練馬区にある石神井公園では、三宝寺池のほとりを歩く定番のウォーキングコースが整備されており、武蔵野に残る貴重な湧水地をめぐることができます。起点となる石神井公園駅から三宝寺池までは徒歩7分ほどで、初心者向けの周遊コースなら1時間程度、牧野記念庭園まで足を延ばすロングコースなら7.7キロメートルにおよぶ本格的な散策になります。井の頭池、善福寺池と並ぶ武蔵野三大湧水池のひとつである三宝寺池を中心に、石神井城跡や氷川神社、三宝寺、道場寺など、練馬区の歴史をたどれる場所が点在しているのも見逃せないところです。
この記事では、石神井公園へのアクセス方法から、三宝寺池・石神井池それぞれの見どころ、豊島氏にまつわる城跡の歴史、桜や紅葉が楽しめる季節ごとの表情、そしておすすめの周遊ルートまで、実際に歩く前に押さえておきたい情報を整理しました。休日の散策先を探している方にも、練馬区の歴史散歩をじっくり楽しみたい方にも、参考にしていただける内容です。

石神井公園へは石神井公園駅から徒歩7分でアクセスできる
石神井公園の最寄り駅は西武池袋線の石神井公園駅で、改札を出てから徒歩7分ほどで園内に入れます。西武新宿線を使う場合は、上井草駅から関東バスの長久保行きに乗り「三宝寺池」バス停で降りる経路もあり、逆方向なら石神井公園行きのバスで「石神井公園」バス停に着きます。電車利用が基本になりますが、バスの選択肢も知っておくと当日のルートを組みやすくなります。
園内のサービスセンターは午前8時30分から午後5時30分まで開いており、12月29日から1月3日は閉所します。園内マップの配布や公園スタンプの設置に加え、赤ちゃん連れでも使える授乳スペース「赤ちゃんふらっと」やAEDも用意されているので、初めて訪れるなら先にここへ寄って最新情報を確認しておくと安心です。
駐車場は24時間営業で1時間1,500円
車で向かう場合は園内の有料駐車場が使えます。24時間営業で41台分(うち障害者用2台)あり、臨時駐車場が用意される日もあります。料金は1時間まで1,500円、以降は30分ごとに500円が加算される仕組みで、都心近郊の公園としては高めの水準です。桜や紅葉のシーズン、休日は満車になりやすいため、練馬区石神井台1-26-1のサービスセンターに事前に空き状況を確認するか、公共交通機関に切り替えたほうが無難でしょう。
石神井公園には野球場やテニスコート、アスレチック広場もある
石神井公園には、合計3面の野球場と石神井池に近いテニスコート、子ども連れに人気のアスレチック広場が設けられています。もともとは地下水が豊かに湧き出る三宝寺池の周辺を整備し、1959年に都立公園として開園した公園で、半世紀以上が経った今も水辺の風景に加えて運動施設が充実しているのが特徴です。野球場の利用料金は平日1時間1,200円、土日祝日は1,500円が目安で、散策の合間に立ち寄って体を動かす家族連れの姿もよく見られます。
三宝寺池は国天然記念物の植物群落が残る湧水地
三宝寺池は、井の頭池、善福寺池と並ぶ武蔵野三大湧水池のひとつです。かつては真冬でも凍らないほど豊かな地下水が湧いていたと伝えられていますが、都市化が進むにつれて湧水量は年々減り、今では井戸水をポンプで汲み上げて水位を保っているのが実情です。それでも池の一角には、ミツガシワやミミカキグサといった寒地性・湿地性の植物が育つ三宝寺池沼沢植物群落が残り、国の天然記念物に指定されています。水温の上昇や水質の悪化で一時は衰退が心配された群落ですが、専門家の管理のもと大型の水生植物を刈り取ってカキツバタの生育を促す取り組みが続けられており、水辺観察園では今も水生植物の様子を間近に見られます。
池の中央付近には厳島神社が張り出すように建っています。明治から大正にかけて周辺の複数の神社が合祀されてできたと伝えられ、水面に浮かんで見える社殿は三宝寺池を象徴する撮影スポットのひとつです。
厳島神社と水辺観察園でカワセミに出会える
三宝寺池のほとりには野鳥誘致林と呼ばれる樹林帯があり、シロハラやコゲラ、シジュウカラ、メジロといった身近な野鳥が姿を見せます。水辺観察園ではカワセミが水中に飛び込んで小魚を捕らえる場面や、サギ類が水辺にたたずむ様子を間近で見られることもあります。野鳥観察は早朝が狙い目とされ、双眼鏡を持って訪れる人も少なくありません。都市部でこれだけ多様な野鳥に出会えるフィールドは、石神井公園の自然の豊かさをよく表しています。
中の島は年数回だけ橋が架かる特別公開エリア
三宝寺池の中央には「中の島」と呼ばれる小島があります。貴重な自然環境を守るため普段は立ち入りが制限されていますが、年に数回、期間を区切って橋が架けられ一般公開されることがあります。池の中心から眺める景色は普段見られないもので、公開のタイミングが合えば訪れておきたいところです。
石神井池のボートは60分700円から楽しめる
石神井池のボートは、ローボート(大人3人まで)が60分700円、延長は30分ごとに300円というのが目安です。三宝寺池が自然の湧水池であるのに対し、石神井池は昭和初期に整備された人工の水辺で、地元では「ボート池」と呼ばれています。細長い水面に貸しボートが浮かぶ様子は公園でもとりわけにぎやかな光景で、スワン型のほか足漕ぎ式・手漕ぎ式のボートも用意されています。料金は変更される場合があるため、訪問前に確認しておくとよいでしょう。営業は通年ですが、12月から2月は土日・祝日のみとなり、シーズン中は木曜日が定休日です。
池の周囲は舗装された遊歩道が続き、ベビーカーや車椅子でも歩きやすい造りです。桜並木が続く区間もあり、春は花見客でにぎわいます。三宝寺池とは隣接しているので、両方をつなげて一周するのが公園を効率よく楽しむ定番の歩き方です。
石神井城跡は1477年に太田道灌に攻め落とされた豊島氏の拠点
三宝寺池の南側の台地には、中世の武士団・豊島氏の居城だった石神井城の跡が残っています。豊島氏は平安時代後期から室町時代にかけて東京23区北部一帯に勢力を持ち、1349年ごろから石神井一帯を治めるようになったと伝えられます。1368年の平一揆で敗れて一時は関東管領上杉氏に所領を没収されましたが、1395年に所領を取り戻しました。
文明9年、西暦にして1477年、当時の城主だった豊島泰経は江戸城主の太田道灌との抗争に敗れ、石神井城は落城しました。豊島氏がこの地に城を築いたのは、三宝寺池という水源を押さえることが地域支配のうえで重要だったからだとされています。現在も南側の台地には空堀や土塁の一部が残り、東京都の史跡に指定されています。
照姫まつりは毎年4月第4日曜に開催される
練馬区では毎年4月の第4日曜日に照姫まつりが開かれており、照姫や豊島泰経、奥方役をはじめ時代装束をまとった総勢およそ100名が公園周辺を練り歩く照姫行列が最大の見どころです。まつりの由来は落城にまつわる照姫伝説で、豊島氏の娘とされる照姫が、城が落ちた際に三宝寺池に身を投げたという言い伝えです。真偽は定かではないものの、地域に根付いた物語として今も語り継がれています。まつりの当日は、龍神を先頭に男女の武者や重臣、姫たち、花拍子、巫女舞姫、稚児童姫などが続く行列が、公園中央の野外ステージでの出陣式に始まり、商店街や駅前を巡って公園に戻る帰還式で締めくくられます。会場には地元グルメの屋台も並び、石神井公園商店街の飲食店も軒先にブースを出すなど、地域を挙げての行事としてにぎわいます。桜の時期と重なることが多いため、花見を兼ねて訪れる人も少なくありません。
三宝寺・道場寺・氷川神社は豊島氏ゆかりの寺社が集まるエリア
石神井氷川神社は石神井の総鎮守で、創建は室町時代の応永年間、西暦でいう1394年から1428年ごろと伝えられています。当時勢力を持っていた豊島氏が石神井城の守護神として、武蔵国一宮である大宮の氷川神社から分霊を勧請したのが始まりとされ、社格は郷社です。例大祭は毎年10月の第3日曜日に行われ、前日土曜の宵宮祭とあわせて里神楽や石神井囃子が奉納され、多くの露店で秋の恒例行事としてにぎわいます。
三宝寺は真言宗の寺院で、開山は応永元年(1394年)と伝えられます。石神井一帯を治めていた豊島氏が篤く帰依したことで発展した、長い歴史を持つ古刹です。道場寺は豊島氏の菩提寺で、応安5年(1372年)に当時の城主・豊島景村の養子である輝時が大覚禅師を招いて創建しました。境内には1477年に太田道灌に滅ぼされた最後の城主・泰経とその一族の墓とされる石塔が3基残っています。昭和48年に建てられた三重塔には、人間国宝だった香取正彦作の金銅薬師如来像が安置され、台座にはスリランカから拝受した仏舎利が納められているとされています。
観蔵院曼荼羅美術館と池淵史跡公園にも足を延ばせる
練馬区南田中の観蔵院は不動明王を本尊とする真言宗の寺院で、境内の曼荼羅美術館には日本の仏画やネパールの民俗絵画が展示されています。石神井公園駅から徒歩約15分、練馬高野台駅からは徒歩約10分の距離です。
池淵史跡公園は旧石器時代から中世にまたがる複合遺跡で、旧石器時代の石器ブロックや縄文・弥生時代の集落跡、中世の堀跡が見つかった場所です。園内では縄文時代の竪穴式住居の復元展示のほか、明治20年代初頭に練馬区中村に建てられた茅葺き民家を2010年に移築復原した旧内田家住宅も見学できます。開館時間は午前9時から午後6時まで、休館日は月曜日(祝日の場合は翌平日)で、石神井公園駅から徒歩約15分の距離にあります。
ふるさと文化館分室と牧野記念庭園で練馬の歴史と植物にふれる
2010年3月に開館した石神井公園ふるさと文化館(本館)は、練馬区の歴史や伝統文化、自然を体験しながら学べる博物館です。常設展示室では旧石器時代の出土品から、練馬大根にまつわる江戸時代の資料、鉄道開通でまちへと変わった近代の様子、アニメーション産業が育った現代まで、練馬の歴史を時代順にたどれます。常設展示は無料で、特別展が開催される際は別途観覧料が必要になることがあります。
石神井松の風文化公園内にあるふるさと文化館分室は、練馬区ゆかりの文化人を紹介する展示や、芥川賞作家・五味康祐が愛したクラシック音楽とオーディオ装置の展示が特徴です。開館時間は午前9時から午後6時まで、休館日は月曜日(祝日の場合は翌平日)と12月29日から1月3日で、常設展示は無料です。
牧野記念庭園は、植物学者の牧野富太郎博士が1926年から30年ほど暮らした自宅と庭の跡地です。1958年に博士の業績をたたえる庭園として開園し、およそ300種の植物が育っています。博士が命名した仙台八重桜や、仙台で見つけて亡き妻の名を付けたスエコザサなど、博士ゆかりの植物を実際に見られるのが魅力です。開園時間は午前9時から午後5時まで、休園日は火曜日と年末年始で、入園は無料です。大泉学園駅から南へ徒歩約5分と、アクセスも良好です。
施設ごとの開館時間と休館日
| 施設名 | 開館時間 | 休館日 | 入館料 |
|---|---|---|---|
| ふるさと文化館分室 | 9:00~18:00 | 月曜(祝日時は翌平日)、年末年始 | 常設展示は無料 |
| 牧野記念庭園 | 9:00~17:00 | 火曜、年末年始 | 無料 |
| 池淵史跡公園 | 9:00~18:00 | 月曜(祝日時は翌平日) | ー |
桜は290本、紅葉は11月中旬から見頃を迎える
石神井公園にはソメイヨシノとヤマザクラをあわせておよそ290本の桜が植えられており、練馬区を代表する花見の名所のひとつになっています。サービスセンター脇には「ねりまの名木」に指定されたソメイヨシノ並木があり、石神井池南側の台地にはソメイヨシノより遅れて咲く山桜もあるため、比較的長い期間花見を楽しめます。石神井池の水面に映る桜並木も人気の景観です。
夏は三宝寺池周辺の緑陰が心地よい木陰をつくり、水生植物群落でも花を咲かせる植物が増えます。紅葉は例年11月中旬から下旬にかけてが見頃で、園内には多くの樹種があるため色づきの時期がずれ、長期間紅葉を楽しめるのが特徴です。冬は葉が落ちて水辺の景観がより開け、静けさの中で野鳥観察を楽しむのに向いています。
おすすめコースは1時間の周遊と7.7キロのロングルートの2パターン
初めて訪れる場合や短時間で回りたい場合は、石神井公園駅を起点・終点にする周遊コースが手軽です。駅から徒歩7分で石神井池に着き、池を一周してから三宝寺池エリアに移動し、厳島神社や石神井城跡を見て駅に戻れば、1時間ほどで公園の主要な見どころを押さえられます。
大泉学園駅がゴールの7.7キロコースは10,300歩
じっくり歩きたい場合は、石神井公園駅を起点に石神井池・三宝寺池を巡ったあと、石神井城跡、石神井氷川神社、三宝寺、道場寺、ふるさと文化館(本館・分室)、池淵史跡公園を経由して牧野記念庭園まで足を延ばし、大泉学園駅にゴールするロングコースがあります。全長は約7.7キロメートル、所要時間はおよそ1時間50分、歩数にしておよそ10,300歩とされ、公園の自然と練馬区の歴史をあわせて満喫できる内容です。練馬高野台駅を起点に観蔵院曼荼羅美術館を経由して同じルートをたどり、大泉学園駅にゴールする組み方もでき、西武池袋線沿線の複数の駅を使い分けられるのもこのエリアの利点です。7.7キロメートルという距離は、普段あまり歩き慣れていない人には少し長く感じられる目安ですが、寺社や史跡、庭園と見どころが途切れずに続くため、飽きずに歩き切れる、達成感のある散策コースになっています。
ウォーキングの合間には周辺の飲食店にも立ち寄れます。石神井公園駅に直結するエミオ石神井公園1階のタイ料理・ベトナム料理店はランチタイムがにぎわいますし、駅から徒歩5分ほどのクラフトビールとコーヒーが楽しめるカフェバーや、プティガトーが並ぶパティスリー、公園北口から徒歩10分ほどのパスタやピザが楽しめるカフェもあります。
歩く際は、三宝寺池周辺に木道や未舗装の小道があるため、歩きやすいスニーカーが向いています。夏は虫よけ、冬は防寒を用意し、野鳥観察をするなら双眼鏡があると楽しみが広がります。桜や紅葉の時期はカメラを持参して、水辺に映る景色を撮っておくのもおすすめです。
石神井公園ウォーキングでよくある疑問
駐車場が混みやすいのはいつかとよく聞かれますが、桜や紅葉のシーズン、休日は満車になりやすいので、事前にサービスセンターへ確認するか公共交通機関を使うほうが安心です。ボートは毎日営業しているのかという疑問もありますが、12月から2月は土日・祝日のみの営業で、シーズン中は木曜日が定休日になります。どのくらいの時間で回れるのかについては、石神井公園駅発着の周遊コースなら1時間程度、牧野記念庭園まで足を延ばす場合は7.7キロメートルで1時間50分ほどを見込んでおくとよいでしょう。ウォーキングにどの程度の運動量があるのかも気になるところですが、一般にウォーキングは体重や速度、時間によって消費エネルギーが変わり、1時間あたりのおおよその目安は150キロカロリーから350キロカロリー程度、歩行距離(キロメートル)×体重(キログラム)×0.035という式で簡易的に見積もる方法もあります。腕を振って歩いたり、途中で速歩きを混ぜるインターバルウォーキングを取り入れたりすると、心拍数を上げて運動量を増やせます。桜と紅葉のどちらが見やすいかという質問もよく受けますが、ソメイヨシノからヤマザクラへと開花が移り変わるため桜は比較的長い期間楽しめ、紅葉は例年11月中旬から下旬にかけてが見頃です。人混みを避けてゆっくり歩きたい場合は、平日の午前中に訪れると比較的落ち着いて散策できます。持ち物で迷ったときは、三宝寺池周辺に木道や未舗装の小道があるため歩きやすい靴を選び、野鳥観察をするなら双眼鏡、桜や紅葉の時期にはカメラを用意しておくと、その場で困ることが少なくなります。
石神井公園と三宝寺池は、都心から近いのに武蔵野の湧水地の風景と、豊島氏の歴史を同時に味わえる練馬区の散策スポットです。ボート遊びや桜並木を楽しむ気軽な過ごし方から、植物群落の観察や城跡巡り、牧野記念庭園まで歩く本格的なロングコースまで、目的や体力にあわせて選べる懐の広さも魅力です。季節を変えて歩けば、春の桜、夏の緑陰、秋の紅葉、冬の澄んだ空気と、そのたびに違う表情に出会えます。三宝寺池のほとりを歩きながら豊島氏の栄枯盛衰にふれ、牧野記念庭園で植物学者ゆかりの草花を眺める時間は、都会の喧騒からいったん離れられる過ごし方になるはずです。








