北上展勝地の桜並木は北上川沿い2km、樹齢80年超の古木も

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岩手県北上市の北上展勝地は、北上川沿いに約2kmの桜並木が続く公園です。園内には150種、1万本ほどの桜が植えられていて、アップダウンの少ない約2.5kmのウォーキングコースも整備されています。日本さくらの名所100選、みちのく三大桜名所にも選ばれていて、春先には多くの人が花見とウォーキングを兼ねて訪れます。

北上駅から徒歩20分ほどという立地の良さもあり、電車でも車でも行きやすいのが特徴です。この記事では、桜並木とウォーキングコースの具体的な様子、北上川との関係、周辺の見どころ、そして混雑を避けるためのタイミングまで、実際に訪れる前に知っておきたい情報をまとめます。

目次

桜並木は珊瑚橋から2km、樹齢80年超のソメイヨシノが中心

北上展勝地の桜並木は、北上川に架かる珊瑚橋の付近から展勝地レストハウス方面まで、約2kmにわたって続いています。植えられているのはソメイヨシノを中心に、シダレザクラ、ヤエザクラ、ヤマザクラなど150種ほどで、本数はおよそ1万本です。

樹齢80年を超えるソメイヨシノも多く、幹の太さや枝ぶりに古木ならではの風格があります。ソメイヨシノは一般に樹齢50年から70年ほどで弱ってくると言われる品種なので、80年を超えてなお花を咲かせている木が並ぶ北上展勝地は、そのぶん珍しい部類に入ります。開花時期の異なる品種が混在しているため、早咲きが散り始めても遅咲きがこれから見頃を迎えるという形で、3週間から1ヶ月ほど桜を楽しめるのがこの公園の強みです。桜が終わると、園内に植えられた10万株ほどのツツジが見頃を迎えます。ツツジは例年4月から5月にかけて赤や白、ピンクなど色とりどりの花を咲かせる植物で、花びらの上には昆虫を蜜へ誘う斑点模様が入っているのも特徴です。桜が散った後の景色に彩りが戻るタイミングで見頃が来るので、桜だけで終わらない花見ができます。

日本さくらの名所100選は、1990年に公益財団法人日本さくらの会が創立25周年を記念して選定したもので、環境庁や林野庁など複数の省庁と全国知事会の後援を受けています。知名度や歴史、景観との調和、管理体制など9つの基準で選ばれており、各都道府県から最低1か所が選ばれる仕組みです。北上展勝地はこの100選と、みちのく三大桜名所の両方に数えられている、東北でも数少ない場所のひとつです。

みちのく三大桜名所は、北上展勝地に加えて、青森県弘前市の弘前公園と秋田県仙北市の角館武家屋敷通りで構成されます。弘前公園は約52種2,600本の桜が咲き、堀に架かる桜のトンネルやボートからの眺めが名物です。角館武家屋敷通りは黒板塀沿いに約450本のしだれ桜が連なり、枝が地面へ垂れる姿が特徴的です。3か所とも見頃は4月中旬から5月上旬にかけてで、北東北を巡る桜旅のルートとして紹介されることもあります。

ウォーキングコースは1周約2.5km、アップダウンがほとんどない

園内には遊歩道が整備されていて、桜並木の下を歩きながら北上川の流れを間近に感じられます。代表的なウォーキングコースは1周およそ2.5kmで、コース全体を通してアップダウンがほとんどありません。体力に自信がない人や子供連れの家族、シニア世代でも歩きやすいコースです。

コースの起点としてよく使われるのは、珊瑚橋付近にある桜並木の入口です。北上駅の東口からは徒歩20分ほどで着きます。そこから展勝地レストハウスまでの約2kmが、桜並木のメイン区間になります。舗装されている部分が多い一方、川沿いには砂利道や土の道が残っている箇所もあるので、歩きやすい靴で行くのがおすすめです。

途中にはベンチも点在していて、北上川を眺めながら休憩できます。花見シーズンは人出が多く、写真を撮る人や立ち止まって花を眺める人も目立つため、時間に余裕を持って歩くとゆっくり楽しめます。早朝や平日は比較的空いていて、静かに歩きたい人にはこちらの時間帯が向いています。

ウォーキングそのものは、費用がかからず、足腰への負担も少なく、気軽に始められる運動として知られています。北上展勝地のようにアップダウンがほとんどない河川敷のコースは、普段あまり歩く習慣がない人にとっても始めやすい部類に入るでしょう。景色を楽しみながら自然と体を動かせる点は、単なる運動の場以上の魅力になっています。

北上川は総延長約250km、日本国内で5番目に長い川

北上展勝地の景観は、桜並木だけでなく、隣を流れる北上川があってこそ成り立っています。北上川は岩手県北部の水源地から宮城県の追波湾まで、総延長およそ250kmに及ぶ川で、その長さは日本国内で5番目にあたります。古くから地域の暮らしや水運を支えてきた川です。

川沿いの遊歩道を歩くと、頭上を覆う桜のトンネルと、眼下を流れる北上川の水面を同時に楽しめます。風が吹くたびに花びらが川面へ舞い落ち、水面いっぱいに花筏ができる光景は、写真愛好家からも人気を集めています。花筏は、散った桜の花びらが水面で帯状につながって流れる様子を筏に見立てた言葉で、俳句では晩春を表す季語として使われてきました。室町時代の歌謡集『閑吟集』にも関連する歌が見られるとされ、古くから日本人が親しんできた春の情景のひとつです。対岸から桜並木全体を見渡せるビューポイントもあり、夕暮れ時には夕日に照らされた桜並木が川面に映り込む様子も見られます。

大正9年の植樹から100年超、珊瑚橋は明治41年築

北上展勝地の歴史は大正時代までさかのぼります。1920年(大正9年)、地域の有志によって和賀展勝会という組織が設立され、澤藤幸治という人物が発起人の一人となって桜の植樹事業を進めました。翌1921年(大正10年)に実際の植栽が行われ、和賀展勝地として公園が開かれました。

「展勝地」という名称は、この植樹事業を主導した展勝会という組織名にちなむとともに、近隣の陣ヶ丘からの見晴らしが良いことから、展望のきいた景勝地という意味も込めて名付けられたそうです。澤藤氏の親友で、のちに司法大臣を務めた風見章氏が展勝会という名称を考えたとも伝えられています。2021年(令和3年)には開園から100周年を迎えました。100年かけて育てられてきたからこそ、いまも樹齢80年超の古木が毎年花を咲かせているわけです。

桜並木の起点になっている珊瑚橋にも歴史があります。最初の橋は1908年(明治41年)、当時の立花村に住んでいた高舘徳次郎という人物の出資によって、木製の橋として建設されました。橋の名前は、近くにそびえる国見山の北尾根にある珊瑚岳という峰の名前にちなんでいるとされています。

2026年のさくらまつりは4月10日から4月29日まで開催

北上展勝地では、桜の見頃に合わせて毎年北上展勝地さくらまつりが開催されています。2026年度は4月10日(金)から4月29日(水・祝)までの日程で開催されました。北上川の上空をこいのぼりが泳ぎ、満開の桜並木の中を観光馬車が走る光景が、まつりの名物として知られています。

夜になると桜並木はライトアップされ、川面に反射する光景を目当てに訪れる人も多くいます。まつり期間中は屋台も多数並び、地元グルメを楽しみながら花見ができます。ただし、満開を迎える週末は道路も駐車場も大変混雑し、駐車場待ちで1時間以上かかることもあるとされているので、車で行く場合は早めの時間帯を狙うのが得策です。

アクセスはJR北上駅から徒歩20分、車は北上江釣子ICから

公共交通機関を使う場合、最寄り駅はJR東北本線と北上線が乗り入れる北上駅です。東口から桜並木入口まで徒歩20分から30分ほどで、荷物が多い場合や急いでいる場合は駅前からタクシーを使う手もあります。まつり期間中は臨時のシャトルバスが運行されることもあるので、訪問前に公式サイトで確認しておくと安心です。

車で行く場合は、東北自動車道の北上江釣子インターチェンジや北上西インターチェンジが便利です。まつり期間中に使える駐車場は用意されていますが、開花のピークを迎える週末や祝日は大変混雑します。渋滞や駐車場待ちを避けたいなら、午前の早い時間帯に到着するのが一番確実な方法です。

展勝地レストハウスとみちのく民俗村が周辺の主な見どころ

桜並木とウォーキングコースの他にも、園内には見どころが点在しています。展勝地レストハウスは米蔵をモチーフにした建物で、北上川に面したロケーションから川と桜の景色を眺めながら食事や休憩ができます。手打ちそばなど地元の料理のほか、工芸品や特産品も豊富に扱っています。

みちのく民俗村は東北有数の屋外博物館で、竪穴式住居や武家屋敷、南部曲り家など、さまざまな時代の建造物が丘陵一帯に展示されています。南部曲り家は、人が暮らす母屋と馬を飼う馬屋がL字型につながった建物で、江戸時代に岩手のほとんどを治めていた南部家にちなんだ名称です。茅葺き屋根は厚さ50cm前後もあって断熱性が高く、かまどの煙が馬屋を通って外へ抜ける仕組みで冬の寒さから馬を守っていたとされています。実際に建物の中へ入って見学できる展示も多く、東北地方の暮らしの歴史を体感できる場所です。園内にはサトウハチロー記念館もあり、童謡「うれしいひなまつり」などで知られる詩人サトウハチローゆかりの資料を見られます。彫刻家の利根山光人の作品を展示する利根山光人記念美術館も同じ敷地内にあります。

公園東側の広場にはSLが展示されていて、子供向けの乗り物や遊具もあります。かつて全国各地を走った蒸気機関車は、鉄道の主役の座を退いたあとも各地の公園で静態保存される例が多く、地域の鉄道史を伝える展示物として親しまれてきました。北上展勝地のSLも、そうした役目を担っています。園内にはかつて北上川の舟運で使われた南部藩の大型帆船「ひらた船」を復元した展示もあり、川が物流の要だった時代の歴史を伝えています。江戸時代、北上市には北上川最大の河港があり、多いときには64艘ものひらた船が集まって、上流と下流をつなぐ積み替え地になっていました。米を中心とした荷物を積んで石巻まで下るのに3日、上るのに4日ほどかかったと伝えられていて、風があれば帆を使い、なければ竿や綱で船を進めていたそうです。北上市と隣接する花巻市の一部地域にのみ伝わる郷土芸能、大乗神楽の大会も例年開かれていて、2026年で通算32回を数えます。岩手県内の神楽は山伏神楽、社風神楽、科白神楽、多賀神楽の4つに大別されるとされ、なかでも山伏神楽は笛や太鼓を使った三拍子の舞として伝えられています。岩手は郷土芸能の種類や数の多さで知られる土地でもあり、大乗神楽もそうした地域文化の一端を担っています。

桜以外にも紅葉と全長29kmのサイクリングロードで楽しめる

北上展勝地は桜だけの公園ではありません。初夏には桜並木の緑が生い茂り、あじさいが彩りを添えます。秋になると桜の木々が紅葉し、北上川沿いの景色は赤や黄色に染まります。冬には北上川に飛来する渡り鳥を観察できることもあり、季節ごとに違う表情を見せてくれます。東北地方にはシベリアなどから越冬のためオオハクチョウやコハクチョウが渡ってくることが知られていて、宮城県の伊豆沼などが越冬地として名高い地域です。北上川沿いでも、こうした冬鳥の姿が見られる年があります。

北上展勝地から花巻温泉方面まで、北上川沿いに全長約29kmのサイクリングロードが整備されています。桜並木の中を走り抜けるのはもちろん、ツツジの咲く初夏や紅葉の秋にも、四季の景色を楽しみながらサイクリングができます。まつり期間中は遊覧船から桜並木を眺める楽しみ方もあり、川面から見上げる桜のトンネルは、歩いているときとはまた違った角度からの眺めです。徒歩、自転車、川からの遊覧船と、好みに応じて回り方を選べるのもこの公園の懐の深さです。

4月の岩手は最高気温15度前後、上着とレインウェアがあると安心

桜が見頃を迎える4月上旬から中旬にかけて、北上市の気温は最高15度前後、最低9度前後で推移することが多く、関東地方と比べるとまだ肌寒さが残る時期です。日中は上着なしでも過ごせることがある一方、朝晩は冷え込むので、脱ぎ着しやすい上着を一枚持っていくと安心です。

北上川沿いは川風が吹き抜けるため、体感温度が下がりやすい傾向にあります。ウォーキングコースを長時間歩く場合や夜桜を見に行く場合は、防寒対策をしておいたほうがよいでしょう。歩きやすいスニーカーなど、履き慣れた靴で行くことも、2.5kmのコースを歩き切るための地味に大事なポイントです。東北地方の4月は天候が変わりやすいので、折りたたみ傘や薄手のレインウェアも用意しておくと急な天候の変化に対応できます。

混雑を避けるなら平日か開園直後、駐車場待ちは1時間以上のことも

見頃のピークとなる週末や祝日は、園内も駐車場も周辺道路も大変混雑します。特にまつり期間中の土日祝日は朝から多くの人が訪れ、駐車場に入るまで長い待ち時間が発生することも珍しくありません。快適に花見やウォーキングを楽しみたいなら、平日、できれば月曜から木曜の間に訪れるのがおすすめです。

週末に行く場合は、できるだけ午前の早い時間帯、開園直後を狙うと駐車場の混雑をある程度避けられます。公共交通機関やタクシーを使えば、そもそも駐車場待ちのストレスから解放されます。ライトアップされた夜桜を見たい場合も、比較的空いている時間帯を選ぶと落ち着いて楽しめます。

ペット同伴可、トイレは園内各所にあり子供連れでも困りにくい

北上展勝地はペット同伴でも入園できます。愛犬と一緒に散歩や花見を楽しむ人の姿もよく見られますが、リードの着用など他の来園者への配慮は必要です。トイレは園内の各所に設置されていて、まつり期間中には仮設トイレも増えるため、混雑時でも困ることは少ないでしょう。

子供連れの場合、園内東側のSL展示や小さな乗り物・遊具のあるエリアで子供を遊ばせながら休憩できます。北上駅東口の新幹線改札内にはベビー休憩室があり、授乳室やおむつ替え台も利用できるので、電車で訪れる家族連れにとっても安心できるポイントです。

北上市は人口約9万人、11の工業団地が集まる産業都市

北上展勝地がある北上市は、岩手県の南西部、北上盆地の中央に位置しています。人口はおよそ9万1,500人で、県内では盛岡市、奥州市、一関市、花巻市に次いで5番目の規模です。東部には北上山系の丘陵地、西部には奥羽山系の山々が連なり、平野部を流れる北上川と、市の中央部を流れる和賀川が合流して田園地帯を潤しています。

産業の面では、11の工業団地に約300社が立地する東北有数の産業集積地としても知られています。大手製造業の工場が集まる産業都市でありながら、春には北上展勝地の桜が街を彩る、そのギャップが北上市らしさとも言えるでしょう。奥羽山系と北上山系に挟まれた内陸性の気候で、冬の積雪量が比較的多いことも特徴のひとつです。

周辺の温泉地と組み合わせれば一日観光コースになる

北上市はかつて交通の要衝として栄えた歴史を持ち、みちのく民俗村で紹介されているような伝統的な建造物や生活文化がいまも受け継がれています。北上川流域には温泉地も点在していて、花見やウォーキングで体を動かした後に温泉で疲れを癒すプランを組み合わせるのもよい方法です。桜のシーズンは観光客も多いため、宿泊や日帰り入浴を予定しているなら事前予約をしておくと安心です。北上市内には他にも自然豊かな公園や散策スポットがあり、北上展勝地と組み合わせれば充実した一日観光コースになります。

北上展勝地は、桜並木とウォーキングコース、そして北上川の景観が一体になった場所です。歴史をたどれば大正時代の植樹から始まり、100年を超えて地域の人たちが守り続けてきた景色でもあります。桜のシーズンはもちろん、新緑や紅葉の季節に訪れても十分に楽しめる公園なので、岩手を訪れる機会があれば、ウォーキングコースを実際に歩いてみることをおすすめします。

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