尾道は広島県南東部に位置する瀬戸内海に面した美しい港町で、日本遺産にも認定されている魅力的な観光地です。人口約13万人の比較的小さな都市ながら、「坂の町」「猫の町」として多くの観光客を魅了し続けています。起伏に富んだ地形が生み出す坂道や入り組んだ細い路地、そして路地を歩く猫たちの姿は、訪れる人々に特別な体験を提供してくれます。江戸時代には瀬戸内海航行の要所として栄え、明治期のJR山陽本線開通により現在のような坂道の街並みが形成されました。文学と芸術の拠点としても知られ、林芙美子の「放浪記」をはじめ多くの作品の舞台となっています。足の向くまま坂道を歩き、気の向くまま細い路地を曲がることで、思いがけない景色や猫との出会いが待っているのが尾道散策の醍醐味です。

尾道のウォーキングコースはどのようなルートがおすすめですか?
尾道でのウォーキングは、坂道の美しい景観と猫との出会いを楽しめる複数のコースが用意されています。最も人気が高いのは猫好きのための1日ソロ旅ガイドコースです。
このコースは10:00にJR尾道駅からスタートし、まず尾道本通り商店街をのんびり歩きます。全長約1.2kmの日本有数の長さを誇るこの商店街は、創業100年を超える老舗から新店舗まで個性豊かな店舗が立ち並んでいます。10:30にはねこノテパン工場で猫の焼き印が入ったもちもちパンの朝食を楽しんだ後、いよいよ猫の細道へ入ります。
12:00頃には天寧寺・三重塔を訪れ、千光寺山の中腹にそびえる重厚な三重塔から尾道水道を望む絶景を堪能できます。その後は福石猫探索を楽しみながら、13:00に茶房こもんで猫のマグカップでの紅茶タイムを過ごします。大林宣彦監督の映画「転校生」のロケ地でもあるこの店では、外はサクサク、中はふわふわの「パーフェクトスイーツ」と評されるワッフルが味わえます。
14:00からは千光寺参拝で縁結びのご利益を求め、千光寺公園の新展望台「PEAK」では尾道市内や瀬戸内海の島々、天気が良ければ四国連山まで見渡せる絶景スポットで”にゃんこビュー”を満喫します。2022年にリニューアルオープンしたこの展望台は恋人の聖地でもあり、仲良く寄り添う猫のモニュメントが可愛らしいフォトスポットとなっています。
もう一つおすすめなのが、尾道観光協会推奨の「尾道にかくれる猫を探して歩く散歩道」コースです。約3時間で完歩できるこのコースは、JR尾道駅南側からスタートし、山手地区の迷路のような坂道と階段を楽しみながら、千光寺新道のうろこ状に舗装された道や石垣に隠れた福石猫を探します。今川玉香園茶舗では創業100年を超える老舗のかわいい猫ラベルの尾道紅茶、向酒店では園山春二先生手描きの招き猫ラベルのお酒に出会えます。おのみち海辺の美術館では絵の中に隠れている猫を探す楽しみもあります。
文学のこみちも見逃せないスポットです。千光寺公園の山頂から千光寺へと続く約1kmの山道には、志賀直哉、林芙美子、正岡子規など尾道ゆかりの文人の作品を刻んだ25基の句碑が点在し、約30分で文学と尾道の情景を感じながら散策できます。
尾道の坂道を歩く際の注意点や準備すべきことは何ですか?
尾道は「坂の町」と呼ばれるほど坂道や階段が多いため、快適な散策のためには事前の準備と心構えが重要です。
最も重要なのは靴選びです。古寺巡りや山側の散策を計画している場合は、靴底がフラットで柔らかいスニーカーなど、履きなれた靴を選ぶことが絶対に必要です。ヒール靴は足を痛める原因となり、尾道散策を台無しにしてしまう可能性があります。坂道の勾配は想像以上に急で、石畳や階段も多いため、グリップ力のある歩きやすい靴が安全面でも重要です。
服装面では動きやすさを重視しましょう。坂道での上り下りは思った以上に体力を消耗するため、楽に動ける格好を選ぶことが大切です。特に夏場は汗をかきやすいので、通気性の良い服装がおすすめです。
日差し対策も忘れてはいけません。日差しの強い日は帽子を着用することを強く推奨します。ただし、道が狭い小道では日傘はすれ違いの際に邪魔になる可能性があるため、帽子の方が実用的です。また、自動販売機もありますが、特に夏場は飲料水を携帯することで熱中症予防にもなります。
ベビーカーを利用する場合は特に注意が必要です。段差が非常に多いため、すぐに折りたためる軽量なベビーカーか、むしろ抱っこ紐の使用が推奨されます。石段や狭い路地では、ベビーカーでの移動が困難になる場面が多々あります。
散策のコツとして、メインストリートから伸びる細い道や路地を積極的に探索することをおすすめします。人一人通るのがやっとの道や、どこに続くか分からない道がたくさんあり、これらの道を覗きながら歩くことで「こんなところに隠れ家のようなお店が」「あんなところに気になるミニスポットが」といった本当の尾道らしさを発見できます。
時間配分も重要な要素です。坂道での移動は平地よりも時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。急ぎ足で歩くよりも、ゆっくりと景色や建物を楽しみながら歩くことで、尾道の魅力を十分に味わえます。また、早朝や夕方は比較的涼しく、猫にも出会いやすい時間帯なので、この時間帯を狙って散策するのも良い戦略です。
猫の細道とは何ですか?どんな魅力がありますか?
「猫の細道」は、尾道が「猫の町」として注目される最大の理由となっている特別なスポットです。尾道で最も古いとされる艮(うしとら)神社の左脇から天寧寺三重塔にかけて続く、約200メートルほどの細い路地を指します。まるで艮神社のクスノキに守られているかのようにひっそりと続くこの小道は、ジブリ映画に出てきそうなノスタルジックな雰囲気が特徴的で、歩くだけで非日常的な体験ができます。
この細道の誕生には、空間プロジェクト「尾道イーハトーヴ」の主催者である芸術家園山春二氏が深く関わっています。園山氏は作家・宮沢賢治と縁があり、宮沢賢治が掲げた理想郷「イーハトーヴ」を尾道に創ることを決めました。そして、岩手にゆかりのある「奥の細道」をもじって、この場所を「猫の細道」と名付けたのです。
最大の魅力は「福石猫」と呼ばれる可愛らしい猫の顔をした石のモニュメントです。園山春二氏の作品である福石猫は、当初888匹が尾道の町に放たれましたが、現在では1000匹以上が尾道各地に住み着いていると言われています。これらは石を彫って作られており、一つ一つ表情が豊かで、どこかユニークで優しい雰囲気を持ち合わせています。中には恋愛成就、健康回復などのご利益を持つとされる猫も存在し、CMに出演したり、旅に出てしまったりするユニークな猫もいるそうです。
「尾道イーハトーヴ」の活動は、ほぼ廃屋になった古民家を「創造と再誕」のコンセプトで改修することにこだわっています。園山氏は廃屋を「宝の山」と見なし、すべてを片付けることだけが復興ではないというメッセージを込めています。改修されたカフェ、バー、小物ショップ、美術館、庭園などが「猫の細道」沿いに建ち並び、猫の通り道ともなっています。
2020年には新たな名所「猫涅像(にゃはんぞう)」と「NYAHANの庭」が誕生しました。「猫涅像」は「涅槃」に由来しますが、死のイメージではなく、お昼寝をしている黒猫の姿をしています。新型コロナウイルスが流行する中でも、猫が寝ているようにおだやかな気持ちを忘れないように過ごしてほしいという願いが込められています。これらの作品は西日本豪雨災害で発生した瓦礫を再活用して制作されており、環境への配慮も示されています。
アート作品としての魅力も見逃せません。階段のひび割れを猫の姿に見立てた絵は、訪れる人々に足元に注意して歩くよう促す心遣いでもあり、ジブリ作品に出てくる「まっくろくろすけ」や「こだま」のようなキャラクターを見つけるようなワクワク感も味わえます。
尾道で実際に猫に出会うためのコツや時間帯はありますか?
尾道は漁港があり、坂道や小さな路地が多いことから、昔から猫が多く生息している「猫の町」として知られていますが、実際に猫に出会うためにはいくつかのコツがあります。
最も重要なのは時間帯の選択です。「猫の細道」が人気観光スポットになったことで、多くの人が猫に会うために訪れるようになったため、猫は人混みを避けて行動するようになりました。そのため、猫に出会いやすいのは早朝や夕方の時間帯です。特に、午前中から昼過ぎは日向ぼっこをしている猫が多く見られ、夕方前は猫が活動的になる時間帯とされています。観光客が少ない平日の早い時間帯は、さらに遭遇の可能性が高まります。
猫との出会いに対する心構えも大切です。尾道では「猫は”見つけにいく”のではなく、”出会ってしまう”もの」という感覚がよく理解できます。必死に探すのではなく、散策を楽しみながら自然な出会いを待つことが重要です。運が良ければ、初めて会ったにもかかわらず、お腹を見せて甘えてくる人懐っこい猫に出会えることもあります。
福石猫との関係性も興味深い点です。福石猫に願いをかけると「猫運」が上がるという経験談もあり、実際の猫との出会いにつながることがあるようです。猫好き同士の「いました?」といった会話が自然と生まれる心地よい交流も、尾道ならではの体験です。
猫の保護活動の影響も理解しておく必要があります。近年、野良猫を捕獲して保護施設に収容するケースが増えており、尾道市でも同様の活動が行われているため、猫の数が以前より減少しています。NPO法人西日本アニマルアシストが尾道市の動物問題に取り組んでおり、正しい地域猫活動を推進しています。また、尾道市は「しあわせにゃんこライフのために」と題し、飼い主のいない猫の不妊去勢手術費補助事業を推進しており、猫にとっても人にとってもウェルビーイングなまちづくりを進めています。
猫に出会えるスポットとしては、猫の細道以外にも宝土寺、福直フルーツ周辺、八坂神社などが知られています。特に宝土寺には猫が住み着いているため、森を歩くねこでテイクアウトしたお菓子を味わいながら猫の訪れを待つのもおすすめです。
猫に出会えなかった場合の楽しみ方も用意されています。ジブリ作品を思わせるノスタルジックな風景や瀬戸内海の美しい景色は歩くだけで楽しめますし、多くの写真映えするスポットで尾道ならではの風景を写真に収めることができます。観光地の喧騒とは無縁の静かで穏やかな時間が流れており、ゆったりとした気持ちで散策を楽しむことも十分に価値のある体験です。
尾道の坂道や猫スポット周辺で楽しめるグルメや観光施設は何ですか?
尾道の坂道や猫スポット周辺には、散策の疲れを癒す魅力的なグルメスポットや観光施設が数多く点在しています。
猫関連カフェ・グルメスポットでは、まずねこノテパン工場が外せません。猫の焼き印が入ったもちもちパンが人気で、朝食や軽食に最適です。茶房こもんでは猫のマグカップで紅茶やワッフルをいただけます。外はサクサク、中はふわふわのワッフルは「パーフェクトスイーツ」と評され、大林宣彦監督の映画「転校生」のロケ地でもあります。
ショコラティエ ブーケダルブルは猫の細道のハーブ園内にあり、猫をモチーフにしたフロランタンとのセット「猫にゃんタンセット」がイチオシです。オープンテラスからは尾道水道を眺めることができ、猫が出没することもある隠れ家的カフェです。森を歩くねこは宝土寺境内に建つ、猫をモチーフにした焼き菓子とカフェのお店で、おからを使った焼き菓子やSNS映えするパフェやかき氷を楽しめます。
ねこ喫茶 ユトレヒトは千光寺山ロープウェイ沿いにあり、赤ちゃんの時に保護された人懐っこい猫たちとまったりした時間を過ごせます。AirShipCoffeeには看板猫「ほたて」がおり、珈琲と共に贅沢な時間を楽しめます。
尾道ラーメンも見逃せないグルメです。つたふじは魂にしみる味と評価される人気店で、朱華園はお昼時には地元の人と観光客で大行列ができる有名店です。店員の愛想が良く、カウンター席も多いため女性一人でも入りやすい雰囲気です。ただし、尾道ラーメン店は閉店時間が比較的早く、スープがなくなり次第終了する場合もあるため、早めの訪問が推奨されます。
スイーツ・お土産スポットでは、おやつとやまねこの牛乳瓶入り尾道プリンが一番人気です。レモンシロップの入った魚の醤油さしが付いており、甘くて滑らかなプリンに爽やかな酸味を加える新感覚の味わいです。からさわの手作りたまごアイスは懐かしい優しい味わいで人気です。
観光・文化施設も充実しています。招き猫美術館in尾道は大正時代の民家を改造した私設美術館で、1階には招き猫神社、2階には全国から集められた約3,000体の招き猫コレクションが所狭しと並べられています。千光寺山ロープウェイでは3分間の空中散歩で尾道の町並みや瀬戸内海の大パノラマを眺めることができ、山頂には彫刻家・西岡良和氏が寄贈した「恋会門(こいえもん)駅長」という猫の像があります。
特産品・お土産店では、今川玉香園茶舗で創業100年を超える老舗のかわいい猫ラベルの尾道紅茶、向酒店で園山春二先生手描きの招き猫ラベルのお酒が購入できます。ええもん屋では地元の特産品や猫のキーホルダー、マスコット、特産の柑橘を使ったはっさくジュースなどが豊富に取り揃えられています。
体験型施設として、おのみち小物 招き猫工房では招き猫の絵付け体験が楽しめ、体験料3300円で作った招き猫は当日持ち帰ることができます。小田印房では当店オリジナル商品「尾道ネコはんこ」が人気で、当日30分程度で受け取れるサービスも提供されています。
これらのスポットを巡ることで、尾道の坂道散策と猫との出会いをより豊かな体験にすることができます。









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