静岡県三島市を流れる源兵衛川は、富士山の湧水を水源とするせせらぎウォーキングコースで、三島駅から徒歩数分の距離で楽しめます。川の中に飛び石や木道が設けられており、水面すれすれの高さでせせらぎの音を聞きながら歩けるのが最大の特徴です。源兵衛川は江戸時代から農業用水として使われてきましたが、高度経済成長期に一度は汚れきってしまいました。1992年頃から始まった市民主体の再生活動によって清流を取り戻し、いまではゲンジボタルが舞う夏の名所にもなっています。この記事では、源兵衛川の水源となる湧水の正体から、具体的な散策ルート、アクセスと駐車場、季節ごとの見どころまでをまとめました。楽寿園の小浜池を起点に一本松までの区間を歩けば、三島梅花藻や三嶋大社、白滝公園といった立ち寄りスポットにも自然に出会えます。

源兵衛川は富士山の湧水を1.5キロにわたって運ぶ
源兵衛川は、三島駅の南側にある市立公園「楽寿園」内の小浜池を水源とし、市街地を通り抜けて中郷温水池まで流れる全長約1.5キロメートルの水路です。もとは農業用水として整備されたもので、川沿いには水路や取水施設の跡がいまも残っています。水源となっているのは、富士山に降った雨や雪が長い年月をかけて地下に浸透し、三島市周辺の溶岩の末端部で湧き出す湧水です。年間を通じて水温は摂氏15度前後とほぼ一定に保たれているため、夏は涼しく、冬は温かく感じられます。
三島市内には源兵衛川のほかにも桜川、蓮沼川、御殿川、四ノ宮川といった湧水河川が流れており、これらが街の随所で清らかな水音を響かせています。水源が街の中心部に集中しているため、三島は歩きながら水と出会える街として知られるようになりました。源兵衛川は1985年に当時の環境庁が選定した名水百選の基準を満たす清流として評価されており、国土交通省が選ぶ水の郷百選にも三島の水辺が含まれています。富士山や箱根山麓にしみ込んだ雨や雪が数十年かけて地中を流れ、市内のあちこちで湧水となって姿を現すことが、三島が水の都と呼ばれる理由です。三島の水は清冽でそのまま飲んでもおいしく、厚生労働省が定めるおいしい水の基準を十分に満たしているとされています。
小浜池の湧水は三島溶岩流という地質から生まれる
源兵衛川の水源である楽寿園の小浜池は、国の天然記念物および名勝に指定されている湧水池です。その成り立ちは約1万年前にさかのぼります。富士山が噴火した際に流れ出した三島溶岩流が、東富士演習場付近の大野原から楽寿園周辺まで達する大規模な溶岩流を形成し、その末端部にあたる小浜池からいまも湧水が湧き出し続けています。ボーリング調査によると、小浜池の池底には厚さ約31メートルの上部溶岩層があり、その下にローム混じりの礫層、厚さ約15メートルの中部溶岩層、さらに下部溶岩層が幾重にも積み重なっています。湧水量が多いときは、この溶岩層に生じた無数の裂け目のすべてが湧水口となります。
小浜池は池の中央付近を水位ゼロ(標高25.69メートル)と定めて毎日水位が計測されており、その年の降雪量や降水量によって水位が大きく変動します。近年は湧水量の減少傾向が続き、池が干上がる時期もある一方、雪解け水や降雨の影響で9年ぶりに満水となったと報じられた年もありました。小浜池の水位は、水の都・三島を象徴する自然のバロメーターとして地元紙でも度々取り上げられています。
源兵衛川は1992年に始まった市民の清掃活動で清流を取り戻した
源兵衛川は江戸時代から農業用水として利用されてきましたが、昭和の高度経済成長期に状況が一変しました。工場や家庭による地下水の過剰なくみ上げで湧水量が減少し、生活排水の流入やごみの投棄も重なったことで、川は次第に汚れ、悪臭を放つどぶ川のような状態まで荒廃してしまったのです。一時は水量そのものが枯渇し、川底が露出する時期もあったと伝えられています。
こうした状況を見かねた地域住民やNPO団体が、1992年頃から本格的な再生プロジェクトを始動させました。清掃活動やごみの回収、護岸の整備、生態系に配慮した環境づくりが地道に続けられた結果、源兵衛川は少しずつ清流としての姿を取り戻していきました。いまでは、きれいな水質でなければ生息できないゲンジボタルが飛び交うまでに回復しています。整備にあたっては、コンクリートで護岸を固めるのではなく、川の中に飛び石や木製の遊歩道を設置し、人が水と触れ合いながら歩ける空間として再構築されました。この選択によって、源兵衛川は用水路から、市民や観光客が水辺の自然を体感できるせせらぎウォーキングコースへと生まれ変わりました。
せせらぎウォーキングコースは川の中を歩く区間が見どころになる
源兵衛川のウォーキングコースの見どころは、川の中に設けられた飛び石や木道を歩きながら、せせらぎの音、水のひんやりとした感触、川面を渡る風を体で感じられることです。川を眺めるだけの遊歩道とは違い、源兵衛川では文字通り川の中を歩ける区間が随所にあります。夏場は水遊びをする親子連れの姿も多く見られ、涼を求めて訪れる人でにぎわいます。
ウォーキングは、楽寿園のすぐ南側にある「いずみ橋」を起点とするのが一般的です。いずみ橋周辺には川へ下りる階段があり、そこから水の上の散策路へとつながっていきます。楽寿園は三島駅から徒歩約1分というアクセスの良さを誇る市立公園で、園内の小浜池が源兵衛川の水源になっています。ウォーキングの前後に立ち寄って、富士山の伏流水が湧き出る様子を眺めるのもおすすめです。
いずみ橋から川に沿って歩くと、蓮馨寺をはじめとする歴史ある寺社が点在するエリアに差し掛かります。さらに進むと三石神社があり、境内近くには時の鐘が設置されています。三石神社は源兵衛川の中州のような立地にあり、水と緑に囲まれた静かな雰囲気が漂います。その先には雷井戸と呼ばれる湧水スポットや、水の苑緑地という水辺の憩いの空間が広がります。水の苑緑地は地元住民の散歩コースとしても親しまれており、ベンチが設置されているため休憩にも向いています。
コースの途中からは三嶋大社や佐野美術館といった三島観光の中心エリアにもアクセスしやすく、源兵衛川散策とあわせて立ち寄る観光客が多く見られます。下流に向かうと三島水辺の文学碑が点在するエリアがあり、地元ゆかりの文人の言葉や句碑を眺めながら歩けます。さらに進むと白滝公園に至ります。白滝公園も湧水を水源とする公園で、園内には滝や池が整備され、四季折々の自然を楽しめます。コースの終着点として知られているのが一本松で、ここはバス停としても利用されており、公共交通機関で三島駅に戻ることもできます。一本松周辺は開けた景観が広がり、川沿いの散策を締めくくるのにふさわしい場所です。
道のりの大部分が舗装された遊歩道や飛び石であるため、スニーカーなど歩きやすい靴があれば気軽に挑戦できます。ただし水の上を歩く区間は滑りやすい場合があるため、雨天時や増水時には注意してください。
三島梅花藻は5月から9月に白い花を咲かせる希少な水生植物
川沿いには豊かな植生が保たれており、ミシマバイカモ(三島梅花藻)を観察できるスポットもあります。三島梅花藻は水中に沈んだ糸状の細い葉と、梅の花に似た白い花をつける水生植物です。昭和5年(1930年)に楽寿園の小浜池で発見され、花の形にちなんで三島梅花藻と名付けられました。冷たくきれいな湧水と日当たりを好み、水の汚染に非常に敏感で、清冽な流水の中でしか生育できません。この性質から、多くの地域で絶滅危惧種にも指定されている希少な植物です。開花時期はおよそ5月から9月ごろまでと比較的長く、水温が年間を通じて安定している源兵衛川はこの梅花藻の生育に適した環境です。群生地として整備されている三島梅花藻の里では、間近でその可憐な姿を楽しめます。三島梅花藻の里へは三島田町駅から徒歩約10分でアクセスでき、源兵衛川の散策とあわせて回るコース設計もしやすくなっています。
三嶋大社は源兵衛川から徒歩圏内にある伊豆国一宮
三嶋大社は伊豆国一宮として知られる由緒ある神社で、JR三島駅から徒歩約10分、源兵衛川からも徒歩圏内にあります。奈良・平安時代の古書にもその名が記録されるほど歴史が古く、明治4年には官幣大社に列せられました。現在の本殿・幣殿・拝殿は慶応2年(1866年)に築かれたもので、国の重要文化財に指定されています。境内には天然記念物の金木犀をはじめ桜など900本以上の木々が茂り、宝物館の裏手にある神鹿園では、大正時代に奈良の春日大社から神様の使いとして譲り受けた鹿たちと触れ合えます。北条政子が奉納したと伝わる国宝「梅蒔絵手箱」など貴重な文化財も所蔵・展示されており、水辺散策とあわせて三島の歴史文化に触れられる立ち寄りスポットとして人気があります。源兵衛川沿いから三嶋大社へ向かう道の途中には三島水辺の文学碑があるため、文学好きの散策者にも見逃せないポイントです。
源兵衛川のホタルは5月上旬から6月上旬が見ごろになる
源兵衛川は、清流を好むゲンジボタルの生息地としても知られています。三島駅から徒歩5分という市街地の立地にもかかわらず、初夏の夜には幻想的なホタルの光を鑑賞できるのは、長年の再生活動の成果といえます。ホタルの見ごろはおおむね5月上旬から6月上旬にかけてで、日没から1時間ほど経過した頃から光り始め、19時30分前後が観賞のベストタイミングとされています。三島市および地元団体は毎年6月前半を中心に三島ホタルまつりなどのホタル関連イベントを開催しており、期間中は多くの見物客でにぎわいます。
ホタルは環境の変化に敏感な生き物です。観賞の際は懐中電灯の光を直接川面に向けない、川に立ち入らないなど、マナーを守ることが求められます。その年の気象条件によって見ごろの時期は前後するため、訪問前に最新の観測情報を確認しておくと安心です。
季節ごとに表情を変える源兵衛川の楽しみ方
源兵衛川のせせらぎウォーキングは、四季を通じて異なる表情を見せてくれます。春は川沿いの桜並木が見頃を迎え、水面に映る花びらとともに華やかな散策が楽しめます。特に楽寿園周辺から下流にかけては、桜のシーズンに多くの花見客でにぎわいます。夏は三島梅花藻の開花シーズンであり、清流に揺れる白い花を観察できる貴重な時期です。水温が年間を通じて安定しているため、真夏でも川の中は涼しく、子どもたちが水遊びを楽しむ姿も見られます。秋は川沿いの木々が色づき、紅葉と清流のコントラストを楽しめます。涼しく歩きやすい気候の中で、ゆったりと水辺を巡るのに適した季節です。冬は周辺の観光客が減り、静かな雰囲気の中で湧水の恵みをじっくり感じられます。水温がほぼ一定であるため、冬でも川からは湯気のような水蒸気が立ちのぼることがあり、幻想的な風景を見せてくれます。
| 季節 | 見どころ | 補足 |
|---|---|---|
| 春 | 桜並木と水面に映る花びら | 楽寿園周辺から下流にかけてにぎわう |
| 夏 | 三島梅花藻、ゲンジボタル | 梅花藻は5月〜9月ごろ、ホタルは5月上旬〜6月上旬 |
| 秋 | 紅葉と清流のコントラスト | 涼しく歩きやすい気候 |
| 冬 | 静かな水辺と立ちのぼる水蒸気 | 年間を通じ水温は約15度で安定 |
楽寿園の駐車場は2時間200円で利用できる
源兵衛川の起点である楽寿園およびいずみ橋へは、JR三島駅・伊豆箱根鉄道三島田町駅から徒歩約1分から10分程度でアクセスできます。新幹線停車駅である三島駅から至近距離にあるため、東京方面や名古屋・大阪方面からのアクセスも良好で、日帰り観光にも向いています。
車で訪れる場合は、東名高速道路の沼津インターチェンジから伊豆縦貫道を経由し、三島塚原インターチェンジで降りて国道1号線を三島市街方面へ向かうルートが一般的です。三島玉川交差点を右折して直進し、三島駅前交差点を左折、楽寿園駅前入園口を通り過ぎて清水銀行の角を左折すると、右手に楽寿園の専用駐車場があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 駐車料金 | 2時間まで200円、以降30分ごとに50円(現金のみ) |
| 開園時間(4月〜10月) | 9時00分〜17時00分 |
| 開園時間(11月〜3月) | 9時00分〜16時30分 |
| 団体用駐車場 | 楽寿園駅前入園口付近、6台、事前予約制・無料 |
| 車椅子専用駐車場 | 駅前口に設置 |
駐車料金の支払いは現金のみとなっている点に注意してください。大型・中型・マイクロバスで訪れる団体客は、事前予約制の駅前入園口駐車場を利用できます。車椅子専用駐車場も駅前口にあり、バリアフリーへの配慮がなされています。
三島駅・三嶋大社を結ぶ街中コースで宿場町の面影も楽しめる
三島市観光Webでは、源兵衛川を中心としたルートを三島の定番の街中せせらぎコースとして紹介しています。このコースは、JR三島駅、伊豆箱根鉄道三島田町駅、伊豆箱根鉄道三島広小路駅、そして三嶋大社を結ぶ三角形のエリアを中心に構成されており、せせらぎと昔ながらの街並みが共存する三島の中心市街地を巡るハイライトコースになっています。ルート上には旧東海道の面影を残す大通り商店街もあり、水の街としての表情だけでなく、宿場町として栄えた歴史ある街並みもあわせて楽しめます。
このエリアには飲食店やカフェも多く、散策の合間に立ち寄りやすいのも魅力です。三島駅のすぐ近くには、大きな窓からたっぷりと光が差し込むカフェがあり、散策で歩き疲れた際の休憩スポットとして利用されています。三島はうなぎ料理でも知られる街で、富士山の伏流水で育てられたうなぎを提供する老舗も点在するため、せせらぎ散策とあわせてご当地グルメを楽しむ観光客も多く見られます。朝の時間帯を活用した街中散策コースも三島市観光Webで紹介されており、人の少ない静かな時間帯に源兵衛川や楽寿園を巡るプランも人気を集めています。早朝ならではの澄んだ空気の中で聞くせせらぎの音は、日中とはまた違った趣があります。都内からも新幹線を利用すれば日帰りで訪れられる距離にあることから、週末のリフレッシュ旅行先として定番化しつつあります。
柿田川湧水公園までつなぐ港・湧水・せせらぎウォークで周遊できる
三島から少し足を延ばすと、日本有数の湧水量を誇る柿田川湧水公園がある清水町にもアクセスできます。柿田川は高知県の四万十川、岐阜県の長良川と並んで日本三大清流の一つに数えられる清流で、全長わずか1.2キロメートルという日本で最も短い一級河川でありながら、1日およそ120万トンにも及ぶ富士山からの湧き水を水源としています。この湧水は、富士山に降った雨や雪解け水が約26年から28年の歳月をかけて地下をゆっくり流れ、地上に姿を現したものといわれています。
柿田川公園内の第一・第二展望台からは、年中変わることなく水が湧き出し続けるわき間を見ることができます。通称「柿田川ブルーホール」と呼ばれる第二展望台からの眺めは、吸い込まれるような青色で知られています。湧水広場では実際に水へ足を浸し、その冷たさを直接体感することもできます。柿田川は国の天然記念物にも指定されている清流で、源兵衛川と同じく富士山の伏流水を水源としている点が共通しており、三島駅からは路線バスでアクセスできます。
三島市・沼津市・清水町の2市1町にまたがる形で整備されているのが港・湧水・せせらぎウォークで、沼津港と三島市の楽寿園を結び、源兵衛川や柿田川湧水公園の水辺を巡りながら狩野川の堤防沿いを通って沼津港へと至る、広域的なウォーキングコースになっています。三島市観光Webでは湧水をたどり柿田川へ向かう水の郷湧水コースというモデルコースも案内されており、三島の湧水めぐりと柿田川の湧水量を一日で体感できるプランとして人気を集めています。このコースを利用すれば、源兵衛川のせせらぎ散策だけでなく、柿田川の湧水や沼津港での海の幸まで、一日を通して水をテーマにした周遊観光を楽しめます。距離が長いため全区間を歩き通すのは健脚向けですが、区間ごとに区切って公共交通機関を利用しながら巡ることもできます。
源兵衛川散策で気をつけたい滑りやすい飛び石とマナー
源兵衛川のせせらぎウォーキングコースを快適に楽しむためには、いくつか気をつけたい点があります。川の中を歩く飛び石区間は水に濡れているため滑りやすく、スニーカーなど滑りにくい靴を選ぶことが望ましいです。サンダルやヒールでの散策は転倒の危険があるため避けたほうがよいでしょう。荷物が多い場合は、両手が空くリュックタイプのバッグのほうが歩きやすくなります。
季節によっては水量が増減するため、大雨の後や増水時には川の中の遊歩道が通行止めになる場合があります。事前に三島市観光Webなど公式の情報を確認してから出かけると安心です。源兵衛川は長年にわたり市民やNPO団体の清掃活動によって守られてきた清流です。ごみを持ち帰る、川に物を投げ入れない、植物や生き物を採取しないといった基本的なマナーを守ることが、この景観を未来へつなげるために欠かせません。ホタルや梅花藻といった繊細な生態系が息づいている場所であることを踏まえ、静かに、丁寧に自然と向き合う姿勢で散策を楽しんでください。
三島市を流れる源兵衛川は、富士山の伏流水を水源とし、市民の手によって清流としての姿を取り戻した、水の都・三島を象徴する川です。川の中に設けられた飛び石や木道を歩きながらせせらぎの音を聞く体験は、三島駅から徒歩数分という好アクセスも相まって、幅広い層の観光客に親しまれています。楽寿園のいずみ橋から三石神社、水の苑緑地、三島梅花藻の里、水辺の文学碑、白滝公園、一本松へと続くウォーキングコースは、四季それぞれに異なる表情を見せてくれます。さらに足を延ばせば、柿田川湧水公園や沼津港までをつなぐ港・湧水・せせらぎウォークを通じて、より広域的な水めぐりの旅も楽しめます。水と緑に癒やされるひとときを求めて、源兵衛川のせせらぎウォーキングコースを訪れてみてください。








