嵐山渓谷のウォーキングコースは、埼玉県比企郡嵐山町を流れる槻川沿いに整備された遊歩道で、武蔵嵐山駅から気軽にアクセスできる自然散策スポットです。岩畳と清流が織り成す渓谷美は「武蔵の嵐山」と呼ばれ、池袋から東武東上線で約1時間という好立地ながら、本格的な渓谷の景観を楽しめます。基本散策コースなら往復1時間程度、駅発着の本格コースは約10kmと、初心者からハイカーまで幅広く対応している点が大きな魅力です。本記事では、嵐山渓谷ウォーキングコースの全容、アクセス方法、見どころ、季節ごとの楽しみ方、服装や持ち物、周辺の観光スポットまで、訪問前に押さえておきたい情報を丁寧に解説します。読み終えるころには、次の休日の散策プランがしっかりと描けるようになります。

嵐山渓谷とは何か:武蔵嵐山の自然散策スポットの概要
嵐山渓谷とは、埼玉県比企郡嵐山町を流れる槻川(つきかわ)沿いに広がる渓谷で、岩畳と清流、両岸の木々が織り成す埼玉県を代表する景勝地のひとつです。地元では「武蔵嵐山(むさしらんざん)」とも呼ばれ、ウォーキングや紅葉狩り、写真撮影の名所として親しまれています。
槻川は、外秩父山地の堂平山(どうだいらやま)に端を発し、東秩父の山間を抜けて小川町を経由し、嵐山町の遠山地区へと流れ込みます。嵐山渓谷の付近では岩場によって流路が狭められ、大平山から伸びる「細原」と呼ばれるあたりでは流れが大きく180度転じ、半島状の独特な地形を作り出しています。この特徴的な地形こそが嵐山渓谷最大の見どころのひとつであり、両岸に迫る岩盤と清流のコントラストが訪れる人を圧倒します。
都心から電車で約1時間という立地でありながら、都市的な喧騒とは切り離された静かな自然環境が広がっており、休日の癒やしを求めるウォーカーや家族連れ、写真愛好家、紅葉狩りの観光客など、幅広い層から人気を集めています。
武蔵嵐山という名前の由来と歴史的背景
嵐山渓谷が「武蔵嵐山」と呼ばれるようになったのは、昭和3年(1928年)のことです。日本初の林学博士として知られる本多静六(ほんだせいろく)博士が当地を訪れ、渓谷の最下流部にある槻川橋から渓谷と周囲の紅葉・赤松林の美しい景観を眺め、京都の嵐山(あらしやま)の風景によく似ていると感じたことから「武蔵国の嵐山」と命名しました。
それ以前、この渓谷は地形的な特徴から埼玉県の長瀞岩畳になぞらえ「武蔵長瀞(むさしながとろ)」と呼ばれていた時期もありましたが、本多博士による命名以後は「武蔵嵐山」の名が広く定着しました。
この命名は地域にとっても大きな転機となりました。昭和10年には東武東上線の菅谷駅が「武蔵嵐山駅」と改名され、観光地としての知名度が一気に高まりました。駅から渓谷へと向かう観光客の行列ができるほどの賑わいを呈し、渓谷周辺には料理旅館「松月楼(しょうげつろう)」も営業して多くの旅人を迎えました。さらに「武蔵嵐山」の名は町名にも採用され、現在の「嵐山町(らんざんまち)」という地名が生まれました。
また、昭和14年(1939年)6月には現代短歌の道を切り開いた著名な歌人・与謝野晶子(よさのあきこ)が当時61歳で、娘の藤子とともに松月楼を訪れ、渓谷の自然などをテーマに「比企の渓(ひきのたに)」と題した29首の歌を詠み上げました。現在も渓谷の遊歩道沿いに与謝野晶子の歌碑が設置されており、文学ファンにとっても見逃せないスポットになっています。
嵐山渓谷ウォーキングコースの種類と所要時間
嵐山渓谷のウォーキングコースは、ゆったりとした渓谷内散策から本格的なハイキングまで、目的や体力に応じて選べるバリエーションが整備されています。ここでは代表的な3つのコースを比較しながら紹介します。
| コース名 | 距離の目安 | 所要時間 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 基本散策コース(渓谷内のみ) | 往復約2km前後 | 約1時間 | 初心者向け |
| 武蔵嵐山駅発着の渓谷ウォーキングコース | 約10.1km | 3〜4時間 | 中級者向け |
| 嵐山渓谷〜大平山〜仙元山 縦走コース | 10〜12km | 2時間30分〜3時間 | 中〜上級者向け |
基本散策コース:初心者でも気軽に歩ける渓谷の王道
基本散策コースは、嵐山渓谷バーベキュー場付近から入り、槻川沿いの遊歩道を歩いて展望台を目指すコースです。
バーベキュー場から遊歩道入口までは徒歩約5分。遊歩道に入るとすぐに川の瀬音が聞こえ始め、両岸の木々のトンネルの中を歩く心地よい時間が始まります。途中、川を横断する「飛び石」があり、大きな石を伝って川を渡るスポットが渓谷の目玉のひとつとなっています。増水時は渡れないこともありますが、晴天の日には多くの散策者がここで記念撮影を楽しんでいます。
飛び石を渡った先に続く遊歩道をさらに進むと、与謝野晶子の歌碑があります。歌碑周辺は特に木々が鬱蒼としており、静かな雰囲気の中で歌碑の文字を眺められます。その先を進むと、渓谷を見下ろす展望台に到着します。展望台からは秋には燃えるような紅葉と川面のコントラストが美しく、写真スポットとして大変人気があります。
バーベキュー場から展望台までの所要時間は片道約20〜25分、往復で1時間程度と、体力に自信のない方や小さなお子さん連れでも気軽に楽しめるのが特徴です。
武蔵嵐山駅発着コース:約10kmのロングウォーキング
嵐山町観光協会が公式に紹介する「天下の景勝 嵐山渓谷を歩く」コースは、全行程約10.1kmのウォーキングコースです。武蔵嵐山駅を出発し、住宅地や農道を抜けながら嵐山渓谷を目指します。駅から渓谷入口までは徒歩約40〜50分かかりますが、のどかな里山の景色を眺めながら歩くため、飽きることなく進めます。
渓谷で散策を楽しんだ後は、周辺の史跡や見どころを回りながら武蔵嵐山駅に戻るルート構成です。全行程を歩くと所要時間は3〜4時間程度を見込んでおくとよいでしょう。途中にベンチや休憩スポットも整備されており、自分のペースで進められます。
大平山・仙元山への縦走コース:本格ハイキング派におすすめ
より本格的なハイキングを楽しみたい方には、嵐山渓谷から大平山(おおひらやま)、さらに仙元山(せんげんやま)へと縦走するコースがあります。武蔵嵐山駅を出発して嵐山渓谷を散策した後、大平山へ登り、仙元山を経由して小川町駅まで歩くコースで、全行程10〜12km程度。所要時間は約2時間30分〜3時間程度が目安です。
このコースは眺望も楽しめ、稜線からは武蔵野の丘陵地帯を一望でき、天候が良ければ遠く富士山のシルエットを望むこともできます。登山経験のある方はもちろん、ハイキング初心者でもしっかりした装備で臨めば十分に楽しめるのが魅力です。
嵐山渓谷へのアクセス方法:電車・バス・車
嵐山渓谷へのアクセスは、東京方面からの電車利用が便利です。最寄り駅は東武東上線の武蔵嵐山駅(むさしらんざんえき)で、池袋駅からは東武東上線の急行や各駅停車を利用して、乗り換えなしで約1時間ほどで到着します。
電車・バスでのアクセス
武蔵嵐山駅西口から嵐山渓谷までは徒歩約40〜50分です。途中、田畑や住宅地を抜けながら徒歩で向かうルートは、のどかな埼玉の里山風景も楽しめるため、ウォーキング好きには魅力的なアプローチでもあります。
バスを利用する場合は、武蔵嵐山駅西口からイーグルバス(と02系統)に乗車し「休養地入口」バス停で下車後、徒歩約15分で嵐山渓谷バーベキュー場や遊歩道入口に到着します。バスの所要時間は約8〜10分です。
車でのアクセスと駐車場
関越自動車道を利用する場合は、東松山インターチェンジまたは嵐山小川インターチェンジで降り、いずれも8km前後で嵐山渓谷に到着します。
嵐山渓谷周辺には複数の駐車場があります。嵐山渓谷観光駐車場は無料で利用でき、約25台分のスペースがあります。ただし収容台数が少ないため、紅葉シーズンや連休などは早朝でも満車になることが多くあります。
一方、嵐山渓谷バーベキュー場の駐車場は有料(普通車500円)で、約300台を収容できる大規模な駐車場です。バーベキューシーズンや紅葉の時期には多くの来場者でにぎわいます。冬季の平日はバーベキュー場が休業し、これに伴い駐車場も閉鎖されることがあるため、訪問前に嵐山町公式サイトなどで確認することをおすすめします。
嵐山渓谷の主な見どころ:飛び石・歌碑・展望台
嵐山渓谷ウォーキングの楽しみは、自然の中を歩くこと自体にもありますが、ルート沿いに点在する見どころを巡る楽しみも大きな魅力です。
飛び石(川渡り):渓谷を象徴する自然のアクティビティ
嵐山渓谷散策の中で最も印象的なスポットのひとつが、槻川に設けられた「飛び石」です。川の流れの中に並んだ大きな岩を一石ずつ伝いながら川を渡るこのスポットは、子どもから大人まで楽しめる自然のアクティビティとして親しまれています。増水していなければ靴を濡らさずに渡れますが、水量が多い日は濡れることもあるので、防水性のある靴か、濡れても構わない履き物での来場が望ましいです。
整備された遊歩道と岩畳の景観
渓谷内には整備された遊歩道が続いており、安全に散策を楽しめます。両岸に迫る岩壁と、ゆっくりと流れる清流、頭上を覆う木々のアーチが、まるで別世界のような雰囲気を醸し出しています。春の新緑期には明るい黄緑色の葉が光を透かし、渓谷全体が輝いて見えるほどです。
与謝野晶子の歌碑
遊歩道の途中に設置された与謝野晶子の歌碑は、文学ファンならぜひ立ち寄りたいスポットです。昭和14年に与謝野晶子が嵐山渓谷を訪れた際に詠んだ「比企の渓」の歌が刻まれており、渓谷の静寂の中で歌の情景を感じ取ることができます。
渓谷の展望台
遊歩道の終点付近にある展望台からは、渓谷を見下ろす素晴らしい眺望が広がります。特に秋の紅葉シーズンには、赤や黄に染まった木々が水面に映り込む絶景を望めるため、写真撮影に訪れる人も多くいます。展望台周辺は紅葉の名所として特に人気が高く、見頃の時期は多くの来場者でにぎわいます。
嵐山渓谷バーベキュー場
渓谷の入口付近に位置する嵐山渓谷バーベキュー場は、槻川のほとりで自然を感じながらバーベキューを楽しめる施設です。野外炉セットと食材をあらかじめ予約すれば手ぶらでのバーベキューも可能で、家族連れやグループに人気があります。このバーベキュー場は日本一のBBQ場として二年連続で評価されたこともあり、その環境と施設の充実度は折り紙つきです。
季節ごとの嵐山渓谷ウォーキングの楽しみ方
嵐山渓谷は四季それぞれに異なる表情を見せ、年間を通して何度訪れても新しい発見があります。執筆基準日である2026年5月時点は、まさに新緑から初夏へと移り変わる季節です。
春(3月下旬〜4月上旬):桜並木と新緑のコントラスト
春の嵐山渓谷は桜が見どころです。都幾川(ときがわ)右岸の学校橋から八幡橋の間、全長約2kmにわたって植樹された約250本のソメイヨシノが一斉に咲き誇る様子は壮観で、川沿いの桜並木と清流のコントラストは春らしい穏やかな雰囲気を醸し出します。新緑が芽吹き始める4月中旬以降も、みずみずしい若葉の色が美しく、清々しいウォーキングを楽しめます。
初夏(5月〜7月):深い緑とヤマユリの季節
初夏の渓谷は、深い緑に包まれた別世界のような雰囲気が広がります。都心からわずか1時間の距離とは思えないほど豊かな自然環境の中で、川の瀬音や野鳥のさえずりを聞きながらのウォーキングは格別です。7月ごろには渓谷周辺の山野草・ヤマユリが見頃を迎えます。大きな白い花と芳しい香りで渓谷を彩るヤマユリは、嵐山渓谷の夏の代名詞ともいえる存在で、自生のヤマユリを眺めながら歩けるのは夏ならではの特権です。
秋(11月中旬〜12月上旬):渓谷美が極まる紅葉シーズン
嵐山渓谷が最もにぎわうのが秋の紅葉シーズンです。モミジやケヤキなどの木々が赤・黄・橙と色づき、岩畳や清流と相まって見事な景色を作り出します。特に渓谷の展望台から見下ろす紅葉の風景は人気が高く、多くのカメラマンや観光客が訪れます。紅葉の見頃は例年11月中旬から12月上旬ですが、年によって前後することがあるため、嵐山町観光協会の公式情報や各種紅葉情報サービスで最新の状況を確認してから訪問するのがおすすめです。
冬(12月下旬〜2月):静寂を独占できる穴場シーズン
冬季の嵐山渓谷は来場者が少なく、静けさの中で渓谷美を独占できる穴場シーズンといえます。葉を落とした木々の間から渓谷の全景を見渡せるようになり、夏や秋とは異なる開放的な景色が広がります。防寒対策をしっかりすれば、静かな冬の渓谷散策は味わい深い体験です。ただし冬季平日はバーベキュー場が休業し、付属駐車場も閉鎖されることがあるので注意してください。
嵐山渓谷ウォーキングの服装と持ち物リスト
嵐山渓谷のウォーキングは整備された遊歩道が中心ですが、岩場や飛び石を渡るシーンもあるため、動きやすい服装と滑りにくい靴が基本となります。
服装選びのポイント
靴はスニーカーよりも、ソールがしっかりしたトレッキングシューズやウォーキングシューズが快適で安全です。飛び石を渡る予定がある場合は、防水性や速乾性のある素材を選ぶと安心です。
季節によって服装も変わります。春や秋は朝晩の気温差が大きいので、薄手のアウターや風を防ぐジャケットの持参が賢明です。夏は紫外線対策として帽子や長袖のUVカットウェアがあると快適で、虫除けの観点からも肌の露出を控える服装が望ましいです。秋の紅葉シーズンは気温が下がりますので、重ね着で体温調整できる服装が理想となります。
持ち物チェックリスト
| カテゴリ | アイテム | 補足 |
|---|---|---|
| バッグ | リュックサック | 両手が自由になる15〜20Lが目安 |
| 飲料 | ペットボトル500ml×2本以上 | 夏場はさらに多めに |
| 衛生用品 | タオル・ハンカチ | 汗拭き・手拭き用 |
| 日除け | 帽子 | 日差し・熱中症対策 |
| 通信機器 | スマートフォン | 地図アプリ・連絡用・カメラ |
| 雨具 | 折りたたみ傘・レインウェア | 急な雨に備えて |
| 害虫対策 | 虫除けスプレー | 夏季は必須 |
| 救急用品 | 常備薬・絆創膏 | もしもの備えに |
| 地図 | コースマップ | 嵐山町観光協会公式マップを事前準備 |
安全上の注意点
渓谷内の遊歩道は整備されていますが、雨上がりや増水時は足元が滑りやすくなります。飛び石周辺は特に濡れた岩が滑りやすいので、渡る際はゆっくりと慎重に行動してください。
夏季には渓谷周辺でマムシ、スズメバチ、ムカデ、ダニなどの生物に遭遇することもあります。むやみに遊歩道を外れて草むらや森の中に入るのは避け、肌の露出を最小限にした服装で歩くよう心がけましょう。天気が急変することもあります。特に春や秋は気温変化が激しいため、こまめに天気予報を確認し、雨具は必ず持参してください。
嵐山渓谷周辺の観光スポットと文化財
嵐山渓谷のウォーキングと合わせて訪ねたいのが、周辺に点在する歴史的・文化的なスポットです。
菅谷館跡と嵐山史跡の博物館
嵐山渓谷からほど近い場所に、国指定史跡の菅谷館跡(すがやかたあと)があります。面積は約13万平方メートル(東京ドーム3個分)にも及ぶ広大な城館跡で、鎌倉時代の武士の館から戦国時代の城郭へと変遷を遂げた場所です。昭和48年に国の史跡に指定されており、平成29年4月には「続日本100名城」にも認定されました。館跡内では四季折々の花や紅葉を楽しむことができ、武蔵嵐山駅からも徒歩圏内でアクセスできます。
菅谷館跡に隣接する形で埼玉県立嵐山史跡の博物館が建っています。中世城館や菅谷館跡に関する考古資料などを展示しており、歴史に興味のある方には必見のスポットです。開館時間は午前9時から午後4時30分(7月・8月は午後5時まで)、月曜休館(祝日の場合は翌日)、年末年始休館で、観覧料は一般100円と非常にリーズナブルな設定となっています。
大平山・仙元山ハイキングエリア
嵐山渓谷から続くハイキングコースの延長線上にある大平山と仙元山は、奥武蔵エリアのハイキングスポットとして親しまれています。どちらも標高は高くありませんが、整備された登山道と豊かな自然が楽しめ、仙元山の山頂からは奥武蔵の丘陵地帯を一望できます。天気の良い日には遠く富士山のシルエットを望めることもあり、嵐山渓谷から大平山、仙元山を経由して小川町駅へ抜ける半日コースは、体力に自信のある方に特におすすめです。
嵐山渓谷ウォーキングのモデルプラン
ここでは、電車で訪れる方向けの代表的なモデルプランを2パターン紹介します。
半日コース(3〜4時間):初心者・家族連れ向け
武蔵嵐山駅西口を出発し、バスで約10分または徒歩40分で嵐山渓谷バーベキュー場に到着します。そこから渓谷散策として、飛び石・遊歩道・与謝野晶子歌碑・展望台を巡るルートを約1〜1.5時間かけて楽しみ、バーベキュー場まで戻ります。最後にバスまたは徒歩で武蔵嵐山駅へと帰着するのが基本の流れです。
このプランは体力的な負担が少なく、ウォーキング初心者や小さなお子さん連れ、シニア世代にもおすすめできる構成です。
一日コース(5〜6時間):自然と歴史を満喫
武蔵嵐山駅西口を出発し、徒歩約40〜50分かけて里山の風景を楽しみながら嵐山渓谷に向かいます。渓谷では飛び石・遊歩道・与謝野晶子歌碑・展望台などを約1.5〜2時間かけて散策。その後、徒歩移動で菅谷館跡・嵐山史跡の博物館へ向かい、約1時間ほど見学します。武蔵嵐山駅周辺でランチを取り、駅へ戻る流れで一日が完結します。
このプランは嵐山渓谷の自然と嵐山町の歴史・文化を合わせて楽しめるフルコースで、嵐山町の魅力を存分に体感できる内容です。
嵐山渓谷の地質:青石が作り出す独特の渓谷美
嵐山渓谷の渓谷美を支えているのは、その独特な地質にあります。渓谷を形作っている岩石の大部分は「結晶片岩(けっしょうへんがん)」という、薄くはがれやすい性質を持つ岩石です。その中でも最も多く見られるのが「緑泥石片岩(りょくでいせきへんがん)」で、地元では「青石(あおいし)」とも呼ばれる、やや緑色がかった美しい岩石となります。
この青石は板状に剥離して平らな形状になりやすい性質から、かつては石碑や墓石などの石材として利用されてきました。渓谷沿いに見られる岩畳や岩壁は、青石が長い年月をかけて川の流れに削られ、磨かれることで生み出された自然の造形美です。
同じ埼玉県の景勝地・長瀞(ながとろ)の岩畳も結晶片岩でできており、地質学的には嵐山渓谷と共通点があります。長瀞が「地球の窓」とも呼ばれるほど地質学的に著名な場所であるのに対し、嵐山渓谷は比較的静かで落ち着いた雰囲気の渓谷として、ゆっくり自然と向き合いたい人に人気があります。嵐山渓谷がかつて「武蔵長瀞」とも呼ばれていたのは、こうした地質的な類似点があったためです。
冠水橋:水位で姿を変える珍しい橋
嵐山渓谷の見どころのひとつに、「冠水橋(かんすいきょう)」があります。冠水橋とは、川が増水した際に橋全体が水面下に沈むことで橋本体を流失から守る構造の橋で、「沈下橋(ちんかばし)」とも呼ばれます。欄干(手すり)がなく、橋面が低い位置に設けられているのが特徴です。
高知県の四万十川沿いに多く見られることで有名な構造ですが、嵐山渓谷の冠水橋はこの地域では珍しいコンクリート製の沈下橋となっています。昭和初期には、この冠水橋の上流で水をせき止め、池のようにして景観を楽しんでいたという記録も残っており、当時から観光地として整備・活用されていたことがうかがえます。増水時は橋が水没するため渡れなくなりますが、晴天時には川面を渡るような感覚で散策できる風情ある橋として、散策者に親しまれています。
嵐山渓谷を訪れる前に知っておきたい実用情報
実際に訪問する際に役立つ、実用的な情報を整理します。
トイレ・自動販売機・コンビニ事情
嵐山渓谷の遊歩道内にはトイレが限られています。バーベキュー場付近に設置されていますが、渓谷の奥に進むとトイレがないエリアもあるため、散策前にバーベキュー場付近のトイレを済ませておくとよいでしょう。
渓谷内には自動販売機がほとんどありません。飲み物は必ず事前に購入して持参してください。武蔵嵐山駅周辺にはコンビニエンスストアがあるので、出発前に立ち寄るのが安心です。渓谷周辺の飲食施設は限られていますが、嵐山町には地元の有機野菜を使ったランチを提供するカフェなどもあり、昼食は駅周辺や行き帰りの立ち寄りスポットで取るのが便利な動線になります。
ペット同伴と混雑時期
渓谷内はペット連れでの散策も可能ですが、バーベキュー場などの施設内では制限がある場合があります。ペット連れの方は事前に施設の利用規約を確認してください。リードは必ず着用させ、マナーを守って散策しましょう。
嵐山渓谷が最も混雑するのは、秋の紅葉シーズン(11月中旬〜12月上旬)の土日祝日です。特に午前10時から午後2時ごろにかけては来場者が集中し、駐車場が満車になることも多くあります。この時期は早朝(午前8時前後)の訪問か、電車・バスでのアクセスがおすすめです。バーベキューシーズン(春〜秋の土日祝日)も混雑するため、平日や早朝の来場が比較的ゆったり楽しめる狙い目です。
嵐山渓谷ウォーキングの魅力まとめ
嵐山渓谷ウォーキングの最大の魅力は、東京圏からのアクセスの良さと、そこにありながら完全に自然に包まれた環境の豊かさのギャップにあります。池袋から約1時間という気軽さで、まるで山奥にいるかのような渓谷美と静寂を堪能できるのは、嵐山渓谷ならではの体験です。
岩畳と清流の見事なコントラスト、飛び石を伝う川渡りのわくわく感、与謝野晶子が詠んだ歌碑との出会い、季節ごとに表情を変える木々の彩り、そして歴史ある菅谷館跡や博物館との組み合わせなど、さまざまな体験が一日の中に凝縮されています。
春の桜、夏のヤマユリと新緑、秋の紅葉、冬の静寂と、一年を通じて何度訪れても新しい表情を見せてくれる嵐山渓谷は、首都圏在住のウォーカーやハイカーにとって何度でも足を運びたくなる名所です。歩くことが好きな方、自然が好きな方、写真が好きな方、歴史が好きな方など、あらゆる趣味・嗜好を持つ方に楽しんでいただける懐の深さも、嵐山渓谷の魅力のひとつ。次の休日には、東武東上線に乗り込んで武蔵嵐山駅を目指してみてはいかがでしょうか。きっと忘れられない一日になります。
嵐山渓谷の基本情報一覧
最後に、訪問前に確認したい基本情報を表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 埼玉県比企郡嵐山町大字鎌形 |
| 最寄り駅 | 東武東上線 武蔵嵐山駅 |
| 駅からのアクセス | 西口から徒歩約40〜50分、またはイーグルバス(と02系統)で約10分「休養地入口」バス停下車後徒歩約15分 |
| 車でのアクセス | 関越自動車道 東松山ICまたは嵐山小川ICから約8km |
| 駐車場 | 嵐山渓谷観光駐車場(無料・約25台)、嵐山渓谷バーベキュー場駐車場(有料・普通車500円・約300台) |
| 入場料 | 無料(渓谷の散策自体は無料) |
| バーベキュー場 | 有料(詳細は嵐山町公式サイトまたは嵐山渓谷バーベキュー場へ要確認) |
| 問い合わせ | 一般社団法人嵐山町観光協会 |
| おすすめシーズン | 春(桜・4月)、夏(ヤマユリ・7月)、秋(紅葉・11月中旬〜12月上旬) |
嵐山渓谷ウォーキングコースは、武蔵嵐山駅を起点に多彩なルートが選べ、四季折々の景観と歴史・文化を同時に味わえる稀有なスポットです。本記事を参考に、自分の体力・興味に合ったコースを選び、ぜひ次の休日に武蔵嵐山の自然散策へ出かけてみてください。









コメント