ウォーカブルシティとは?居心地が良く歩きたくなるまちなかを骨太の方針2025から読み解く

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2025年6月13日に閣議決定された骨太の方針2025において、持続可能なまちづくりの推進が重要施策として位置づけられる中、ウォーカブルシティという概念が注目を集めています。ウォーカブルシティとは、自動車に頼らず徒歩や公共交通機関で快適に移動できる居心地が良く歩きたくなるまちなかを指し、国土交通省が推進する都市政策の柱となっています。人口減少と少子高齢化が進む日本社会において、従来の自動車中心のまちづくりから歩行者中心への転換は喫緊の課題であり、骨太の方針2025でもコンパクト化や都市DXの推進と併せて関連施策が盛り込まれました。2025年9月30日現在、全国397都市がウォーカブル推進都市として賛同しており、健康増進、経済活性化、環境負荷軽減、コミュニティ再生といった多面的な効果が期待されています。本記事では、ウォーカブルシティの定義から国の施策、国内外の先進事例、そして骨太の方針2025との関連まで、詳しく解説していきます。

目次

ウォーカブルシティの定義と基本概念

ウォーカブルシティという言葉は英語の「Walkable City」を直訳すると「歩きやすい街」を意味しますが、その概念は単に物理的に歩行が可能であるということにとどまりません。自動車がなくても住みやすい街居心地のよい街という広い意味を包含しており、徒歩や自転車、電車やバスなどの公共交通機関で快適に移動できるように設計された都市を指します。国土交通省ではこのウォーカブルシティを「居心地が良く歩きたくなるまちなか」と表現し、全国の自治体とともにその実現に向けた施策を推進しています。

国土交通省はウォーカブルなまちなかの特徴をWEDO(ウェド)という4つのキーワードで整理しています。最初のWは「Walkable(歩きたくなる)」であり、まちなかを歩くことが楽しく、歩きたいと思える環境が整備されていることを意味します。安全で快適な歩行空間の確保はもちろんのこと、歩くことで新たな発見や体験ができる魅力的な街並みが求められます。次のEは「Eyelevel(まちに開かれた)」で、建物の1階部分すなわちアイレベルが街に開かれ、歩行者の視線に訴える魅力的なファサードが形成されていることを指します。店舗のショーウィンドウやオープンカフェなどが街並みの賑わいを創出する重要な要素となります。Dは「Diversity(多様な人の)」を表し、年齢、性別、職業、国籍などを問わず、多様な人々が集い交流できる空間であることを意味します。誰もが利用しやすいユニバーサルデザインの視点も重要な要素です。最後のOは「Open(開かれた空間が心地いい)」であり、広場や公園、オープンスペースなど、人々が自由に滞在しくつろげる開放的な空間があることを示しています。公共空間と民間空間が連携し、一体的な居心地の良い空間を形成することが目指されています。

ウォーカブルシティが求められる社会的背景

日本においてウォーカブルシティが求められる背景には、複数の深刻な社会的課題があります。第一に挙げられるのは人口減少と少子高齢化の進行です。日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、特に地方都市では急速な人口減少が進んでいます。高齢化に伴い自動車を運転できない人々が増加する中、徒歩や公共交通で生活できるまちづくりの重要性が高まっています。高齢者の免許返納問題や買い物難民の増加は、自動車依存型の都市構造が抱える限界を如実に示しています。

第二の背景として中心市街地の衰退があります。郊外への大型商業施設の出店や人口の郊外流出により、多くの地方都市で中心市街地の空洞化が進んでいます。いわゆる「シャッター街」と呼ばれる商店街の衰退は、単なる経済的損失にとどまらず、地域コミュニティの崩壊にもつながっています。かつて人々が集い交流した中心市街地の活力を取り戻すことは、地域社会の持続可能性を確保するうえで不可欠な課題となっています。

第三に持続可能な社会への要請が挙げられます。地球温暖化対策として自動車利用の削減と公共交通、徒歩、自転車への転換が国際的にも求められています。コンパクトで効率的な都市構造はインフラの維持管理コストの削減にも寄与し、財政面での持続可能性を高めることにもつながります。SDGs(持続可能な開発目標)の目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成に向けても、ウォーカブルシティの実現は重要な意味を持っています。

ウォーカブルシティがもたらす健康面での効果

ウォーカブルシティの実現は住民の健康増進に大きく貢献します。歩行の機会が増えることで、気分転換やストレス発散、生活習慣病の予防などの効果が期待できます。国土交通省の調査によると、1日あたりの歩数が1,500歩増えることで年間35,000円の医療費抑制効果があると試算されています。ウォーカブルな環境が整備されれば、意識的に運動しようとしなくても自然と歩く機会が増え、住民全体の健康増進につながります。

より安全で気軽に歩行できる街では、大気汚染の影響や交通事故が少ないことも報告されています。自動車の交通量が減少することで排気ガスによる大気汚染が軽減され、呼吸器系疾患のリスク低減が期待できます。また、歩行者優先の空間整備により交通事故の発生率も低下します。加えて、こうした街では肥満人口が少なく、子どもたちが外で遊ぶ時間が長いというデータもあり、次世代の健康づくりにも好影響を与えることが明らかになっています。

ウォーカブルシティがもたらす経済面での効果

ウォーカブルシティは地域経済の活性化にも好影響を与えます。歩行者を誘致するイベントや店舗が増え、街に活気があふれることで、観光客の増加や地域経済の発展が期待できます。ニューヨークのタイムズスクエアでは、元々自動車が通っていた道を広場として再構築したことで歩行者の数が11%増加しました。観光客もアクセスしやすくなったことから、周辺店舗の売上増加など経済効果も生まれています。

人々が街を歩き回ることでローカルビジネスの経営状況が好調になることも報告されており、地域に根ざした小規模事業者の支援にもつながります。自動車で通過するだけでは気づかない小さな店舗やサービスを、歩行者は発見しやすく、新たな顧客獲得の機会が生まれます。また、ウォーカブルな地域では不動産価値が上昇する傾向があり、まちの資産価値向上にも寄与します。歩いて暮らせる便利な立地は、特に高齢者世帯や子育て世帯にとって魅力的であり、住宅需要の増加につながっています。

ウォーカブルシティがもたらす環境面での効果

環境面では自動車利用の減少による二酸化炭素排出量の削減や大気の質の改善が見込まれます。ウォーカブルシティが実現し歩くことが重視されれば、脱炭素化につながり、持続可能なまちへの転換が進みます。この取り組みはSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」にも貢献するものです。

自動車依存からの脱却はエネルギー消費の削減や騒音問題の軽減にもつながり、より快適な都市環境の実現に寄与します。都市部における騒音は住民のストレス要因となっていますが、自動車交通量の減少により静かで落ち着いた環境が生まれます。また、道路空間を緑地や広場に転換することで、ヒートアイランド現象の緩和や生物多様性の保全にも効果が期待できます。

ウォーカブルシティがもたらす社会・コミュニティ面での効果

ウォーカブルシティでは人々が街を歩くことで自然な出会いや会話が生まれ、地域のつながりが深まります。特に日本では少子高齢化により世帯数の減少や地域のつながりの希薄化が進んでおり、ウォーカブルなまちづくりはゆるやかなコミュニティの再構築や孤独・孤立の防止にもつながると期待されています。

街頭での偶発的な出会いや広場でのイベント参加、オープンカフェでの会話など、ウォーカブルな空間が生み出す人々の交流は社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の蓄積に重要な役割を果たします。顔見知りが増え、地域への愛着が生まれることで、防犯面でも効果が期待できます。また、多世代が交流する機会が増えることで、高齢者の見守りや子どもの安全確保といった地域の支え合いの基盤が強化されます。

国土交通省によるウォーカブル推進都市制度

国土交通省では「居心地が良く歩きたくなるまちなか」づくりを目指す政府の方針に賛同し、事業推進に取り組む自治体をウォーカブル推進都市として位置づけています。この制度は2019年7月に募集が開始され、2025年9月30日現在、全国397都市が賛同しています。人口規模の大小に関わらず、首長をはじめ団体として賛同する地方公共団体であること、そして何らかの取組を実施中あるいは構想等を持つ地方公共団体であることが応募要件となっています。

国土交通省はウォーカブル推進都市をパートナーとして、国内外の先進事例などの情報共有や政策づくりに向けた国と地方とのプラットフォームを構築しています。各自治体の取り組みを横断的に支援し、成功事例の水平展開を図ることで、全国的なウォーカブルなまちづくりの推進を目指しています。

都市再生特別措置法の改正と滞在快適性等向上区域

2020年6月3日に「安全なまちづくり」及び「魅力的なまちづくり」の推進を柱とする都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(令和2年法律第43号)が成立し、同年9月7日に施行されました。この改正により、市町村がまちなかにおける交流・滞在空間の創出に向けた官民の取組をまちづくり計画に位置付けることができるようになりました。

具体的には、立地適正化計画に滞在快適性等向上区域(まちなかウォーカブル区域)を設定し、官民一体となったウォーカブルなまちづくりを推進できるようになりました。この区域設定により、公共空間と民間空間を一体的に整備する計画的なまちづくりが可能となり、ウォーカブルシティの実現に向けた法的基盤が整備されました。

一体型滞在快適性等向上事業と税制特例

一体型滞在快適性等向上事業は、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの形成を目指す区域において、民間事業者等が市町村による道路や公園等の公共施設の整備等と併せて民地のオープンスペース化や建物低層部のオープン化を行った場合に税制特例が適用される事業です。この税制特例により、整備が完了した年の翌年から5年間、土地(固定資産税・都市計画税)及び償却資産(固定資産税)又は家屋(固定資産税・都市計画税)の課税標準額が軽減されます。

対象となる条件としては、まちなかウォーカブル区域(滞在快適性等向上区域)内であること、市が整備した(する)公共施設と隣接又は近接した位置で公共施設と一体的にオープンスペースを整備すること、オープン化部分は誰でも無償で自由に交流・滞在できることなどが求められます。この税制優遇措置により、民間事業者の参画を促進し、官民連携によるウォーカブルなまちづくりを推進しています。

まちなかウォーカブル推進事業による支援

まちなかウォーカブル推進事業は令和2年度(2020年度)に創設された支援制度です。この事業は車中心から人中心の空間へと転換を図る、まちなかの歩いて移動できる範囲において、滞在の快適性の向上を目的として市町村や民間事業者等が実施する各種整備を重点的・一体的に支援するものです。

支援の対象となるのは、道路や公園、広場等の整備や修復・利活用、滞在環境の向上に資する取組などです。社会資本整備総合交付金や補助金を通じて、自治体のウォーカブルなまちづくりを財政面から支援しています。この支援制度により、財政力の弱い自治体でもウォーカブルなまちづくりに取り組むことが可能となり、全国的な普及が促進されています。

ストリートデザインガイドラインの策定

国土交通省ではウォーカブルなまちなかを支えるこれからの時代のストリートの在り方を検討するため、有識者からなるストリートデザイン懇談会を設置しました。この懇談会での議論を踏まえ、ストリートデザインのポイントとなる考え方を提示したストリートデザインガイドラインが策定されています。

このガイドラインは街路空間を車中心から人間中心の空間へと再構築し、沿道と路上を一体的に使って人々が集い憩い多様な活動を繰り広げられる場へとしていくための指針を示しています。具体的なデザイン手法や事例が紹介されており、自治体や民間事業者がウォーカブルな街路空間を整備する際の参考となっています。

コンパクトシティとウォーカブルの関係性

コンパクトシティとは都市的土地利用の郊外への拡大を抑制すると同時に、中心市街地の活性化が図られた、生活に必要な諸機能が近接した効率的で持続可能な都市のことです。この概念は1973年にジョージ・ダンツィヒとトーマス・L・サーティによって造られた造語で、当初は物理的に「コンパクト」な都市の実現や都市機能の地理的集約に焦点が当てられていましたが、時代とともにその定義も変化してきました。

日本では2014年に都市再生特別措置法が改正され、市町村が立地適正化計画を作成することで、居住や都市機能(医療・福祉・商業施設など)を特定のエリアに緩やかに誘導する制度が導入されました。立地適正化計画は持続可能な都市構造への再構築を目指し、人口減少社会に対応したコンパクトシティを実現するためのマスタープランとして位置づけられています。

コンパクトシティ、立地適正化計画、ウォーカブルの三者の関係を整理すると、コンパクトシティは都市計画の理念・ビジョンとして都市機能の集約と持続可能な都市構造の実現を目指すものです。立地適正化計画はコンパクトシティという理念・目標を実現するための具体的な法的制度・ツールであり、居住誘導区域や都市機能誘導区域の設定により緩やかに都市機能を集約していきます。ウォーカブルはまちづくりの質的目標として、歩いて楽しい、居心地の良い空間づくりを目指すものです。つまり、コンパクトシティが「どこに集約するか」という都市構造の問題であるのに対し、ウォーカブルは「集約した場所をどのような質の空間にするか」という空間の質の問題に焦点を当てています。

骨太の方針2025の概要と都市政策

経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針2025)は令和7年(2025年)6月13日に閣議決定されました。石破政権下で初の骨太方針となり、基本的には岸田前政権の「新しい資本主義」の賃上げ・産業政策に重点が置かれた前年踏襲の内容ですが、石破首相の重視する「地方創生」の色彩が強まっています。

骨太の方針2025は日本社会が「金利のある世界」「持続的な物価上昇」「本格的な人口減少」という3つの不可逆的かつ構造的な変化に直面する、歴史的なパラダイムシフトを宣言した方針です。このような大きな社会変化に対応するため、都市政策においても持続可能性と効率性を重視した取り組みが求められています。

骨太の方針2025におけるまちづくり・都市政策

骨太の方針2025には持続可能なインフラマネジメントとまちづくりの高度化に関する施策が盛り込まれています。具体的には立地適正化計画による取組を充実させるとともに、災害に強い国土・地域づくりの観点も踏まえて広域的な都市圏のコンパクト化を進めるとしています。

また、不動産IDへの位置情報の付与や3Dモデル(建築BIM、PLATEAU)の連携の取組を進め、建築・都市のDXを進展させ、まちづくり・防災の高度化や新ビジネス創出を進めるとしています。さらに、まちづくりGXの取組、ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に向けた地域活動、グリーンインフラの活用等を推進するとしています。これらの施策はウォーカブルなまちづくりの基盤を強化するものとして位置づけられます。

骨太の方針2025における交通政策との連携

骨太の方針2025では「交通空白」解消に向けた取組方針2025に基づき、2027年度までの集中対策期間で、公共交通・日本版ライドシェア等の普及、自動運転の普及・拡大等、地域交通のリ・デザインを進める方針が示されています。

コンパクト・プラス・ネットワークの考え方に基づき、都市機能の集約と公共交通ネットワークの再編を一体的に進めることで、ウォーカブルなまちづくりの基盤が強化されることが期待されます。歩行者中心のまちなかと公共交通を結びつけることで、自動車に頼らない移動手段の選択肢が広がり、より多くの人々がウォーカブルな環境の恩恵を受けられるようになります。

都市DXの推進とウォーカブルシティ

都市DXの推進として、建築BIM(3Dモデルに建築情報を統合する手法)や都市の3DデジタルツインであるPLATEAUの活用により、まちづくりの計画策定や防災シミュレーション、インフラ管理を高度化・効率化する取組が進められています。

これらのデジタル技術はウォーカブルなまちづくりの計画立案や効果検証にも活用が期待され、より効果的・効率的な施策推進に寄与するものと考えられます。例えば、歩行者の動線分析や滞留空間の最適配置、日射・風環境のシミュレーションなど、デジタル技術を活用することで、より快適なウォーカブル空間の設計が可能となります。

ニューヨークの先進事例

海外のウォーカブルシティの先進事例として、まずニューヨーク市が挙げられます。ブルームバーグ前市長のもと、ジャネット・サディク=カーン女史が交通局長に就任したのをきっかけに、官民学の協働体制の構築やプラザ・プログラム等の制度創設が行われました。2009年には初めて「Street Design Manual」が作成されています。

タイムズスクエア周辺では元々自動車が通っていた道を広場として再構築したことで安全性が高まり、以前より歩行者の数が11%増加しました。新型コロナウイルスの感染拡大以降、ニューヨーク市では街路等の屋外空間活用を加速化しており、Open StreetsやOpen Restaurantsなどの取り組みが進められています。飲食店が歩道や車道の一部を利用してテラス席を設置するなど、屋外空間の活用が大きく広がりました。

バルセロナのスーパーブロック

スペインのバルセロナでは「スーパーブロック」と呼ばれる先進的な取り組みが進められています。これは9つの街区を1つの大きな区画としてまとめ、その内部への自動車の進入を制限する手法です。スーパーブロック内では歩行者が優先され、必要な施設が徒歩で行ける距離に配置されています。

高齢者や子どもでも安全に移動でき、生活の利便性も確保されているこの取り組みは、ウォーカブルシティの先進事例として世界的に注目を集めています。自動車交通を周辺の幹線道路に誘導することで、ブロック内部には静かで安全な生活空間が生まれ、住民の生活の質が大きく向上しています。

コペンハーゲンとポートランドの事例

オープンカフェ大国といわれるデンマークの首都コペンハーゲンでは、大小さまざまなパブリックスペースがまちなかに点在し、あちこちにテラスが設けられています。歩道と連続した自転車レーンが整備され、歩行者と自転車が共存する都市空間が形成されています。自動車分担率は30~40%程度であり、充実した自転車インフラと歩行者空間により、ウォーカブルなまちづくりを実現しています。

世界一の自動車保有台数を誇る米国におけるウォーカブルシティの先駆けといえるのが、オレゴン州ポートランドです。1970年代に「歩くのが楽しいまち」へと大きく舵を切りました。高速道路拡張計画が市民の反対運動により中止となり、既存の高速道路も撤去され、その跡地を利用して公園が作られました。ポートランドの街区は全米一小さいといわれており、60m×60mが標準的な大きさです。ニューヨーク市の220m×100m程度と比べるととてもコンパクトな街区になっており、小さな街区は歩行者にとって回遊しやすく、多様なルート選択を可能にしています。

姫路市と札幌市の国内事例

国内の事例として、まず姫路市(兵庫県)が挙げられます。姫路市は国土交通省がモデルケースとして注目している事例であり、姫路駅前は歩行空間化されており比較的広めの歩行者空間が整備されています。駅前のウォーカブル空間の背後には昔ながらの商店街があり、その商店街と駅前のウォーカブルなエリアをいかに繋げるかが今後の課題とされています。

札幌市(北海道)では令和5年(2023年)10月に策定した「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン(戦略編)」に基づき、「居心地が良く歩きたくなるまち(ウォーカブルシティ)」を実現するため、都心・地域交流拠点・住宅市街地それぞれにおいてハード・ソフト両面から効果的な取組を推進しています。令和6年(2024年)6月14日には天野副市長を本部長とする「札幌市ウォーカブル推進本部」を設置し、局横断的な推進体制を構築しました。札幌市の課題である「冬のウォーカブル」を考えるため、新さっぽろ駅周辺地区で冬のウォーカブル実証実験イベントも実施しています。

歩行者利便増進道路制度(ほこみち)

ほこみち(歩行者利便増進道路)制度は2020年5月27日に公布された「道路法等の一部を改正する法律」により、2020年11月25日より施行されました。これは公道で営業や看板の設置等が可能になる規制緩和のことで、賑わいのある街づくりを行うための道路の指定制度です。

従来、道路の多様な活用を困難にしていた「無余地性の基準」「既存の占用許可の優先」「5年の占用期間」という3つの規制が緩和されています。歩行者利便増進道路では無余地性の基準にとらわれず占用許可が認められるためオープンカフェのような営業も可能になり、占用希望者が競合しても公募によって新たな占用許可を与えることができ、占用期間も最長20年に延長されました。道路法改正の「歩行者利便増進道路」制度と都市再生特別措置法改正の「まちなかウォーカブル区域」の合わせ技で、相乗効果が期待されています。

15分都市の概念とウォーカブルとの関連

「15分都市」という言葉は2016年にソルボンヌ大学のカルロス・モレノ教授によって提唱された概念です。彼はこのアイデアを開発したことで2021年にObel賞を授与されました。「15分都市圏」構想は買い物、仕事、娯楽、文化、スポーツ、医療など、生活に必要なものすべてが自宅から徒歩15分、自転車5分圏内でアクセスできるという考え方です。

国土交通省が公開している「都市構造の評価に関するハンドブック」では、生活サービスの充足率の計算に使用する一般的な徒歩圏は800m、高齢者は500mと設定されています。これはおおむね5~10分徒歩圏であり、徒歩による15分圏域よりも小さく設定されています。高齢化が進む日本では、高齢者の歩行圏が縮小し生活サービスへ十分アクセスできないという問題が発生するため、移動販売等による生活サービスの補完やバスやタクシーなどの交通手段による生活圏の拡充という施策が重要になっています。

ウォーカブルシティ実現に向けた課題

ウォーカブルシティの実現に向けてはいくつかの課題も存在します。まず計画間の連携の問題があります。コンパクト・プラス・ネットワーク施策に基づく「立地適正化計画」と「地域公共交通網形成計画」は、本来は一体的に連携して推進することでシナジーを生み出すはずですが、それぞれ別の計画として推し進められ、その効果が限定的なものにとどまっているとの指摘があります。

次に既存市街地との調和の課題があります。駅前や新規開発地区でウォーカブルな空間を整備しても、その周辺にある既存の商店街や住宅地との連携が不十分であれば効果は限定的になります。また、地域特性への対応も重要であり、札幌市の「冬のウォーカブル」の取り組みが示すように、地域の気候条件や地形条件に応じたウォーカブル施策の検討が必要です。さらに、官民連携の推進として、公共空間の整備だけでなく民間建築物の低層部のオープン化やオープンカフェの設置など、民間の協力が不可欠であり、税制特例などのインセンティブを活用しつつ官民が一体となった取り組みを推進することが重要です。

まとめと今後の展望

ウォーカブルシティは単に「歩きやすい街」を作るだけでなく、健康増進、経済活性化、環境負荷軽減、コミュニティ再生など多面的な効果をもたらす都市政策のコンセプトです。国土交通省を中心に法制度の整備や支援事業の創設が進められ、2025年9月30日現在、全国397都市がウォーカブル推進都市として取り組みを進めています。

骨太の方針2025においてもコンパクト化や都市DXの推進など、ウォーカブルなまちづくりと関連する施策が盛り込まれており、国の政策としての位置づけが明確になっています。海外の先進事例から学びつつ、日本各地の特性を踏まえたウォーカブルシティの実現に向けて、今後も官民一体となった取り組みが期待されます。人口減少社会において持続可能で魅力的なまちづくりを進めるため、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の概念はますます重要性を増していくと考えられます。

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