるため、水分を控えてしまいがちです。しかし冬は空気が乾燥するうえに、運動をすれば汗もかくため、水分不足から脱水症状を引き起こす危険性もあります。
高齢者は喉の渇きを自覚しにくいため、水を飲む機会が更に減ってしまいがちです。喉が渇いていなくても、定期的に水やお茶を飲むなど、水分の摂取を心がけましょう。
ウォーキングに最適な時間帯の選び方
冬にウォーキングする際は、日が出ている日中の時間帯に行うのがおすすめです。気温が比較的高い日中であれば寒さを感じにくくなり、外に出るハードルは低くなります。
夕方以降は気温が急激に下がり、暗くなることで視界が悪くなります。路面の状態を確認しにくくなるため、転倒リスクが高まります。どうしても暗い時間帯に外出する場合は、反射材のついた服や靴を着用しましょう。
転倒予防のための筋力トレーニング
転倒予防に重要な6つの筋肉
転倒予防には、下半身や体幹の筋力強化が重要です。特に鍛えるべき筋肉として、まず下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)があり、これは歩行時の推進力を生み出し、バランス維持に寄与します。大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)は、立ち上がりや歩行時の安定性を高めます。
大殿筋(お尻の筋肉)は、体を前に進める力をサポートし、姿勢保持に関与します。中殿筋(お尻の横の筋肉)は、片足立ち時のバランス維持に重要です。前脛骨筋(すねの筋肉)は、つま先を持ち上げる動作を助け、つまずき防止に役立ちます。ハムストリングス(太ももの後ろの筋肉)は、膝の曲げ伸ばしをサポートし、歩行時の安定性を向上させます。
自宅でできる簡単なトレーニング方法
椅子を使った太もものトレーニングでは、椅子に座った状態で片方の足をゆっくりと持ち上げ、膝をピンと伸ばしきった状態で5秒間静止します。左右それぞれ10回を1セットとして行います。立ち上がりや階段昇降に必要な膝周りの筋肉を強化できます。
つま先上げ運動は、すり足歩行の改善と転倒予防につながります。椅子に座るか、何かにつかまりながら立った状態で、かかとを床につけたままつま先を上げ下げします。10回1セットを目安に、無理のない範囲で行いましょう。
腿上げ運動は、太ももの筋肉や股関節周りの筋肉を鍛えるトレーニングです。椅子に座って、太ももを持ち上げる動作を繰り返します。かかと上げ運動は、ふくらはぎの筋肉を鍛えます。壁や椅子の背もたれにつかまりながら、かかとを上げ下げします。
バランストレーニングで転倒リスクを減らす
転倒予防には、筋力トレーニングに併せてバランス感覚を養う体操を行うことで、より高い効果を得られます。高齢者が筋力トレーニングを行うことでバランス能力の向上がみられ、転倒の回数が減少したという報告もあります。
片足立ちは、バランス能力を養う基本的なトレーニングです。壁や椅子につかまりながら、片足で10秒から30秒立つことを目指します。慣れてきたら、つかまらずに行ってみましょう。
バランストレーニングをする際は、すぐにつかまれるように、手すりや壁に近い場所で行うことが重要です。いきなり難易度の高いトレーニングをすると、転倒の危険性も高まり、継続が困難となる恐れがあります。まずは簡単な内容のトレーニングから慣らして、少しずつ可能な範囲で難易度を高めていきましょう。
ストレッチで筋肉の柔軟性を維持
転倒予防には筋力をつけるだけでなく、ストレッチで筋肉を伸ばすことも大切です。関節可動域が制限されると身体の動きが悪くなり、転倒を引き起こす可能性が高まります。
特に冬場は筋肉が硬くなりやすいため、ウォーキング前後のストレッチを習慣にしましょう。足首、ふくらはぎ、太もも、股関節を中心にゆっくりと伸ばします。
ウォーキングがもたらす健康効果
生活習慣病予防への効果
ウォーキングは有酸素運動であり、長く続けることで脂肪をエネルギーとして燃焼しやすくなります。脂肪が減少することで肥満も解消され、代謝がよくなることで血中脂質や血糖値、血圧の状態の改善にも有効です。
具体的には、ウォーキングには血管を拡げる作用があるため血圧が低下します。エネルギーが消費されるため血糖値の改善に効果的で、中性脂肪を下げ、HDL(善玉)コレステロールを上昇させる効果があります。心肺機能の維持・改善の効果も期待できます。
認知症予防につながるウォーキング
歩くことで脳の血流量が増大し、活性化することがわかっており、認知症予防にも効果的です。70〜80歳の女性の認知機能テストの成績と日頃の運動習慣の関係を調べた研究によると、日頃よく歩く人はテストの成績が良く、少なくとも1週間に90分(1日あたり15分程度)歩く人は、週に40分未満の人より認知機能が良いことがわかっています。
「普通の歩く速さ」でも十分に脳血流量の増加が認められたという実験結果が出ており、日常生活のなかでできるだけ歩く機会を増やすだけでも認知症予防になります。
骨密度向上と骨粗しょう症予防
歩くことで荷重がかかり、骨に刺激が加わるので、骨の強さが増しやすく、骨粗しょう症予防にもよいといわれています。ウォーキングなどの運動により骨に衝撃が与えられ、骨の強度・密度が増すメカニズムが明らかになっています。
骨密度を増加させるために必要なのは、縦方向の物理的な刺激です。水中運動よりも、陸上で行うウォーキングやジョギング、筋トレなどで骨粗しょう症の予防効果が期待できます。また、ウォーキングで足が着地する時に適度な衝撃が頭部に伝わり、脳機能の維持・調整につながるとされています。
フレイル予防とウォーキングの関係
歩行速度の低下、活動量の低下は身体的フレイルの基準要素です。中年期以前からウォーキングを継続し、歩行速度や活動量を高齢期になっても維持し続けることが身体的フレイルの予防となります。また、ウォーキングは認知機能低下を予防することも報告されており、精神的フレイルの予防にもなります。
推奨される歩数と運動量の目安
健康日本21では、65歳以上では男性7,000歩、女性6,000歩が目標値として掲げられています。生活習慣病を予防するには「1日8,000歩、そのうち中強度の歩行(息が軽く弾む程度の歩行速度)が20分」が適切な身体活動量とされています。最低でも1日4,000歩以上歩くことで、うつ病やねたきりを予防できます。
ただし、いきなりこの運動量を目指すと辛いと感じてウォーキングの継続を断念してしまう恐れがあります。最初は5〜10分からでもよいので、運動のハードルを低く設定して、慣れてきたら歩く時間を増やしてみてください。
冬の健康管理とヒートショック対策
ヒートショックとは何か
ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が大きく変動することによって引き起こされる現象で、65歳以上で生じるケースが大半を占めます。冬場に特に多く、年間約15,000人がヒートショックで亡くなっていると推計されています。
日常生活のなかで暖かい場所から寒い場所へ移動するだけで起きる可能性があり、浴室だけに限らず、温度差が大きければトイレや廊下でも起こる危険性があります。
ヒートショックが起こりやすい場所と予防法
自宅の中でヒートショックが起こりやすい場所は、浴室、脱衣所、洗面所、トイレなどの水回り、廊下(特に外への出入口や窓のある廊下)、玄関、窓など外につながる部分です。
外出時はできるだけ保温して出かけるようにしましょう。マフラーや手袋、帽子などを着用して身体を冷やさないようにします。吸湿性のよい素材の衣服を重ね着し、こまめに脱ぎ着できるようにしておくこともポイントです。
ヒートショックは温度差が10度以上あると起こりやすいため、急激な温度変化を避けることが重要です。外に出る前に玄関先で少し体を慣らすなど、段階的に温度に適応するようにしましょう。
冬の脱水症とヒートショックの関係
冬も脱水に注意が必要です。空気が乾燥していることに加えて、気温が低くて喉が乾きづらいために水分摂取量が少なくなりやすいためです。
脱水症は血流が滞るので、血圧が急激に変化しやすく、ヒートショックを引き起こすリスクもあります。冬場は喉が渇いていなくても、定期的に水やお茶を飲むなど、水分の摂取を心がけましょう。
冬季うつと運動の効果
冬季うつは、日照時間が短くなったり、寒さで外出を控えてしまったりすることで、日光にあたる時間が少なくなり、セロトニンの分泌が減り、気分が落ち込んでしまう状態です。
セロトニンの分泌を促すよう、日光を浴び、軽く運動をしましょう。冬でもウォーキングを続けることは、身体的な健康だけでなく、精神的な健康維持にも役立ちます。
まとめ:冬の安全なウォーキングのために
冬は高齢者にとって転倒リスクが高まる季節ですが、適切な準備と対策を行えば、安全にウォーキングを楽しむことができます。
まず、自分の足に合った滑りにくい靴を選ぶことが基本です。シューフィッターに相談し、足のサイズを正確に測定してもらいましょう。靴底用の滑り止めスパイクも活用し、凍結路面での転倒を防ぎましょう。
歩き方のコツも忘れずに実践してください。小さな歩幅で足の裏全体をつけて歩く「ペンギン歩き」を心がけ、時間に余裕を持って行動しましょう。
日頃から筋力トレーニングとバランストレーニングを行い、転倒しにくい体づくりを続けることも大切です。ウォーキング前の準備運動と、適切な服装・水分補給も忘れずに行いましょう。
ウォーキングには、生活習慣病予防、認知症予防、骨密度向上、フレイル予防など、多くの健康効果があります。冬だからといって外出を控えるのではなく、安全対策をしっかり行った上で、積極的に体を動かすことで、心身ともに健康な冬を過ごすことができます。









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