石川県森林公園のセラピーロードは、里山の森と湖を巡る全5本のウォーキングコースで、生理実験や心理実験による科学的な検証を経て認定されています。金沢の中心部から車でおよそ20分、河北郡津幡町にあるこの公園は、総面積1150ヘクタールという広さを持ち、加茂池やみかど池といった湖と広葉樹林が一体となった風景が広がっています。デスクワークで凝り固まった体をゆるめたい人にも、休日にしっかり歩いて汗をかきたい人にも合うコースが揃っており、歩きやすい靴さえあれば特別な準備なしに始められます。この記事では、5本のセラピーロードそれぞれの距離や見どころから、アクセス、周辺施設、季節ごとの楽しみ方まで、実際に歩く前に知っておきたい情報をまとめました。

石川県森林公園は1150ヘクタールの敷地に5本のセラピーロードを持つ
石川県森林公園は、石川県のほぼ中央、河北郡津幡町に位置する県立の自然公園です。総面積は1150ヘクタールにおよび、本州の都市近郊型森林公園としては有数の広さとされています。園内は大きく二つのエリアに分かれており、動物園やボート乗り場を備える津幡園地と、三国山にキャンプ施設を構える三国山園地とで構成されています。
谷あいには加茂池、みかど池、とがの木池という複数の池が点在し、里山の風景と溶け合っています。植生はクロガネモチやコナラを中心とした広葉樹林に、スギやアカマツの人工林が混じり合う構成で、四季を通じて数百種の植物が観察できる環境が整っています。
この公園全体は森林セラピー基地として認定されており、石川県内で最初にこの認定を受けた場所でもあります。認定はNPO法人森林セラピーソサエティが生理実験と心理実験によるリラックス効果の科学的な検証を行ったうえで下されるもので、雰囲気だけで選ばれた森ではなく、データに裏付けられた癒やしの効果が見込めるフィールドという位置づけです。
昭和48年開園から半世紀を超え2023年に50周年を迎えた
石川県森林公園が開園したのは昭和48年、1973年5月のことです。令和5年、2023年には開園50周年という節目を迎えました。半世紀を超える年月をかけて樹木が育ち、現在のような落ち着いた里山の景観がつくられてきた経緯があります。
アクセスは金沢市街から車で20分、駐車場は無料で使える
車で訪れる場合、JR本津幡駅からは約5分、金沢東ICからは約20分というアクセスの良さがあります。公共交通機関を使う場合は、金沢駅からJR七尾線に乗って中津幡駅で下車し、そこから徒歩で約35分かかります。金沢駅からJR七尾線またはIRいしかわ鉄道線で津幡駅まで行き、津幡町営バスの緑が丘線に乗り換えて「森林公園南口」で降りるルートも使えます。マイカーなら片道20分から30分圏内という距離感なので、休日の日帰りウォーキングにも組み込みやすい場所です。
駐車場は無料で利用できます。開園期間は1月4日から12月28日まで、開園時間は8時30分から17時まで(動物園駐車場は16時まで)です。入園料は無料ですが、フィールドアスレチックなど一部の施設は有料になるため、訪れる前に利用したい施設を確認しておくと安心です。年末年始を除けばほぼ通年で開放されているため、積雪の少ない時期であれば季節を問わず訪れられます。
セラピーロードは生理実験でリラックス効果が確認された認定歩道
セラピーロードとは、単なる遊歩道やウォーキングコースとは違い、専門家によるフィールド実験で科学的な効果検証を経たうえで認定される道を指します。歩くことで得られるリラックス効果が、データとして裏付けられているという点が特徴です。
森林セラピー基地の認定制度は2006年に始まりました。NPO法人森林セラピーソサエティが、森の持つリラックス効果を科学的に検証した知見をもとに、北海道から沖縄まで全国60ヶ所以上の森を森林セラピー基地または森林セラピーロードとして認定しています。認定には、2本以上のセラピーロードが整備された森林地帯であることに加え、健康維持や増進のためのアクティビティを提供できる施設が整っていることが条件になります。審査ではリラックス効果に関する実験結果、自然や社会条件の評価、滞在型施設の充実度なども合わせて審議されるため、認定を受けた森は科学的な裏付けを持つ癒やしの森だと言えます。石川県森林公園は、こうした全国60ヶ所以上の森林セラピー基地のひとつであり、石川県内では最初に認定を受けたフィールドです。
中年男性を対象にした実験で血圧とコルチゾールの低下を確認
森林セラピーの効果については、いくつかの実験結果が報告されています。中年男性を対象にした6時間程度の森林セラピープログラムの実験では、収縮期と拡張期の血圧、尿中アドレナリン濃度、血中コルチゾール濃度のいずれもが有意に低下し、身体的なストレス状態が軽くなることが確認されました。コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれる物質で、木々が発するフィトンチッドを含む香りを吸い込むことで血中濃度が下がるとされています。
森林環境下では都市部と比べて副交感神経の活動が優位になることも報告されており、これにより血圧や脈拍が下がり、生理的なリラックス状態がもたらされます。心理面ではポジティブな感情が高まり、ストレスホルモンの分泌量が減ることも分かっています。さらに、フィトンチッドの吸収や森林浴のリラックス効果によって、体内のナチュラルキラー細胞が活性化され、免疫力の向上につながるという研究成果もあります。歩くという行為そのものにも血流を促す働きがあるため、森林特有の香りや視覚的なリラックス効果と重なり合うことで、屋内トレーニングや街中でのジョギングとは違う質の休息が得られます。
5本のセラピーロードは距離も見どころも大きく異なる
石川県森林公園には、こうした検証を経て認定された5本のセラピーロードが用意されています。所要時間は全体で約30分から1時間半までとコースによって差があり、レベルは初級から中級程度に設定されているため、体力や同行者に合わせて選べます。判明している各ロードの特徴は次のとおりです。
| ロード | 距離 | 主な見どころ |
|---|---|---|
| ロード1 | 約1,700m | みかど池を周回、スポーツ広場とフィールドアスレチックが隣接 |
| ロード2 | 約5,350m | 加茂池の湖畔サイクリングロードを巡る公園内最長コース、ボート乗り場と森林動物園に隣接 |
| ロード3 | 約3,770m | MISIAの森を起点に加茂池の朱塗りの吊り橋を渡る |
| ロード4 | 約1,165m | 尾根道を歩く平坦な折り返しコース、白山山系を望む |
| ロード5 | 詳細情報なし | 現地の案内板やビジターセンターで最新情報を確認 |
ロード2は加茂池を大きく周遊する公園内最長5350メートルのコース
ロード2は、加茂池の湖畔に沿ったサイクリングロードを巡る、公園内で最も距離の長いコースです。沿線にはボート乗り場や森林動物園があり、湖の景観をたっぷり楽しみながら本格的に歩けます。しっかり汗をかきたい人、運動量を確保したい人に向いたロングコースです。
ロード3はMISIAの森から朱塗りの吊り橋を渡る絶景コース
ロード3は、歌手のMISIAが提唱した「MISIAの森プロジェクト」の舞台であるMISIAの森を起点に、加茂池にかかる朱塗りの吊り橋を渡っていくコースです。橋の上から見渡す加茂池と森の眺めは、園内でも屈指の景観として知られています。写真を撮りながら回りたい人に向いたルートです。
ロード4は尾根道から白山山系を望める短めのコース
ロード4は尾根道を歩く平坦な折り返しコースです。他のロードに比べて距離は短いものの、尾根からは白山山系を望むことができ、天候に恵まれれば遠くの山並みまで見渡せます。短い時間でも歩いた甲斐のある景色に出会いたい人向けのコースです。
ロード1はみかど池畔でスポーツ広場に近い入門コース
ロード1は、みかど池を巡るコースです。沿線にはスポーツ広場やフィールドアスレチックが設けられており、池の水面を眺めながら歩けます。運動施設が隣接しているため、ウォーキングの前後に体を動かしたい家族連れにも向いています。
初めて訪れるなら、まず距離の短いロード1やロード4から歩き始め、慣れてきたらロード2やロード3の湖畔コースに挑戦するという楽しみ方もできます。小さな子供連れの家族はロード1が扱いやすく、景色を楽しみながらゆっくり歩きたいならロード3が絵になります。運動不足を感じている人には加茂池を大きく周遊するロード2が合いますし、短時間で達成感のある眺望を求めるなら白山山系を望めるロード4が狙い目です。
森林セラピープログラムは五感を使う体験型メニューを用意
石川県森林公園では、セラピーロードを自由に歩くだけでなく、より深く癒やしを体感できるプログラムも用意されています。基本プログラムの「森林散歩」と「森林安息」に加え、さらに体験を加えた「森林セラピープラス」、少人数からでも参加できる「森林セラピーユアーズ」というプログラムがあります。
森林セラピープラスは、セラピーロードでの森林散歩と森林安息に、嗅覚・視覚・触覚・聴覚・味覚という五感を使って森を感じる「プラスワン」の体験を組み合わせたプログラムです。木々の香りを嗅いだり、樹皮に触れたり、鳥のさえずりに耳を澄ませたりと、五感をフル活用することでより深いリラックス効果を狙って設計されています。
ガイドと一緒に歩道を巡り森林浴を楽しむ「森林浴コースガイドウォーク」のほか、年間を通じてさまざまな体験や自然観察会などのイベントも計画されています。一人で静かに歩くのも良いですが、ガイド付きのプログラムに参加すれば、公園の植生や生き物についての知識も深まります。プログラムの料金や予約方法は、公園や津幡町の窓口に直接問い合わせるのが確実です。
加茂池のボートとみかど池のアスレチックが二大人気スポット
加茂池は、園内でもひときわ存在感のある湖で、湖畔にはボート乗り場が設けられています。足こぎ式の3人乗りスワンボート、ヘリコプター型のボート、2人乗りの手こぎボートなどが用意されており、ウォーキングの合間に水上から景色を楽しめます。歩くだけでなく、ボートに乗って湖面から森を眺める楽しみ方もできる点が、この公園ならではの魅力です。
みかど池は、ロード1が周回するコンパクトな池で、周辺にはスポーツ広場やフィールドアスレチックが整備されています。フィールドアスレチック「いしかわ百万石めぐり」は2023年にリニューアルオープンし、ネットやロープを伝って登るものなど約20種類の遊具が設置されました。営業期間は3月から11月まで、営業時間は9時から16時30分(最終受付15時)で、安全のため利用対象は小学生以上となっており、未就学児は入場できません。小中学生のみでの入場もできず、同伴する保護者にも入場料が必要になります。サンダルやヒールでの入場もできないため、ウォーキングと合わせて挑戦する場合はスニーカーなど動きやすい靴で訪れるのがおすすめです。
MISIAの森は2011年開始のアートで生物多様性を伝える取り組み
MISIAの森は、歌手のMISIAが自然豊かな石川で生物多様性の大切さを発信したいという思いから2011年に始めた「MISIAの森プロジェクト」の拠点で、加茂池付近の約5ヘクタールのエリアに広がっています。アートを通じて生物多様性保全の重要性を伝える取り組みが行われており、単なる自然散策とは違った視点で森と向き合えるスポットです。ロード3を歩けば、このMISIAの森から加茂池にかかる朱塗りの吊り橋へと続くルートを体験できます。
森林動物園や三国山キャンプ場など周辺施設も充実している
公園にはこのほか、テニスコートやフィールドアスレチックを備えた「やまびこ荘」、動物たちとふれあえる「森林動物園」、屋内で木育を体験できる「森の秘密基地」、バーベキューが楽しめるパビリオン、ログハウス宿泊施設、三国山エリアの「三国山キャンプ場」など、多彩な施設が揃っています。
森林動物園では、ニホンジカやニホンザル、ホンドタヌキ、ヤギといった里山に生息する動物が飼育されており、シカやキツネ、イノシシ、リスなどは柵の中に入って直接ふれあえる展示方法が取られています。都市部の大型施設とは違い、里山の生き物を間近に感じられる素朴な雰囲気が魅力です。セラピーロードのウォーキングのあとに森林動物園へ立ち寄って里山の動物とふれあうという組み合わせは、家族連れに特におすすめです。
三国山エリアの三国山キャンプ場は、広さ約9万平方メートル、標高200メートルから300メートルほどの丘陵地帯に、ログハウスやオートキャンプサイト、キャンプサイト、バーベキュー舎が点在する本格的なアウトドアフィールドです。ログハウスは大型(定員7名)が1棟16,010円、小型(定員4名)が1棟12,810円で宿泊でき、チェックイン受付時間は13時から16時30分までです。日帰りのウォーキングだけでなく、セラピーロードを歩いたあとにキャンプ場へ泊まり、翌朝もう一度森の空気を吸いに出かけるという一泊二日のプランも組めます。休業期間は12月1日から2月28日までで、フィールドアスレチックと同じく冬季は利用できなくなる点に注意が必要です。
四季で表情を変える里山の森を歩ける
石川県森林公園は広葉樹と針葉樹が混在する森であるため、季節ごとに表情が大きく変わります。春には新緑が芽吹き、生命力にあふれた明るい森を歩けます。夏は木陰が多く、湖からの水辺の風も心地よいため、比較的涼しく感じながらウォーキングを楽しめます。秋には紅葉が里山を彩り、湖面に映り込む色づいた木々の景色も見どころのひとつです。冬は積雪により一部エリアの利用が制限されることもあるため、訪問前には公園の公式情報や津幡町の案内で最新の開園状況を確認しておくと安心です。
いずれの季節も、セラピーロードは歩きやすく景観に優れた道として整備されているため、その時々の自然の変化を感じながら歩けます。同じコースでも訪れる季節によって表情が変わるので、一度きりで終わらせず、季節を変えて何度も訪れる価値があるフィールドです。
ウォーキングの持ち物は動きやすい靴と虫よけ対策が基本
セラピーロードは基本的に歩きやすく整備された道ですが、里山特有のアップダウンや未舗装区間も含まれることがあるため、動きやすい服装と歩き慣れた靴で訪れるのがおすすめです。ロード2のような長距離コースに挑戦する場合は、飲み物を持参し、こまめな水分補給を意識しておきたいところです。
森の中は日差しが遮られて涼しく感じられる一方、夏場は湿度が高くなりやすいため、虫よけ対策をしておくと快適に過ごせます。里山ならではの野生動物や野鳥との遭遇もあるため、ガイド付きのプログラムに参加する際は指示に従いながら自然との距離感を保つことも大切です。
具体的な持ち物としては、動きやすい服装と履き慣れたウォーキングシューズを基本に、飲み物、汗を拭くタオル、夏場であれば帽子や日焼け止め、虫よけスプレーなどを用意しておくと安心です。荷物は両手が自由に使えるリュックサックにまとめておくと、吊り橋を渡ったり尾根道を歩いたりする際にも安全に行動できます。園内はスマートフォンの電波が入りにくいエリアもあるため、あらかじめコースマップを写真に収めておく、もしくは現地の案内板でルートを確認しておくと安心して歩けます。
静かに歩くなら開園直後の午前中か平日がおすすめ
開園時間は8時30分から17時までなので、湖畔をゆっくり周遊するロングコースに挑戦する場合は余裕を持ったスケジュールで訪れたいところです。朝の時間帯は森の空気が澄んでおり、フィトンチッドを感じながら歩くには向いたタイミングです。休日の午前中に訪れてセラピーロードを一周したあと、加茂池でボートに乗ったり食事を楽しんだりするというプランも組みやすくなっています。
休日の日中はフィールドアスレチックや動物園を目当てに家族連れで賑わうことが多いため、静かに森林セラピーの効果を味わいたい場合は開園直後の午前中や平日に訪れるのがおすすめです。反対に子供と一緒に賑やかに一日を楽しみたい場合は、あえて休日の日中を選び、セラピーロードのウォーキングとアスレチックや動物園でのふれあいを組み合わせるとよいでしょう。訪れる時間帯や曜日を工夫するだけで、同じ公園でも違った過ごし方ができます。
周辺カフェ「ソルア」と「けやき」で歩いたあとに休憩できる
石川県森林公園がある津幡町・かほくエリアは、山と海に囲まれた自然豊かなロケーションで、ドライブがてら立ち寄れるカフェが点在しています。セラピーロードで歩いたあとは、こうした周辺のカフェで一息つくのもおすすめです。
津幡駅から徒歩11分ほどの場所にある「ソルア」は、落ち着いた和の空間にカウンター席やテーブル席を合わせて全10席ほどを備えた小さなカフェで、スイーツを味わいながらゆっくり過ごせます。水・木・土曜に営業している田園カフェ「けやき」では、田んぼが広がるパノラマビューを眺めながら、ハムチーズホットサンドなどの軽食を楽しめます。森の中を歩いたあとに、里山ならではの景色を眺められるカフェで一休みすれば、ウォーキングの満足度も上がるはずです。
車での移動が中心になるエリアなので、営業日や営業時間は事前に確認したうえで立ち寄るのがおすすめです。セラピーロードで汗をかいたあとに、田園風景を眺めながら温かい飲み物やスイーツを味わう時間は、森の中とはまた違った形で心を落ち着けてくれます。
金沢観光と組み合わせやすい年間開放の森林セラピー基地
石川県森林公園は、金沢の中心部から車で20分というアクセスの良さと、1150ヘクタールという広さを兼ね備えた、石川県内で最初に認定された森林セラピー基地です。園内には科学的な検証を経て認定された5本のセラピーロードがあり、みかど池を巡る短めのコースから、加茂池の湖畔を大きく周遊するロングコース、MISIAの森から吊り橋を渡る景観重視のコース、白山山系を望む尾根道のコースまで、目的や体力に応じて選べます。
森林セラピーには、ストレスホルモンであるコルチゾールの低下、血圧や脈拍の安定、副交感神経の活性化によるリラックス効果、免疫機能の向上まで、複数の研究成果が報告されています。気持ちよさそうというイメージだけでなく、データに裏付けられた癒やしを求めるなら、セラピーロードを歩くという選択は理にかなっています。
加茂池でのボート遊び、みかど池周辺のフィールドアスレチック、MISIAの森でのアート体験、四季折々に変化する里山の風景など、ウォーキング以外の楽しみ方も揃っているため、一日を通してじっくり過ごせるフィールドです。金沢市内には兼六園やひがし茶屋街、金沢城公園など定番の観光スポットが多くありますが、午前中は金沢市内を散策し、午後は車で20分ほどの石川県森林公園でセラピーロードを歩くという一日プランも組める距離感です。1973年の開園から半世紀を超えて整備が続けられてきたこの森は、これからも季節ごとに違う表情を見せながら、多くの人の心と体を整える場所であり続けるはずです。









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