福島県郡山市には、市民が「ここが気持ちいい」と推薦した道を市が認定するウォーキングコース制度があります。その名は「遊・悠・友と歩こう元気路」で、数ある認定コースの中心的存在が、市街地に広がる開成山公園を舞台にしたコースです。距離わずか2.3kmの周回路に、桜や湖、神社、スポーツ施設まで詰め込まれているのがこのコースの特徴で、郡山市民の日常の散歩道であると同時に、旅行者が街の歴史に触れられる入り口にもなっています。ここでは、元気路という制度がどう生まれたのか、舞台となる開成山公園がどんな歴史を背負っているのか、そして実際に歩くコースの中身まで、順を追って見ていきます。

元気路は市民が推薦した道を郡山市が審査して認定した制度
「遊・悠・友と歩こう元気路」は、郡山市が市民から公募した「わたしのお勧めウォーキングコース」の中から、審査を経て認定したコース群です。行政が上から「ここを歩け」と決めるのではなく、実際にその道を毎日のように歩いている住民が「続けやすい」「気持ちがいい」と感じた道を推薦し、市がそれにお墨付きを与えるという順番になっています。結果として認定コースは、観光名所としての見栄えだけでなく、生活道路としての歩きやすさも兼ね備えたものになりました。
この制度の背景には、運動不足に由来する肥満や高血圧、糖尿病といった生活習慣病への対策という狙いがあります。特別な器具もジムも要らない「歩く」という行為を、日々の暮らしに無理なく組み込んでもらうための舞台として、市内各所の道が発掘され、コースとして磨き上げられてきました。認定コースの数は35コースとされ、市の案内によっては41コースと紹介されることもあります。市街地の歴史的な街並みを巡るコース、渓谷のせせらぎを楽しむコース、山道を歩くコースまで性格はさまざまで、郡山市の公式サイトには全体マップやウォーミングアップの方法も公開されています。
開成山公園コースが元気路の顔になったのは30ヘクタールの複合公園だから
数あるコースの中でも、開成山公園を巡るコースは特に象徴的な位置づけにあります。開成山公園は郡山市のほぼ中心部にあり、総敷地面積はおよそ30ヘクタールと市内最大の公園です。園内には野球場、陸上競技場、バラ園、神社、湖までが一つの敷地に収まっていて、スポーツ、観光、歴史、信仰という異なる機能が重なり合う場所になっています。緑地というより、街の機能が凝縮された一角と言ったほうが近いかもしれません。
この公園を歩いていると、郡山という街そのものの歴史をなぞっていることに気づかされます。公園の原型になったのは、江戸時代初期に造られた現在の五十鈴湖と、明治初期に完成した開成沼です。1873年、郡山の地元商人たちが出資して設立した民間団体「開成社」が、開成山一帯に広がっていた沼沢地を開墾し、桑野村という新しい村を切り拓きました。これが郡山の発展史で語られる「安積開拓」の出発点です。
五十鈴湖と開成沼は安積疏水の灌漑用に整備された池が正体
民間主導の開拓を受けて、国は国営事業として安積開拓と、灌漑用水路である安積疏水の建設を決めました。かんがい用の池として整備されたのが五十鈴湖(かつては「上の池」と呼ばれていました)と開成沼で、これらが現在の開成山公園の水辺の骨格になっています。荒れ地だった安積の地に水を引き、農地として蘇らせようとした国家プロジェクトの記憶が、公園の池や地形の中に今も残っているわけです。
安積開拓の父・中條政恒は大久保利通に直談判して疏水を実現させた
開成山公園の歴史をさらに掘り下げると、一人の武士に行き着きます。中條政恒です。1841年に生まれ、幕末には米沢藩士として仕えた人物で、明治維新後の1872年9月、福島県権令の安場保和から典事に任命され、明治政府が掲げた士族授産・殖産興業政策を福島県内で進める役目を担いました。中條はその舞台として、当時は見渡す限りの原野だった郡山の大槻原、現在の開成山周辺に目をつけ、開拓計画を練り上げていきます。
開拓には莫大な資金と人手が必要でした。中條の構想に動かされたのが、阿部茂兵衛をはじめとする地元の富商25人です。彼らは1873年、私財を投じて「開成社」という民間の開拓組織を結成し、県と開成社が力を合わせるかたちで安積開拓が本格的に始まりました。何もない荒れ地に鍬を入れ、桑野村という村を切り拓いていったこの民間主導のプロジェクトが、現在の開成山公園、そして郡山市という都市そのものの原点になっています。
ただ、開拓地に生きる人々を支えるには水が決定的に足りませんでした。この課題を打開するため、中條政恒は1875年、当時の内務卿・大久保利通のもとを直接訪れ、士族授産事業を国として積極的に進めてほしいこと、猪苗代湖の水を郡山地域まで引いてほしいことを直訴します。一地方の課題を中央政府の要人に直談判するという行動力には驚かされます。大久保はこの訴えを受け止め、その遺志は後に伊藤博文ら後継の内務卿にも引き継がれました。政府はオランダ人技師ファン・ドールンを現地に派遣して調査させ、その結果をもとに猪苗代湖から水を引く安積疏水の開削を正式に決めます。
安積疏水は1879年、国が直轄で手がける農業水利事業の第一号地区として着工されました。延べ85万人ともいわれる人々の労力が投じられ、わずか3年で130kmにも及ぶ水路が完成しています。この疏水によって猪苗代湖の水が安積の荒野に届き、耕作が難しかった土地は次第に田畑へと変わっていきました。公園を歩きながら目にする穏やかな水面は、幾多の人々の労働と、一人の武士の執念にも似た行動力によって、この地にもたらされたものなのです。中條政恒は後年「安積開拓の父」と呼ばれるようになりました。
開成山公園の染井吉野は1878年植樹で日本最古と2016年に判明した
開成山公園を語るうえで欠かせないのが桜です。1878年、開拓を進めた開成社によって約4000本の桜、ソメイヨシノやヤマザクラがこの地に植えられました。長年、日本最古のソメイヨシノといえば青森県弘前市の弘前公園にあるとされてきましたが、平成28年度に実施された樹齢調査で、開成山公園の染井吉野が1878年に植樹されたものであることが確認されました。これにより、1882年植樹とされていた弘前公園の木よりも古い、現存する日本最古の染井吉野として、樹木医学会の学会誌にも認められるに至っています。
現在、開成山公園には約1300本もの桜が咲き、開花期には園内に露店が並び、夜間にはライトアップも行われるため、昼夜を問わず花見を楽しめる場所として市民に親しまれてきました。開成山公園と園内の五十鈴湖、そしてこの染井吉野を含む約1300本の桜は、2016年度に文化庁の「日本遺産」の構成文化財として認定されています。加えて、開成山公園は「日本の歴史公園100選」にも選ばれており、地方都市の公園という枠を超えた歴史的価値を持つ緑地になっています。
開拓者の群像は中條政恒・大久保利通・ファン=ドールンの三人を刻んだ像
外周コースを歩いていると、必ずといっていいほど目に留まるのが「開拓者の群像」と呼ばれるモニュメントです。1992年、ふるさと創生事業の一環として建立されたこの像は、郡山市名誉市民でもある彫刻家・三坂耿一郎氏の手によるもので、高さ17.6メートルの塔になっています。塔のてっぺんには郡山市の市鳥であるカッコウがあしらわれ、その下には安積開拓を象徴する三人の人物像が並んでいます。
向かって左から、県の典事として開拓を主導した中條政恒、政府の内務卿としてこの事業を後押しした大久保利通、そして疏水建設のための現地調査を担ったオランダ人技師ファン・ドールンの三人です。これまで述べてきた安積開拓と安積疏水の物語に登場する立役者たちが、そのままモニュメントとして公園に立っていることになります。台座部分の石には、まだ何もない原野にいたであろうクマやサル、シカ、ウサギといった動物たちのレリーフが彫り込まれ、クマとサルの口からは実際に水が流れ出る仕掛けになっています。前方には安積疏水を思わせる水路も設けられ、水の流れそのものがモニュメントの一部として組み込まれています。この像の前を通り過ぎるとき、この土地がどのようにして荒れ地から緑豊かな公園へと変わったのかという物語を、否応なく思い出させられます。
開成山大神宮とバラ園が公園に信仰と季節の彩りを添える
公園の中には、開成山大神宮という神社も鎮座しています。これは明治9年、安積開拓に人生を懸けた入植者や関係者たちの心の拠り所として、伊勢神宮の御分霊が奉遷されて創建されたもので、「東北のお伊勢さま」という愛称で長く親しまれてきました。開拓という厳しい事業に挑んだ人々が心の支えとしてこの神社を必要としたであろうことを想像すると、歩きながら立ち寄る価値のある場所だと感じられます。
公園内にはバラ園も整備されています。このバラ園は昭和47年に開園した歴史あるもので、面積約3000平方メートルの園内には約400種、約800本ものバラが植えられています。見頃は春の5月中旬から6月末頃と、秋の9月中旬から10月末頃の年2回で、桜の季節とはまた違った華やかさで訪れる人の目を楽しませています。歴史、信仰、花と、開成山公園はウォーキングの合間に立ち寄れる見どころが多い公園だと言えます。
開成山公園外周コースは距離2.3kmで桜と湖とバラ園を一周する
郡山市の元気路として認定されている開成山公園を巡るコースには、公園をぐるりと一周する「開成山公園外周コース」と、より広範囲を歩く「開成山から行く公園めぐりコース」の2つがあります。まずは手軽に楽しめる外周コースから見ていきます。
このコースは公園の外周をぐるりと一周するかたちで設定されており、距離はおよそ2.3kmです。園内には郡山総合運動場の陸上トラックのほか、全長約2000mのトリムコースも整備されていて、ランナーやウォーカーが日常的に利用しています。外周をひと回りするだけで、桜並木、五十鈴湖の水辺、大神宮の杜、バラ園の彩りといった公園の魅力をひととおり体感できる構成になっており、景色の変化が多いぶん同じ距離を歩いていても単調に感じにくいのが特長です。
一方の「開成山から行く公園めぐりコース」は約11.8kmと本格的な距離で、開成山公園を起点・経由地としながら市内の別の公園や緑地までを巡る、歩きごたえのあるコースとして案内されています。開成のせせらぎこみちの穏やかな水音と、南川渓谷の静けさという対照的な二つの環境を一度に楽しめる構成になっていて、安積開拓の歴史的背景を体感しながら歩ける点も特徴です。2つのコースの違いを整理すると、次のようになります。
| コース名 | 距離の目安 | 主な見どころ |
|---|---|---|
| 開成山公園外周コース | 約2.3km | 桜並木、五十鈴湖、開成山大神宮、バラ園、開拓者の群像 |
| 開成山から行く公園めぐりコース | 約11.8km | 開成のせせらぎこみち、南川渓谷、安積開拓の歴史的背景 |
じっくり時間をかけて郡山の自然と歴史を味わいたい人には、ロングコースのほうが向いています。逆に、旅の合間や仕事の隙間時間に立ち寄りたいなら、外周コースで十分に公園の魅力を味わえます。
開成山公園へのアクセスはJR郡山駅から徒歩10分、駐車場は2時間無料
開成山公園は郡山市の中心部にあるため、アクセスの良さも大きな魅力です。JR郡山駅からは徒歩や車でおよそ10分、東北自動車道の郡山中央スマートICや郡山ICからはいずれも車でおよそ15分の距離にあります。公共交通機関を利用する場合は、郡山駅からバスでおよそ15分、「郡山市役所」バス停で下車して徒歩で向かうことも可能です。
駐車場は複数用意されていて、公園西側駐車場のほか、総合体育館側駐車場、開成山公園体育施設側駐車場、郡山市役所駐車場などを利用できます。料金体系は、入庫から2時間までは無料、それ以降は30分ごとに普通車と自動二輪車が100円、1日あたりの最大料金は普通車1000円に設定されているとされています。短時間の散策から長時間のイベント利用まで対応できる設計になっていて、車でふらっと立ち寄って外周コースを一周する、という気軽な使い方がしやすい環境が整っています。
開成山公園東側にはヨーク開成山スタジアムなどスポーツ施設が集まる
開成山公園は、桜やバラを愛でるだけの公園ではありません。東側エリアには本格的なスポーツ施設が集積していて、地域スポーツの拠点としての顔も持っています。代表的な施設が「ヨーク開成山スタジアム」、通称開成山野球場です。半世紀以上の歴史を持つこの野球場は、左翼100.7m、中堅122m、右翼101mというゆとりのある広さで、プロ野球の公式戦が開催されることもある本格球場として知られています。
そのすぐそばには「郡山ヒロセ開成山陸上競技場」があり、陸上競技の各種大会や市民ランナーの練習の場として利用されています。さらに「郡山しんきん開成山プール」も整備されていて、50mプールを10レーン、25mプールを8レーンという設備を備えています。一般利用のほか団体での貸し切り利用にも対応していて、水泳の大会や合宿にも活用されています。市はこれらの施設を「開成山地区体育施設整備事業」として位置づけ、継続的な整備と更新を進めています。
外周コースを歩いていると、こうした本格的なスポーツ施設群が視界に入ってきます。ゆったりと歩く人のすぐそばで、真剣にトレーニングをするランナーや選手たちの姿がある、健康づくりのグラデーションが一つの公園の中に同居している点も、開成山公園ならではの面白さです。
ロングコースの見どころは開成のせせらぎこみちと南川渓谷の静けさ
「開成山から行く公園めぐりコース」には、開成山公園の華やかさとはまた違った、静かな区間が含まれています。それが「開成のせせらぎこみち」です。このこみちは、住宅街の中を縫うように流れる小川沿いに整備された散策路で、四季折々の花々と、季節によって表情を変える水の流れを楽しみながら歩けるのが特徴とされています。道の途中には小さな水車小屋も設けられていて、絶えず聞こえる水音とあいまって、心を落ち着かせる雰囲気を醸し出しています。
このせせらぎこみちを抜けた先で出会うのが、南川渓谷の静けさです。せせらぎこみちの穏やかな水音と、南川渓谷の凛とした静けさという性格の異なる二つの水辺環境を一つのコースの中で味わえる構成になっていて、道中では鳥のさえずりが絶え間なく耳に届きます。約2.3kmの外周コースで公園の華やかさを味わったあと、体力と時間に余裕があるなら、このロングコースにも足を延ばし、安積開拓の歴史が息づく水と緑の道を辿ってみるのもよいでしょう。
元気路を歩く前の注意点は靴選びと季節ごとの服装調整
元気路を実際に歩くにあたっては、いくつか押さえておきたい実践的なポイントがあります。まず服装ですが、開成山公園の外周コースはアスファルトや舗装された園路が中心のため、特別な登山装備は不要です。ただし、履き慣れたウォーキングシューズやスニーカーを選ぶことは大切で、かかとが安定してクッション性のある靴であれば、2.3km程度の距離でも足への負担を抑えながら歩き通せます。
季節による服装の工夫も欠かせません。桜が咲く4月上旬前後は朝晩の冷え込みが残ることが多く、羽織れる上着を一枚用意しておくと安心です。バラが見頃を迎える初夏や初秋は比較的過ごしやすい一方、真夏は日差しが強くなるため、帽子や日傘、こまめな水分補給を心がけたいところです。逆に真冬は東北らしい冷え込みが厳しくなるため、防寒性のある服装と、路面が凍結していないかへの注意が必要になります。
歩き始める前には、軽い準備運動をしておくことも勧められています。郡山市が公開している元気路の案内でも、ウォーキング前のウォーミングアップの方法が紹介されていて、足首や膝、股関節を軽く回す、ふくらはぎやアキレス腱を伸ばすといった簡単なストレッチをするだけで、筋肉や関節への負担を減らし、けがのリスクを下げられるとされています。運動習慣が久しぶりという人ほど、最初の数分はゆっくりとしたペースから始め、体が温まってきたら普段のペースに上げていくとよいでしょう。
歩くタイミングによっても印象は変わります。早朝の開成山公園は空気が澄み、ランニングやウォーキングに励む地元の人たちの姿も多く、静かな活気に満ちています。日中は観光客や親子連れで賑わい、公園全体がより開放的な雰囲気になります。夕方から夜にかけては、特に桜のシーズンであればライトアップされた木々が水面に映り込み、昼間とはまったく異なる表情を見せてくれます。同じ2.3kmのコースでも、歩く時間帯によって受け取る印象が変わるので、何度も訪れて自分に合う時間帯を見つけてみるのも一つの楽しみ方です。
水分補給についても、公園内には自動販売機やトイレなどの設備が整っているため、長時間歩く場合でも困ることは少ないでしょう。とはいえ、真夏の時間帯は熱中症のリスクもあるため、飲料水を持参し、こまめに休憩を取りながら歩くことが望ましいところです。友人や家族と連れ立って歩けば、会話を楽しみながら自然とペースが緩み、無理のない運動強度を保ちやすくなります。「遊・悠・友」という元気路の名称そのものが、こうした歩き方を体現していると言えるでしょう。
ウォーキングの目安は1日8000歩、うち速歩き20分が効果的
視点を変えて、ウォーキングそのものが心身にどんな効果をもたらすのかを整理しておきます。厚生労働省が示す「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」では、成人において1日60分以上の身体活動、そして1日8000歩以上を歩くことが目安として示されています。運動強度を表す「メッツ」という指標で見ると、座って安静にしている状態を1.0メッツとした場合、普通に歩く速さ、15分でおよそ1kmのペースはおよそ3.0メッツに相当するとされています。特別なトレーニングをしなくても、日常的に歩くだけで一定の運動強度を確保できるということです。
東京都健康長寿医療センター研究所が行った「中之条研究」という長期にわたる調査では、高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の管理には、1日8000歩、そのうち速歩きなど中強度の活動を20分程度含めることが特に役立つという結果が示されています。単に歩数を稼ぐだけでなく、多少息が弾む程度のペースで歩く時間を意識的に組み込むことが、健康づくりのポイントだと言えそうです。
身体活動量が多い人、日常的に運動をしている人ほど、総死亡率だけでなく、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、さらには結腸がんといった疾患の罹患率や死亡率が低い傾向にあることも、各種研究で確認されています。ウォーキングは激しい運動が苦手な人や、運動習慣のなかった人でも始めやすい点が利点で、その意味で、景色が美しく歩くモチベーションを保ちやすい開成山公園のようなコースの存在は、運動を続けるうえで大きな後押しになります。
ウォーキングが続けやすい運動だとされる理由の一つに、景色が変わるという単純な事実があります。屋内のトレッドミルで黙々と歩き続けるのと、四季ごとに姿を変える桜や香り立つバラ、静かな湖面、歴史を刻んだモニュメントを横目にしながら歩くのとでは、体感する疲労感も継続へのモチベーションも変わってきます。開成山公園の外周コースは、わずか2.3kmという距離の中に水辺、花、信仰、歴史、スポーツ施設といった多様な要素が詰め込まれているため、同じコースを繰り返し歩いても飽きが来にくいのが特徴です。今日は桜のつぼみの膨らみ具合を確認し、次の週には満開の様子を眺め、初夏にはバラの香りに包まれる、そうした季節の移ろいを定点観測できることも、公園を舞台にしたウォーキングコースならではの魅力だと言えるでしょう。
開成山公園コースは歩くたびに安積開拓の歴史と再会できる
開成山公園の外周コースを歩くという行為は、単なる運動にとどまらない意味を持っています。かつて荒れ地だった安積の地を、地元商人たちが私財を投じて切り拓き、そこに国家的な事業として疏水が引かれ、灌漑用の池が掘られ、開拓者たちの心のよりどころとして神社が建てられ、記念に植えられた桜が140年以上の歳月を経て今なお咲き誇っている、その積み重ねられた歴史の上を、私たちは何気なく散歩していることになります。
日本遺産の構成文化財に認定されるほどの歴史的価値を持つ公園を、入園料もかからず日常のウォーキングコースとして気軽に利用できるのは、郡山市民にとって恵まれた環境だと言えます。桜の季節には花見客で賑わい、バラの季節には芳香に包まれ、野球やプールでは市民が汗を流し、そのすぐ隣を静かに歩く人がいます。一つの公園の中に多様な過ごし方が共存している様子こそ、開成山公園と、それを舞台にした元気路の魅力の中心にあるものかもしれません。
これから郡山市を訪れる旅行者にとっても、開成山公園の外周コースは観光と運動、歴史学習を一度に満たしてくれる選択肢になります。郡山駅からのアクセスも良く、駐車場も整っているため、旅の合間や出張の隙間時間にふらりと立ち寄り、2.3kmほどの周回コースを歩いてみるだけでも、この街が歩んできた開拓の物語の一端に触れることができるでしょう。さらに時間と体力に余裕があれば、11.8kmの「開成山から行く公園めぐりコース」に挑戦し、せせらぎこみちや南川渓谷まで足を延ばしてみるのもよいでしょう。
なお、郡山市が整備している「せせらぎこみち」は、開成山公園を巡るロングコースだけに限らず、市内各所の水辺空間として位置づけられています。人と自然との共生、そして防災性の向上にも配慮しながら、地域の歴史を学び、体感し、誇りと愛着を感じられる水辺空間として設計されているのが特徴で、住宅地の隙間を縫うように整備された遊歩道は、生活道路や散歩道、通勤・通学路として日常的に利用されてもいます。ウォーキングコースというと観光客向けの特別な道をイメージしがちですが、こうした市民の生活動線そのものがコースの一部に組み込まれているところに、郡山市の元気路の懐の深さが表れています。特別な日にだけ歩く道ではなく、毎日の暮らしの中で自然と足を運んでしまう道、それこそが元気路本来の目的にもっとも近い姿なのかもしれません。
郡山市が市民の声から生み出した「元気路」という仕組みは、こうして訪れる人それぞれのペースと目的に応じた歩き方を受け止めてくれる、懐の深いウォーキング文化として根づいています。福島県内でウォーキングコースを探しているなら、まずは開成山公園の外周コースから歩き始めてみるとよいでしょう。









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