長野県のほぼ中央に位置する諏訪湖を一周するウォーキングコースは、周囲およそ16kmの湖畔遊歩道を高低差なくたどれる、初心者にも挑戦しやすい平坦な道のりです。標高759m前後の湖面沿いを進むだけなので急な坂道に悩まされることがなく、歩行時間の目安は休憩を含めて4時間前後となっています。舗装は足に優しい赤いゴムチップの区間もあり、膝や股関節に不安がある人でも取り組みやすいのが特徴です。この記事では、コースの成り立ちやルート、立ち寄りたくなる足湯や史跡、季節ごとの楽しみ方から歩き方のコツまで、諏訪湖を一周するウォーキングに挑戦する前に知っておきたい情報をまとめて紹介します。

諏訪湖を一周するウォーキングは16kmを4時間前後で歩き切れる
諏訪湖を一周するウォーキングコースの最大の特徴は、高低差がほとんどない点にあります。湖面付近の標高759m前後をぐるりと回るだけの道のりなので、山道のようなアップダウンに悩まされることがありません。舗装も丁寧に整備されており、足に優しい赤いゴムチップ舗装の区間もあるため、長時間歩いても足腰への負担が比較的少なく済みます。膝や股関節に不安がある人、ウォーキング初心者、体力に自信のない人でも挑戦しやすいコースです。
一周の距離はおよそ16kmで、歩行時間の目安は休憩を含めて4時間前後です。休憩なしで一定のペースを保てば3時間半程度で歩き切る人もいますが、景色を楽しみながらのんびり歩くなら4時間から5時間程度を見ておくと安心でしょう。実際にコースを歩いた人たちのブログには、16kmを5時間弱で歩き切ったという記録も複数残っており、途中で写真を撮ったり足湯に立ち寄ったりしながら歩く人が多いことがうかがえます。
湖畔には自転車専用の「スワイチ」も2024年に全通した
諏訪湖の湖畔には、歩行者用のウォーキング・ランニングコースとは別に、自転車用のサイクリングロードも整備されています。この自転車で一周するコースは「スワイチ」という愛称で親しまれており、2024年4月1日に全区間が全面開通しました。長野県と岡谷市、下諏訪町、諏訪市の4者がそれぞれの担当区間を整備するという形で完成にこぎつけたもので、信号のない専用区間や高低差の少ない設計により、初心者から上級者まで走りやすい道として整備されています。この取り組みは2024年の全建賞(社団法人全日本建設技術協会が優れた土木事業に贈る賞)を受賞し、土木やまちづくりの分野でも高く評価されました。全線開通を記念して2024年4月20日と21日にはキッチンカーの出店やeバイクの試乗会、スポーツバイク体験会などを盛り込んだ記念イベントも開催され、地域を挙げて祝われました。
歩行者向けのウォーキングコースはこのスワイチと隣接、あるいは一部区間を共用する形で湖畔沿いに続いています。歩く人と自転車に乗る人がそれぞれ安全に通行できるよう区分けされている場所も多く、ウォーキングだけに集中したい人も安心して歩くことができます。
スタート地点は湖畔公園か釜口水門を選ぶ人が多い
諏訪湖を一周するルートは、諏訪市、下諏訪町、岡谷市の3市町にまたがっており、どこからスタートしても一周してもとの場所に戻ってきます。多くの人は、諏訪市の湖畔公園(石彫公園)や、天竜川の起点にあたる釜口水門周辺をスタート・ゴール地点に選んでいます。湖畔公園付近には駐車場やトイレ、観光案内所が整っており、車でアクセスする場合の起点として便利です。
回る方向は時計回り、反時計回りのどちらでも問題ありませんが、太陽の向きや富士山が見える方角を意識して、午前中は逆光を避けられる向きを選ぶ人もいます。湖の南側からは条件が良ければ富士山を望むことができるため、写真を撮りながら歩きたい人はルート取りを事前に考えておくとよいでしょう。
立ち寄りスポットは釜口水門と無料の足湯2か所が定番
諏訪湖を一周するコースの魅力のひとつは、単調な湖畔道路ではなく、随所に立ち寄りたくなるスポットが点在していることです。
まず外せないのが釜口水門です。釜口水門は諏訪湖から天竜川へと流れ出す水量を調節するための施設で、長野県岡谷市に位置しています。諏訪湖の水位をコントロールする重要な役割を担っており、水門越しに広がる湖の景色は一周コースの中でも印象的なポイントのひとつです。
次に人気なのが、無料で利用できる足湯です。代表的なのが諏訪市の湖畔公園にある「湖畔公園足湯」で、上諏訪温泉の「七ツ釜源泉」を引いた天然温泉を無料で楽しめます。利用時間は次のとおりです。
| 期間 | 利用時間 |
|---|---|
| 4月から11月 | 午前9時から午後6時30分 |
| 12月から3月 | 午前9時から午後5時30分 |
長時間歩いて疲れた足を、湖を眺めながら温泉で癒やせるのは諏訪湖ならではの贅沢です。コース上には他にも足湯スポットがあり、コースを実際に歩いた人たちが無料の足湯を2か所ほど利用したとブログに書き残しています。休憩ポイントとして多くのウォーカーに利用されているようです。
間欠泉センターも見逃せないスポットです。諏訪湖畔公園の近くにあり、間欠泉センター前には階段状のスペースがあってベンチ代わりに腰掛けられるため、休憩ポイントとしても、夏には花火観賞スポットとしても人気があります。
さらに、桜と富士山の両方を一緒に楽しめる「みずべ公園」も湖畔の絶景スポットとして知られています。春には桜越しに富士山と諏訪湖を望む三重奏の景色が広がり、写真撮影に訪れる人も少なくありません。
このほか、湖畔にはボートレース場や複数の美術館、ショップなども点在しており、単なる運動コースとしてだけでなく、観光を兼ねて歩けるのも諏訪湖ならではの大きな魅力です。
片倉館の千人風呂は深さ1.2mの立ち湯
コースからやや足を延ばせる立ち寄り湯として人気なのが、昭和3年に建設されたクラシックな建物が目印の「片倉館」です。片倉館の名物「千人風呂」は大理石造りの浴槽を持つ日帰り温泉で、深さ約1.2mの浴槽に立ったまま浸かる珍しいスタイルの温泉として知られています。長時間歩いた後にこうした立ち寄り湯で汗を流してから帰路につくのも、諏訪湖ならではの楽しみ方のひとつです。上諏訪温泉や下諏訪温泉、岡谷温泉のエリアには、このほかにも熱めの源泉かけ流しを手頃な料金で楽しめる共同浴場や、諏訪湖を一望できる展望風呂を備えた施設など、日帰り入浴できるスポットが複数点在しています。
桜と紅葉と花火で季節ごとに違う表情を見せる
諏訪湖を一周するウォーキングは一年を通じて楽しめますが、季節ごとに異なる表情を見せてくれるのも魅力です。
桜と富士山の三重奏は4月中旬に見頃を迎える
毎年4月中旬になると、湖畔公園内の桜とウォーキングロード沿いの桜が一斉に咲き誇ります。桜の花と諏訪湖、そして条件が良ければ富士山まで一望できる三重奏の景色は、この時期ならではの絶景です。桜のトンネルの下を歩きながら一周するのは、春に諏訪湖を訪れるなら特におすすめしたい体験です。
紅葉は10月下旬から11月上旬が見頃
秋は紅葉の季節です。例年10月下旬から11月上旬にかけて紅葉のピークを迎え、湖畔の木々が色づく中を歩くことができます。この時期も空気が澄んでいれば富士山を望むことができ、紅葉と湖、遠くの富士山という組み合わせの景色を楽しめます。旅行会社が「紅葉の諏訪湖ぐるっと一周ウォーキング」と題したツアー企画を催行することもあり、紅葉シーズンの諏訪湖は観光コンテンツとしても人気が高いようです。
花火大会は2026年8月15日に開催、連日花火は7月24日から8月23日まで
夏は、諏訪湖名物の花火が楽しみのひとつです。2026年は8月15日に第78回諏訪湖祭湖上花火大会が午後7時から開催され、諏訪市湖畔公園前の諏訪湖上が打ち上げ会場となります。これに加えて、7月下旬から8月下旬にかけては毎日花火が打ち上がる期間もあり、2026年は7月24日から8月23日まで、8月15日を除く日程で連日花火が上がっています。記事執筆時点でもちょうどこの連日花火の期間にあたっており、湖畔の芝生やホテル、旅館の部屋からもゆったり花火を楽しめるため、ウォーキングと合わせて夏の夜の花火観賞を計画するのもおすすめです。花火大会当日は交通規制や大変な混雑が予想されるため、ウォーキング目的で訪れる場合は日程をずらすか、混雑を織り込んで計画を立てるとよいでしょう。
冬は空気が澄んでいるため、遠くの山並みや富士山がくっきりと見えることが多く、人出も少なめで静かに歩きたい人には狙い目のシーズンです。ただし長野県の内陸性気候のため朝晩は冷え込みが厳しく、防寒対策は必須です。
そばをはじめ信州グルメで達成感を味わえる
長時間歩くウォーキングだからこそ、道中や歩き終えた後のグルメも大きな楽しみになります。諏訪エリアは八ヶ岳山麓などの豊かな自然が育む清らかな水に恵まれており、この水を生かした香り高いそばが名物のひとつです。八ヶ岳南麓産のそば粉を100%使用した香り豊かなそばを提供する上諏訪駅近くの人気店や、1965年創業の老舗そば店など、諏訪湖畔にはこだわりのそば店が点在しています。老舗そば店では国産そば粉100%の本格的なそばに加え、鶏の唐揚げや黒毛和牛ローストビーフ丼(数量限定)、そばプリンやそば羊羹といった自家製のそばスイーツまで味わえる店もあります。
そばのほかにも、諏訪エリアでは地酒や馬刺し、おやきといった信州ならではのご当地グルメが充実しています。諏訪湖周辺には人気店や名店が数多くあり、16kmを歩き切った達成感とともに、地元グルメでエネルギーを補給するのもおすすめの楽しみ方です。ウォーキングの前後に立ち寄れるお店を事前にいくつかピックアップしておくと、当日の計画が立てやすくなりますね。
諏訪大社と御神渡りで歴史や信仰にも触れられる
諏訪湖周辺は自然だけでなく、歴史と文化の面でも見どころが豊富なエリアです。諏訪市の上社と下諏訪町の下社を総称した諏訪大社は、全国に分布する諏訪神社の総本社にあたる由緒ある神社で、十二支の寅と申の年に行われる御柱祭は天下の奇祭として全国的にも知られています。諏訪湖を一周するルートからも比較的近い距離にあるため、時間や体力に余裕があれば立ち寄ってみるのもおすすめです。
このほか、諏訪湖から少し足を延ばせば、雄大な高原ドライブルートとして知られるビーナスラインにもアクセスでき、諏訪湖と諏訪大社とビーナスラインを組み合わせた、歴史と大自然の周遊観光を楽しむこともできます。ウォーキングだけでなく、こうした周辺観光とあわせて計画を立てることで、諏訪エリアの魅力をより深く味わえるでしょう。
冬に諏訪湖を訪れるなら、御神渡り(おみわたり)という自然現象と信仰にも触れておきたいところです。厳しい寒さで湖が全面結氷すると、湖面の氷が割れて山脈のようにせり上がる現象が起こることがあり、これが御神渡りと呼ばれています。地元では古くから、諏訪大社上社に祀られる男神の建御名方神が、下社に祀られる女神の八坂刀売神のもとへ夜な夜な通った道筋だと語り継がれており、御神渡りが出現した際には拝観式と呼ばれる神事が行われ、その年の天候や農作物の豊凶が占われてきました。記録は室町時代の1443年から現在まで、580年以上にわたって途切れることなく続けられており、諏訪湖と諏訪大社の深い結びつきを伝える貴重な民俗行事となっています。近年は暖冬の影響で全面結氷しない年も増えていますが、湖畔を歩きながらこうした土地の信仰や歴史に思いを馳せるのも、諏訪湖を一周するウォーキングならではの楽しみ方です。
トイレと駐車場と自販機がコース沿いに充実している
長距離を歩くうえで気になるのが、トイレや水分補給、休憩場所といった設備面です。諏訪湖を一周するコースはこの点でも評判が良く、公衆トイレが湖畔の各所に定期的に設置されているため、突然の用足しにも対応しやすいコースといえます。トイレや水飲み場はコース全体にわたって整備、維持されており、安心して長時間のウォーキングに臨める環境が整っています。
駐車場についても、無料で利用できる駐車スペースが複数箇所にあるため、車で訪れる場合でも駐車先に困ることは少ないといえます。湖畔公園周辺や釜口水門周辺など、コースの要所に駐車場が点在しているので、体力や時間に応じて好きな地点をスタート・ゴールに選べるのも便利な点です。
コンビニエンスストアや自動販売機もコース沿いに豊富にあるため、飲み物や軽食の調達に困ることはほとんどありません。とはいえ、区間によっては店舗が少ない箇所もあるため、事前にある程度の飲料や行動食を持参しておくと安心です。
アクセス面では、JR中央本線の上諏訪駅や下諏訪駅、岡谷駅など、湖の周囲に複数の駅があるため、電車で訪れて途中の好きな駅から離脱することも可能です。車の場合は中央自動車道の諏訪ICや岡谷ICが最寄りとなります。
歩き方のコツは早朝スタートとこまめな給水
16kmという距離は、普段運動をしていない人にとっては決して短い距離ではありません。無理なく楽しむためのポイントを押さえておきましょう。
まず、歩きやすい靴選びが重要です。コースの大部分はソフトなゴムチップ舗装やアスファルトの平坦な道ですが、長時間歩き続けることに変わりはないため、クッション性のあるウォーキングシューズやスニーカーを選ぶことをおすすめします。
服装は季節に応じて調整しつつ、湖畔は風が吹き抜けやすいため、体温調節がしやすい重ね着スタイルが適しています。夏場は日差しを遮る帽子や日焼け止め、冬場は防寒着や手袋があると快適に歩けるでしょう。
給水はこまめに行いましょう。コース沿いに自動販売機やコンビニは多いものの、水分補給のタイミングを逃さないよう、ペットボトルなどをあらかじめ持参しておくと安心です。
歩く時間帯としては、早朝や午前中がおすすめです。気温が上がりきる前に距離を稼いでおくことで、夏場の暑さや日差しによる体力消耗を抑えられます。朝の澄んだ空気の中で見る諏訪湖の湖面は特に美しく、写真撮影にも適した時間帯です。
なお、コース上には1kmごとの目安となるキロポストが設置されており、現在地や残りの距離を把握しながら歩けるようになっています。初めて挑戦する人でもペース配分がしやすく、ゴールまでの見通しを立てやすいのはうれしいポイントです。16kmを歩き切ると歩数はおよそ20,000歩前後にもなり、日々の運動不足を解消したい人にとっても手応えのあるチャレンジといえるでしょう。消費カロリーは体重や歩く速度によって変わりますが、20,000歩規模の歩行は一般的な有酸素運動としてもかなりの運動量にあたり、景色を楽しみながら無理なく体を動かせる点も人気の理由です。
半周8kmなら遊覧船「すわん」で戻れる
体力や時間に不安がある人、小さな子ども連れの場合は、16kmを無理に歩き切る必要はありません。実際に、半周の約8kmを歩いた後、遊覧船やバスなどの交通機関を使ってスタート地点へ戻るという楽しみ方をしている人も多くいます。諏訪湖では、白鳥をイメージした遊覧船「すわん」や、亀をモチーフにした「竜宮丸」といった観光船が運航しており、諏訪湖を一周するのに約25分ほどで、二階の展望デッキから湖の景色を一望できます。料金の目安は大人1,100円、小人550円で、天気が良ければ遊覧船からも遠くに富士山を望むことができます。運行時刻は季節によって次のように異なります。
| 季節 | 運行時刻 |
|---|---|
| 夏季(4月1日から10月31日) | 午前9時30分、10時30分、11時30分、午後2時30分、3時30分、4時30分 |
| 冬季(11月1日から3月31日) | 午前9時30分、10時30分、11時30分、午後2時30分、4時 |
歩き疲れたタイミングで遊覧船を利用すれば、体力に応じてコースをアレンジできるのも、このウォーキングコースの懐の深さです。
大会形式なら16km種目のウルトラウォーキングに参加できる
諏訪湖を一周するコースは、個人で自由に歩くだけでなく、大会形式のウォーキングイベントの舞台としても使われています。諏訪湖を周遊するフラットなジョギングロードを使ったウルトラウォーキング大会では、100kmや80km、64km、48km、32km、16kmといった複数の距離種目が用意されており、16km種目であれば、ちょうど諏訪湖を一周するのと同じ距離を大会形式で体験できます。大会という位置づけで歩くことで、普段とは違う緊張感やモチベーションを味わえるのも魅力です。
また、諏訪湖周辺では毎年秋に諏訪湖マラソンも開催されており、ランナーだけでなくウォーキング愛好者にとっても、諏訪湖と長野の秋を楽しむ一大イベントとなっています。過去には「諏訪湖一周ウォーク」という名称で、参加者が各自のペースで自由に諏訪湖を歩き、参加記念品を受け取れるイベントも実施されていました。イベントの開催形式は年によって変わることがあるため、参加を検討する場合は最新の公式情報を確認しておくとよいでしょう。
諏訪湖を一周するウォーキングコースは、周囲約16km、高低差がほとんどない平坦な道が続く、初心者にも挑戦しやすいコースです。赤いゴムチップ舗装をはじめとした歩きやすい路面、湖畔各所に整備されたトイレや駐車場、コンビニ、自動販売機といった充実した設備が、長距離ウォーキングへのハードルを大きく下げてくれています。
コース沿いには、水位を調節する釜口水門、無料で入れる足湯、間欠泉センター、桜と富士山が同時に楽しめるみずべ公園など、歩くだけでは終わらない見どころが点在しており、季節ごとに桜や紅葉、花火といった異なる魅力を味わえるのも大きな特徴です。
所要時間の目安は休憩を含めて4時間前後で、体力や時間に自信がなければ半周して遊覧船やバスで戻るという選択肢もあります。歩きやすい靴と季節に応じた服装、こまめな水分補給を心がければ、運動不足の解消はもちろん、諏訪湖ならではの自然と観光を同時に満喫できる一日になるはずです。長野県を訪れる機会があれば、諏訪湖を一周するウォーキングに挑戦してみてください。








