北海道東トレイルは、2024年10月に開通した全長約410キロメートルの国内最長級ロングトレイルで、初心者でも楽しめるウォーキングコースが充実しています。釧路湿原国立公園、阿寒摩周国立公園、知床国立公園という3つの国立公園を1本のルートで結ぶこのトレイルは、日本国内で初めての試みとして注目を集めました。初心者向けのコースとしては、高低差が少なく補給ポイントも多い摩周・屈斜路トレイルが特におすすめで、温泉宿に泊まりながら無理なく歩くことができます。
北海道の東部、通称「道東」エリアは、日本でも有数の大自然が広がる地域です。この道東エリアに2024年10月5日、待望の北海道東トレイルが正式に開通しました。南の起点は釧路市の幣舞橋公園にある松浦武四郎の像で、北の終点は羅臼町のしおかぜ公園にあるオホーツク老人像となっています。この記事では、初心者の方がロングトレイルを楽しむために知っておきたいコース選びのポイントや、必要な装備、安全対策について詳しく解説していきます。

北海道東トレイルとは何か
北海道東トレイル(略称:HET、Hokkaido East Trail)は、ひがし北海道を南北に縦断する壮大なロングトレイルです。このトレイルの最大の特徴は、3つの国立公園を1本のルートで結んでいることにあります。釧路湿原国立公園では日本最大の湿原を歩き、阿寒摩周国立公園では火山が作り出したダイナミックな地形を体感し、知床国立公園では世界自然遺産に登録された原生林の中を進みます。3つの国立公園を結ぶロングトレイルは国内初の試みであり、道東の多様な自然環境を一度に体験できる貴重なルートとなっています。
トレイル全体は、湿原、酪農地帯、カルデラ、畑作地帯、海、森林という6つの異なるエリアで構成されています。それぞれのエリアで全く異なる風景や文化に出会うことができるのが、このトレイルの大きな魅力です。
6つのエリアが織りなす多彩な風景
釧路湿原エリアの魅力
釧路湿原エリアでは、日本最大の湿原である釧路湿原を歩きます。達古武湖をぐるりと回り、釧路川沿いを進むルートでは、タンチョウやオジロワシなどの野鳥を観察することができます。細岡展望台からの眺望は、釧路湿原を一望できる絶景ポイントとして知られています。細岡展望台から達古武キャンプ場までは約11.2キロメートル、所要時間約3時間30分のショートトレイルとしても楽しめるため、初心者の方にも挑戦しやすいコースです。
酪農エリアと北海道らしい風景
酪農エリアでは、広大な牧草地と牛たちの放牧風景が広がります。北海道らしい牧歌的な風景の中を歩くこのエリアには、格子状に植えられた防風林があり、これは北海道遺産にも指定されています。独特の景観を作り出す防風林は、北海道開拓の歴史を今に伝える貴重な文化遺産でもあります。
カルデラエリアで火山の造形美を体感
カルデラエリアは、阿寒摩周国立公園の中心部にあたります。日本最大のカルデラである屈斜路カルデラや、日本一の透明度を誇る摩周湖、噴煙を上げる硫黄山(アトサヌプリ)など、火山が作り出したダイナミックな地形を体感できます。川湯温泉や養老牛温泉など、温泉地も点在しているため、歩いた後の疲れを癒すことができます。
畑作エリアと海エリアの広がり
畑作エリアでは、ジャガイモやビート、小麦などの畑が地平線まで続く風景を楽しめます。北海道ならではのスケール感を体感できるエリアです。海エリアでは、オホーツク海沿いを歩きます。太平洋からオホーツク海、根室海峡へと3つの海を辿る旅路の一部を担っており、対岸には国後島を望むことができます。
森林エリアで知床の大自然へ
森林エリアでは、知床国立公園に入り、原生林の中を歩きます。知床連山の雄大な姿を眺めながら、最終目的地である羅臼へと向かいます。知床峠を越える区間は、このトレイルのハイライトの一つです。
ロングトレイルの歩き方とセクションハイク
北海道東トレイルの全行程を歩き通す「スルーハイク」には、約3週間程度が必要です。開通記念として行われたスルーハイクでは、2人のハイカーが約350キロメートルを約20日間かけて歩き通しました。しかし、多くの人にとって3週間の休暇を取ることは現実的ではありません。
そこで、トレイルを区切って歩く「セクションハイク」という楽しみ方があります。自分の体力や日程に合わせて、好きな区間だけを歩くことができるのがセクションハイクの魅力です。JR釧網線を利用すれば、途中で電車に乗って移動することも可能なため、柔軟にスケジュールを組むことができます。
初心者におすすめの摩周・屈斜路トレイル
北海道東トレイルの中でも、初心者に特におすすめなのが「摩周・屈斜路トレイル」(略称:MKT)です。阿寒摩周国立公園内にある全長44キロメートルのトレイルで、北海道東トレイルの一部を構成しています。このトレイルは2つのセクションに分かれています。
セクション1:摩周湖から川湯温泉へ
セクション1は、摩周湖の展望台から始まり、噴煙を上げる硫黄山を通り、麓にある川湯温泉までの20.5キロメートルです。「摩周ブルー」と呼ばれる日本一の透明度をもつ摩周湖の絶景からスタートし、むき出しの火山岩と硫黄の噴煙が圧倒するアトサヌプリ(硫黄山)を経由して、情緒ある川湯温泉街で一日を終えることができます。
セクション2:川湯温泉から屈斜路湖畔へ
セクション2は、川湯温泉から始まる22.5キロメートルで、山手線がすっぽり入る広さの屈斜路湖に沿って歩きます。森の中、湖畔の砂浜、時々舗装路も歩く、平坦だけどバリエーションに富んだコースです。仁伏半島自然散策路(仁伏の森)は周回約1時間の森の散策コースとしても楽しめるため、さらに短い時間で楽しみたい方にも最適です。
摩周・屈斜路トレイルが初心者向けの理由
このトレイルが初心者におすすめの理由は、高低差が少なく歩きやすいこと、町や駅近くで補給ができること、温泉宿が点在していることにあります。温泉に入って疲れを癒しながら、無理なくトレイルを楽しむことができます。
釧路湿原ショートトレイルで日本最大の湿原を体験
釧路湿原エリアでは、細岡展望台から達古武キャンプ場までの約11.2キロメートル、所要時間約3時間30分のショートトレイルがあります。日本最大の湿原を手軽に楽しめるコースです。
このコースでは、達古武湖をぐるりと歩き、水鳥が多く生息する湿原の風景を楽しむことができます。釧路川が見える区間では、カヌーが下っていく様子や、オジロワシ、タンチョウなどの野鳥を観察できることもあります。細岡展望台からの眺めは、まさに釧路湿原そのものと言える絶景です。
知床五湖トレイルと高架木道コース
知床国立公園内にある知床五湖トレイルは、初心者でも安心して楽しめるコースです。特に高架木道コースは、地上から離れた木道に電線を張り巡らせてクマが登って来れないようにしているため、ヒグマとの遭遇を心配せずに歩くことができます。
高架木道は「一湖」を目指し、往復1.6キロメートル、所要時間約40分の道のりです。バリアフリーにもなっており、誰でも気軽に無料で楽しむことができます。湖に映る羅臼岳の鏡のような反射が最大の魅力で、約3キロメートルのコースは初心者から中級者向けで家族連れにも適しています。知床五湖の訪問の最適時期は4月中旬から10月下旬で、特に秋の鮮やかな紅葉が湖面に映る光景は見事です。
フレペの滝遊歩道で知床の自然に触れる
知床自然センターから歩いて片道約1キロメートルのフレペの滝遊歩道は、一年を通して無料で散策することができ、知床らしい四季折々の自然を楽しめます。このトレイルはわずか1キロメートルで難易度も低く、家族やカジュアルなハイカーに理想的です。整備された道により、技能レベルを問わず快適で楽しいハイクが保証されます。
「フレペの滝」は知床の自然の豊かさを手軽に楽しめるスポットで、小さなお子様からご年配の方までお楽しみいただける、お手軽な知床入門編のコースです。フレペの滝トレイルを訪れる最適な時期は6月から10月の夏から秋で、天候が快適で海岸線が最も鮮やかです。
雌阿寒岳登山で本格的な山岳体験
阿寒摩周国立公園内にある雌阿寒岳は、標高1,499メートルの活火山で、日本百名山にも選定されています。日本百名山で「北海道で最も短時間で登れる山」とされており、登山初心者にも挑戦しやすい山です。
3つの登山コース
雌阿寒温泉コース(野中温泉コース)は、3つの登山ルートの中で一番所要時間が短いコースです。登山口近くに開湯107年目を迎える野中温泉があることから「野中温泉コース」とも呼ばれています。アカエゾマツの森から始まり、その後ハイマツ帯となります。5合目を過ぎれば、オンネトー湖を一望でき、天気の良い日には遠くに大雪山を拝むこともできます。
オンネトーコースは、オンネトー野営場から始まり、針葉樹と落葉樹が混ざった森の中を進みます。5合目付近のハイマツ帯では景色が開け、背後にはオンネトー湖を望むことができます。6月から8月には、雌阿寒岳と阿寒富士の間にある鞍部に多くの高山植物の花が咲きます。7合目分岐から阿寒富士に進むルートがあり、分岐から阿寒富士の往復所要時間はおよそ1時間30分です。
阿寒湖畔コースは全長6.2キロメートル、高度差760メートル、平均勾配12パーセントで、アカエゾマツの森が広がる林道から傾斜の緩やかな道が続きます。1000メートル付近からはハイマツ帯に変わり、火口縁に沿いながらガレ場の尾根を歩けば阿寒湖と雄阿寒岳の素晴らしい景色を堪能できます。
人気の周回コースとして、雌阿寒温泉から頂上を経由しオンネトーへ下るルートがあります。おすすめ時期は6月中旬から10月中旬です。雌阿寒岳は活火山ですので、登山前に火山情報を確認することが重要です。
ロングトレイルの装備と軽量化のポイント
ロングトレイルは登山とは異なり、基本的な考え方は「歩く旅」や「アドベンチャー」と捉えるのが良いとされています。ハイキングコースだけでなく、一般道、牧場、ビーチを歩くこともあり、川を渡る場面も多々あります。ロングトレイルを日本語に訳すと「長距離自然歩道」で、日本各地には北海道から九州まで、数十キロメートルから長いものでは1000キロメートルにも及ぶロングトレイルが整備されています。「熊野古道」や「四国八十八ヶ所のお遍路道」も古くからある「ロングトレイル」です。
装備の軽量化が重要な理由
数ヶ月にも渡って歩き続けるロングトレイルの場合、数十グラムのちょっとした重さの差が、疲労に大きく影響します。「たった数十グラムの差だからいっか」という考えが命取りになることもあります。ただし、軽さだけを追求すればよいわけではありません。「軽いに越したことはないけど、耐久性が不十分だったり、著しく快適性を損なうモノはダメ」という視点も大切です。1グラムでも「軽く」する視点と、数ヶ月・数百キロメートル歩き続けるための「耐久性」と「快適性」の3つのバランスを取ることが重要です。
必要なウェア類
肌着としては、ウールパンツ2枚、ウールと保水しない繊維の靴下2足が基本です。行動着としては、ウールロングスリーブTシャツ、ショートパンツまたはロングパンツ、キャップが必要です。防寒着としては、ウィンドシェル、フリースパンツまたはダウンパンツ、ダウンパーカー、レインウェア、グローブを用意します。
シューズは、トレランシューズまたはハイキングシューズを選びます。シューズは軽い方が楽ですが、軽ければ良いわけではありません。不安な人や歩き始めて筋肉がまだついていない頃は、少し頑丈な靴を選んだ方がよいでしょう。ウール製のアイテムは汗の匂いの原因である細菌が繁殖しにくく、数日間着ていても快適性が持続するため、ロングトレイルには最適です。
バックパックとシェルターの選び方
バックパックを選ぶ際のポイントは「防水素材を使用していること」と「大きなメッシュポケットがあること」です。メッシュポケットは、雨や朝露で濡れたシェルターを無造作に入れることができて便利です。ファニーパック(ウエストポーチ)を採用することで、バックパックを降ろすことなく行動食や小物にアクセスが可能になります。容量38リットル程度のザックで1週間分の食料が収まる場合もありますが、フィッティングのコツを掴むことが大切です。
ヒグマ対策と安全管理の基本
北海道の山野はどこでもヒグマの生息域です。人身被害に遭わないために一番大事なことはヒグマに出会わないことです。
ヒグマの出没時期と危険な季節
ヒグマは4月から11月に出没します。年に2回危険な季節があり、4月から5月と9月から10月に被害の大半が発生しています。4月から5月は冬眠から明けて行動を開始する期間であり、9月から10月は冬眠に向けて食い溜めをするシーズンです。近年、市街地に出没するヒグマが増加しており、これまでヒグマを身近な存在として認識していなかった方々も、ヒグマについての正しい知識を持つことが必要となっています。
ヒグマに出会わないための対策
ヒグマの聴覚、嗅覚は非常に鋭敏です。熊鈴やホイッスル、声などであらかじめ、人間の存在を知らせることが有効です。ヒグマに出会わないよう熊よけのスズ等を携行する、ヒグマに出会った場合の熊スプレーを持参するなどの十分な自衛策が必要です。
特に注意すべきはイヤホンやヘッドフォンの使用です。音楽を聴きながらの登山は、クマの存在に気づけないだけでなく、自分の発する音でクマに存在を知らせることもできません。また、無言での行動、食べ物のにおいを漂わせること、夜間の行動、ヒグマの通り道を塞ぐことも危険です。
食料・ゴミの管理の重要性
ヒグマ対策において、食料とゴミの管理は極めて重要です。完全なゴミの持ち帰り(食べ残しやティッシュも含めすべて持ち帰る)、食料の密閉保管(臭い漏れ防止袋の使用を徹底)、調理場所と寝床の分離(キャンプ時は50メートル以上離す)、残飯の処理(指定された場所で適切に処理)が求められます。
一度ゴミを食べたヒグマは、人間の食べ物に執着し、市街地に出没したり、人間に付きまとうなどの行動をとる恐れがあります。山中などのヒグマの生息域に入られた際は、絶対にゴミを放置せず、必ず持ち帰るようにしてください。
熊撃退スプレーについて
熊撃退スプレーの主成分であるカプサイシンは、クマの粘膜を強く刺激し一時的に視覚と嗅覚を奪います。使用者も影響を受ける可能性があるため、風向きには特に注意が必要です。有効期限(通常2年から4年)を過ぎたスプレーは効果が低下するため定期的な交換が必要です。クマ撃退スプレーは最終手段です。距離が4メートル以内になり、さらに近づいてくるような場合はクマスプレーをクマの目と鼻に当たるように噴射します。噴射時は風向きに注意して自分に食らわないようにしましょう。
ヒグマに遭遇した場合の対処法
ヒグマと出合った場合に一番やってはいけないことは「走って逃げること」です。ヒグマの狩猟本能から走るものを追う習性があります。またヒグマが出没するエリアでトレイルランニングをすると、ヒグマが追いかけてくることがあります。クマから目を離さない、背を向けて逃げないということが重要です。ゆっくりと後ずさりしながら距離を取り、クマが立ち去るのを待つのが基本的な対処法です。
道東エリアへのアクセス方法
道東エリアには「釧路空港」「中標津空港」「女満別空港」「とかち帯広空港」の4つの空港があり、目的地に応じて利用する空港を選ぶ必要があります。
各空港へのフライト情報
女満別空港は道東エリアの空港の中では就航便数が多く、空港の到着ロビーにはレンタカー各社のカウンターがあるためスムーズに観光を始められます。羽田空港から女満別空港へは、JALが1日に3便、AIRDOとANAの共同運航が2便飛んでおり、所要時間は1時間55分です。羽田空港から中標津空港へは、ANAが1日に1便飛んでおり、所要時間は1時間40分です。中標津空港は知床(羅臼)や野付半島、根室なども観光したい場合に便利です。
各エリアへのアクセス
知床へは、女満別空港、釧路空港、JR釧路駅などから斜里バスや網走バスを利用してアクセスできます。摩周湖・屈斜路湖へは、女満別空港から車で1時間程度、釧路空港からレンタカーを利用する場合は1時間半程度で行くことができます。釧路駅からJR釧網線で摩周駅まで約90分、料金は1,890円です。摩周駅から摩周湖・屈斜路湖へは阿寒バスの定期路線バスが運行しています。
阿寒湖へは、「阿寒エアポートライナー」を利用すると、釧路空港を出発して阿寒湖バスセンターまで所要時間約1時間15分、料金は大人2,190円、子ども1,100円です。
トレイル沿いの交通
北海道東トレイルを歩く際は、JR釧網線を活用することで、セクションハイクがしやすくなります。釧路駅から網走駅を結ぶこの路線は、トレイルの複数のポイントにアクセスできます。ただし、細岡駅は冬季間(12月1日から4月24日頃まで)は電車が停車しないので注意が必要です。
宿泊施設とキャンプ場の選び方
北海道東トレイルのルート沿いには、様々な宿泊施設があります。弟子屈エリアでは、キャンプ場、コテージ、一棟貸しなどの施設が利用可能です。川湯温泉や養老牛温泉など、温泉宿も点在しているため、歩いた後の疲れを癒すことができます。
おすすめのキャンプ場
達古武キャンプ場は、釧路湿原エリアの拠点として便利な場所にあります。達古武湖畔に位置し、トレイルのスタート地点としても利用できます。シラルトロ湖畔キャンプ場は、釧路湿原国立公園内にあり、テント専用サイトにはキャンプ初心者用の区画サイトがあり、利用料金もリーズナブルです。
温泉施設で疲れを癒す
道東エリアには多くの温泉が点在しています。川湯温泉は、硫黄山の麓に位置する温泉街で、強酸性の温泉が特徴です。養老牛温泉は、「裏温泉」とも呼ばれていた秘湯で、野趣あふれる露天風呂が楽しめます。屈斜路湖周辺には無料の野湯がいくつかあり、トレイルを歩きながら立ち寄ることもできます。コタン温泉やイソの湯などが有名です。
ベストシーズンと季節ごとの注意事項
北海道東トレイルを歩くベストシーズンは、6月から10月です。特に7月から9月は天候が安定しており、歩きやすい時期です。ただし、国道334号線知床横断道路は冬季通行止めとなるため、知床峠を越える区間は限られた期間しか歩けません。その他の区間においても、通行止めや除雪が実施されない場所があります。
春の魅力と注意点
春(5月から6月)は、雪解けの季節で、残雪がある場所もあります。高山植物が咲き始める時期でもあり、雌阿寒岳では6月から8月に多くの花を見ることができます。
秋の紅葉とヒグマ注意
秋(9月から10月)は、紅葉が美しい季節です。ただし、ヒグマが冬眠に向けて活発に行動する時期でもあるため、十分な注意が必要です。
服装と装備の基本
北海道の天候は急変することがあるため、速乾性の衣服を用意し、重ね着で体温調節ができるようにしましょう。山岳部では平地より気温が低くなるため、防寒着も必携です。レインウェアは必ず持参してください。急な雨に備えて、防水性の高いものを選びましょう。
その他の重要な注意事項
北海道東トレイルでは、交通機関や売店が少ないエリアも多く、携帯電話が通じない場所もあります。事前に十分な食料と水を確保しておくことが重要です。野生動物との遭遇や天気の急変などのリスクへの備えとその対処、地域の人々への配慮などは必須です。また、ロングトレイルを歩くハイキングは、安全管理は自己責任が基本です。事前に情報を十分に収集し、しっかりと計画を立ててから歩きましょう。
初心者のためのコース選びとペース配分
初心者がロングトレイルに挑戦する際は、いくつかのポイントを参考にコースを選ぶことが大切です。高低差が少ないコースを選ぶこと、町や駅近くで補給ができるコースを選ぶこと、日帰りまたは1泊2日程度から始めること、温泉宿に泊まれるコースを選ぶと疲労回復に良いこと、アップダウンが少なく歩きやすいトレイルから始めることが挙げられます。初心者には特に摩周・屈斜路トレイルがおすすめです。高低差が少なく、補給ポイントも多いため安心して歩けます。
ペース配分の基本
「一日何キロ歩けば期間内に到着できるのか。サボりすぎず、頑張りすぎないスケジュールをなんとなく予想して歩きましょう」というのが基本的な考え方です。無理なく歩き続けることが、ロングトレイルを楽しむコツです。疲れたら休憩を取り、体調に合わせてペースを調整しましょう。
メンタル面の準備も重要
ロングトレイルにおいて、メンタルヘルスも重要な項目です。楽しく、モチベーションを保ちながら歩くことは何かと難しく、壁にぶち当たることもあります。他のハイカーと協力したり、好きな音楽を聴いたりして、メンタルを整えることが大切です。
ガイド付きツアーの活用
初心者の方には、ガイド付きツアーへの参加もおすすめです。知床エリアでは多くのトレッキングツアーが催行されており、自分で巡るだけでは見落としていた自然のことや動物のことなどを専門ガイドに教わることができます。散策前にレクチャーもあるので、初心者の方も安心してご参加いただけます。
野生動物観察の楽しみ方
北海道東トレイルでは、様々な野生動物を観察することができます。「北海道の鳥」に指定されているタンチョウは全長140センチメートル、体重10キログラム前後で、国内の野鳥では最も大型の鳥です。純白で美しい姿とともに北海道を代表する鳥として親しまれており、現在、国内希少野生動植物種や特別天然記念物として保護されています。世界の総個体数は約3,000羽とされ、種の半数以上が北海道東部を中心に生息しています。
タンチョウの観察スポット
鶴居村は「鶴が居るから鶴居村」という名の通り、タンチョウ観察の名所です。鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリは日本野鳥の会が運営する給餌場で、毎年11月から3月の給餌期間中、特に積雪期に多くのタンチョウが集まります。入館無料のネイチャーセンターでは暖かい館内から望遠鏡で観察でき、レンジャーによる解説も受けられます。
音羽橋は、タンチョウを脅かすことなくねぐらを見られる唯一の場所で、厳冬期の川霧に浮かぶタンチョウの姿は幻想的です。鶴見台は二大給餌場の一つとして知られ、毎年12月頃から3月頃まで多くのタンチョウが餌を求めにやってきます。
釧路市丹頂鶴自然公園は、1970年に世界で初めて日本産タンチョウの人工孵化に成功した施設で、年中いつでもタンチョウを観察できます。毎年4月から6月にかけてヒナが誕生し、子育ての様子も見られます。
その他の野生動物
北海道で観察できる野生動物は季節によって異なります。春から秋にかけてはヒグマ、シャチ、イルカ、クジラ、アザラシ、タンチョウなどが見られます。冬はタンチョウ、オオワシ、オジロワシ、オオハクチョウ、アザラシなどが観察できます。エゾシカ、キタキツネ、エゾナキウサギ、エゾリス、エゾフクロウ、シマフクロウなどは通年で見られる可能性があります。
2月から3月の羅臼では、バードウォッチングとセットになった流氷クルーズが実施されています。猛禽類であるオオワシやオジロワシがダイナミックに魚を獲る姿は圧巻です。釧路湿原の冬のカヌーツアーでは、タンチョウやオジロワシを見ながら美しい冬景色を楽しむことができます。
野生動物観察のマナー
給餌場やねぐらでは、決められた場所以外に立ち入らないようにしましょう。撮影のためにタンチョウを驚かせることは避け、フラッシュも使用しないでください。ゴミは必ず持ち帰りましょう。野生動物との適切な距離を保ち、自然環境を守りながら観察を楽しむことが大切です。
北海道東トレイルで体験する大自然の旅
北海道東トレイルは、2024年10月に開通した全長約410キロメートルの国内最長級ロングトレイルです。釧路湿原、阿寒摩周、知床という3つの国立公園を結び、湿原、酪農地帯、カルデラ、畑作地帯、海、森林という6つの多様なエリアを通過します。
初心者には、高低差が少なく補給ポイントも多い摩周・屈斜路トレイルがおすすめです。また、知床五湖の高架木道コースやフレペの滝遊歩道など、短時間で楽しめるコースも充実しています。
ロングトレイルを楽しむためには、適切な装備と十分な準備が必要です。特に北海道ではヒグマへの対策が重要で、熊鈴や熊スプレーの携行、食料・ゴミの適切な管理が求められます。
道東エリアへのアクセスは、女満別空港、釧路空港、中標津空港などを利用し、レンタカーやバス、JR釧網線を組み合わせて移動します。ルート沿いには温泉宿やキャンプ場も点在しており、疲れを癒しながらトレイルを楽しむことができます。
ベストシーズンは6月から10月で、特に7月から9月は天候が安定しています。ただし、野生動物との遭遇や天候の急変などのリスクに備え、事前に十分な情報収集と計画立案を行うことが大切です。
北海道東トレイルは、日本の大自然を体感できる貴重なロングトレイルです。初心者から経験者まで、それぞれのペースで楽しめるよう設計されています。ぜひ、自分のレベルに合ったコースから挑戦してみてください。









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