愛媛県の上島町にある弓削島には、潮風ウォーキングコースという散策路が島内に八つ整備されています。国立弓削商船高等専門学校の講師が中心となってまとめた「上島町ウォーキングマップ」に掲載されたコース群で、正式名称は「心地良い潮風感じるウォーキングコース八選」といいます。もともとは町民の健康増進を目的に作られたもので、多くは1時間以内で歩ける距離に設定されているため、登山装備がなくても気軽に挑戦できます。上島町は弓削島・佐島・生名島・岩城島・赤穂根島・魚島・高井神島という7つの有人島と18の無人島からなる、行政区域のすべてが島という珍しい自治体です。しまなみ海道の本線から少し外れているぶん訪れたことがない人も多いのですが、そのぶん瀬戸内海らしい穏やかな海と港町の暮らしがそのまま残っています。この記事では、弓削島の潮風ウォーキングコースを軸に、上島町へのアクセス方法から歴史、グルメ、周辺の島々の楽しみ方までをまとめます。

上島町は瀬戸内海に浮かぶ25島からなる「全部離島」の自治体
上島町は愛媛県の最北東部に位置し、瀬戸内海に浮かぶ25の島々からなる自治体です。行政区域がすべて島で構成される「全部離島の町」というのが大きな特徴で、海上では広島県尾道市や福山市とも隣接しています。現在の上島町は、2004年10月1日に弓削町・生名村・岩城村・魚島村の4つの町村が合併して誕生しました。気候は瀬戸内海式気候で、年間平均気温はおよそ15〜16度、年間降水量は1,000ミリ前後と雨が少なく温暖です。冬場もほとんど積雪がなく、一年を通じて島歩きを楽しみやすい環境が整っています。この穏やかな気候こそ、上島町でウォーキング文化が根付いた背景のひとつといえるでしょう。
2022年開通の岩城橋で4島が陸路一本につながった
弓削島・佐島・生名島の3島はすでに橋でつながっており、以前から自由に行き来できました。そこに2022年3月20日、生名島と岩城島を結ぶ「岩城橋」が新たに開通し、弓削島・佐島・生名島・岩城島という4つの有人島が陸路で一本につながりました。岩城橋は全長916メートル、幅7.5メートルの斜張橋で、総事業費はおよそ183億円にのぼります。主塔の高さは約137.5メートルに達し、斜張橋としては国内トップクラスの高さです。この4島を結ぶルートは「ゆめしま海道」と呼ばれ、しまなみ海道の東側に位置することから「ミニしまなみ」という愛称でも親しまれています。
弓削島へは家老渡フェリーで片道100円、20〜30分間隔
弓削島への交通手段は、フェリーまたは高速艇が中心です。代表的なルートが、広島県尾道市因島の家老渡港と弓削島の上弓削港を結ぶ「家老渡フェリー」で、朝早くから夜まで20〜30分間隔(ラッシュ時は20分間隔)で運航しています。運賃は大人片道100円、自転車は180円、バイクは250円、自動車は車種に応じて620円から1,030円程度と、気軽に利用できる価格です。今治港から岩城港・佐島港・弓削港・生名港・尾道方面の土生港までを結ぶ「芸予汽船」の航路もあり、今治市街地からしまなみ海道の島々を経由してアクセスしたい場合に便利です。このほか「ニューうおしま」など、上島町内の島々と魚島群島とを結ぶ航路も複数運航されています。自動車やレンタサイクルを使う場合は、尾道方面から因島経由で家老渡港へ向かい、フェリーで弓削島に上陸したのち、ゆめしま海道を使って佐島・生名島・岩城島へと橋を渡っていく周遊ルートが定番です。上島町観光協会が運営する公式サイト「瀬戸内かみじまトリップ」で、時刻表の最新情報を確認してから訪れると安心です。
潮風ウォーキングコースは8コース、多くが1時間以内で歩ける
潮風ウォーキングコースは、弓削島・佐島・生名島・岩城島という4つの有人島それぞれから2コースずつ、合計8つのコースを選定して紹介する構成になっています。普段は車で通り過ぎてしまう島の風景を、自分の足で歩くことで再発見してもらおうという狙いが込められています。弓削島の潮風ウォーキングコースは、海沿いの松林や港町の細い路地、島の高台から瀬戸内海を見渡せるビュースポットを組み合わせたルートです。自動車道路とは別に、島独自の生活道や旧道を通ることも多く、地元の人々の暮らしの気配を感じながら歩けます。コースの詳細な地図は、上島町公式ホームページや観光協会の窓口で入手できます。当日はゆげ海の駅舎「ふらっと」など島の玄関口となる施設で最新の地図をもらってから歩き始めるのがおすすめです。歩く速度は自転車や自動車よりもずっとゆっくりだからこそ、道端の花や石垣の積み方、庭先に干された海苔、路地の奥から聞こえる潮騒といった、通り過ぎるだけでは気づけない島の細部に目が向きます。
法王ヶ原と松原海水浴場が弓削島コースの中心
潮風ウォーキングコースを歩くうえで欠かせないスポットが、島の中央部に広がる「法王ヶ原(弓削の松原)」です。愛媛県の名勝にも指定されている松林で、青々とした松と白い砂浜のコントラストが美しい場所です。この松原に隣接する海岸が「松原海水浴場」で、環境省の「快水浴場百選」にも選ばれた、水質・景観ともに優れたビーチです。国立弓削商船高等専門学校のすぐ東側に位置し、キャンプ場も整備されているため、夏場は海水浴やキャンプで多くの人が訪れます。島の東側に開けた砂浜であるため、海から昇る朝日を眺められるのもこのエリアの魅力です。
弓削大谷のビューポイントは燧灘のパノラマが見える
弓削島の東側、大谷方面へと続く県道沿いには、点在するビューポイントを巡りながら歩けるルートがあります。決して緩やかとは言えない坂道を上りきると視界が一気に開け、燧灘の雄大なパノラマが広がります。いくつもの島影が折り重なる瀬戸内海らしい景色を独り占めできる、島歩きならではのご褒美スポットです。「弓削大谷」と呼ばれるこのエリアは、燧灘や周辺の海域を見渡せる景勝地として知られており、水平線の向こうに小さな島々が点々と浮かぶ光景を楽しめます。特に早朝、朝日が海面を照らす時間帯の眺めは格別で、潮風ウォーキングコースを早朝に歩き、日の出とともに大谷からの景色を眺めるという楽しみ方をする旅人も少なくありません。
弓削島の旧称は串島、古くから風待ちの島として栄えた
弓削島は、現在の名で呼ばれるようになる以前、「串島(くしじま)」という名で呼ばれていたと伝えられています。その名残は、島内に残る「久司山(くしやま)」「久司浦(くしうら)」といった地名に今も見ることができます。文献上「弓削」という名称が確認できる最古の記録は平安時代の1135年、京都・東寺に伝わる「東寺百合文書」に見られるもので、それ以前の島の呼び名を伝える貴重な手がかりが、これらの地名です。弓削島は「風待ちの島」とも呼ばれてきました。瀬戸内海を行き交う船にとって、風向きや潮流の変化を待つための寄港地は航海上欠かせない存在で、島々の入り江や港はそうした船の休息地として古くから機能してきました。港町に残る細い路地や古い家並みを潮風ウォーキングコースで歩いていると、海運と共にあった島の暮らしの痕跡を随所に感じ取ることができます。
ゆげ海の駅舎「ふらっと」は全国初の海の駅、24時間利用可能
弓削港の桟橋のすぐそばにある「ゆげ海の駅舎 ふらっと」は、島を訪れる旅行者にとって重要な拠点です。全国で初めて建てられた「海の駅」の駅舎として知られ、24時間利用できるトイレ、シャワー、コインランドリーなどが完備されており、フェリーやヨットで訪れる旅人にとって心強い存在となっています。2階にはテラスが設けられ、ゆめしま海道でつながる島々とそれを結ぶ橋を一望できる展望スポットにもなっています。潮風ウォーキングコースを歩く前後に立ち寄り、休憩や情報収集の拠点として活用するとよいでしょう。
弓削神社の鳥居は参道でなく海に向いて建つ
法王ヶ原の松林の中、燧灘に面した場所に鎮座するのが「弓削神社」です。創建年代は明らかになっていませんが、1311年(応長元年)の記録に登場する「濱戸宮(はまどのみや)」がその前身にあたるとされています。一般的な神社とは異なり、参道ではなく海に向かって鳥居が建てられているのが特徴で、瀬戸内海を望むロケーションと相まって独特の神聖な雰囲気を漂わせています。
弓削道鏡伝説と塩の荘園としての歴史
弓削神社は、奈良時代に権勢をふるったことで知られる僧・弓削道鏡(ゆげのどうきょう)にまつわる伝説とも結びついています。道鏡は弓削氏の出身とされ、その出自が弓削島の地名の由来のひとつとも語られています。伝承によれば、かつて標高およそ300メートルの真山に道鏡と称徳天皇(孝謙天皇)を祀る社がありましたが、参拝の不便さから現在の弓削神社の場所に遷されたとされています。そもそも「弓削」という地名は、日本書紀にも登場する弓矢を作る職能集団「弓削部(ゆみべ)」に由来するという説が有力です。弓削島は鎌倉時代、京都・東寺の荘園「弓削島荘」として塩の生産が行われ、その塩が東寺へ貢納される「塩の荘園」として歴史書にもその名を残してきました。港町の路地を歩きながら、こうした古い歴史に思いを馳せるのも潮風ウォーキングコースの楽しみ方のひとつです。
国立弓削商船高専は1901年創立、120年超の歴史を持つ
松原海水浴場のすぐ西側に隣接する「国立弓削商船高等専門学校」も、弓削島を語るうえで欠かせない存在です。その歴史は1901年に「弓削海員学校」として設立されたことに始まります。1902年には弓削甲種商船学校に改称され、1908年には愛媛県に移管されて愛媛県立弓削商船学校となりました。1930年には機関科が設置され、1940年には文部省の直轄校となるなど、時代とともに組織の位置づけを変えながら歩みを重ねてきました。1951年に弓削商船高等学校となった後、1967年に国立の高等専門学校へと昇格し、航海学科・機関学科を擁する現在の弓削商船高等専門学校となりました。小さな離島にありながら100年以上にわたって船乗りを育成し続けてきたこの学校の存在は、弓削島が古くから海運と深く結びついた島であったことを示しています。潮風ウォーキングコースの一部は、この学校の周辺や松原海水浴場を通るルートにもなっており、キャンパスの脇を歩きながら島と海運の歴史に触れることができます。
国史跡弓削島荘遺跡は2021年指定、中世の製塩を伝える
弓削島の歴史をより深く知るうえで欠かせないのが、2021年10月11日に国の史跡として正式に指定された「弓削島荘遺跡」です。弓削島荘は、瀬戸内海の芸予諸島東端に位置する上島諸島の中でも重要な中世荘園のひとつで、年貢として米だけでなく塩が納められていたことで知られています。1188年から1189年にかけて行われた検注の記録によれば、年貢は米と塩373石で構成され、他の税も塩で代納できるとされるなど、塩が荘園経済の中心を担っていたことがわかっています。平安時代末期、弓削島は白河院ゆかりの荘園でしたが、その後、弘法大師空海を深く崇敬していた宣陽門院によって、1239年に京都・東寺へと寄進されました。これが「東寺領弓削島荘」としての歴史の始まりで、以後、室町時代に至るまで東寺の荘園として存続することになります。弓削島荘遺跡には、当時の塩田や東寺関連文書に記録された寺院の痕跡が今も残されており、瀬戸内海における中世の製塩と海上交通の実態を知るうえで貴重な遺跡として評価されています。潮風ウォーキングコースの周辺を歩いていると、こうした中世からの塩づくりの歴史が、現在も特産品「東寺献上 弓削塩」として受け継がれていることに気づかされます。
ゆげ島四国八十八ヶ所は石仏を辿る静かな遍路道
弓削島には、四国八十八ヶ所霊場を島の中に見立てて再現した「ゆげ島四国八十八ヶ所」と呼ばれる巡礼地があります。こうした「島四国」あるいは「新四国」と呼ばれるミニ霊場は、小豆島や伊予大島など瀬戸内海の島々に多く見られる文化で、遠く四国まで渡れない人々のために、島内を巡るだけで八十八ヶ所を巡拝したのと同じご利益が得られるようにと作られたものです。弓削島の島四国も、地域の人々の信仰と生活の歴史を今に伝える貴重な文化財で、これを巡るお遍路道も島内を歩いて回るひとつのウォーキングルートとして楽しめます。石仏や祠が点在する小径を辿りながら、静かな島時間を味わってみてください。
弓削海苔と東寺献上弓削塩が島を代表する特産品
歩き疲れた体に染みわたるのが、島ならではの食文化です。弓削島は愛媛県内でも有数の海苔の産地として知られています。海苔の養殖は毎年10月半ば頃の種付けから始まり、11月から翌年2月頃にかけて収穫・加工作業が行われます。厚みがあり食べ応えのある「弓削海苔」は、味付け海苔、焼き海苔、佃煮、海苔スープなど幅広い商品展開がされており、島の土産物としても定番です。もうひとつの名物が、古代の製塩法を忠実に再現して作られた「東寺献上 弓削塩」です。前述の通り、弓削島はかつて東寺へ塩を貢納する荘園だった歴史を持ちますが、その伝統的な製塩技術を現代によみがえらせた塩で、まろやかな味わいが特徴です。このほか、摘み菜を使ったクッキーや、島で育てたキクイモを使った加工品、はっさくを使ったマーマレードなど、島の恵みを生かした特産品が数多く作られています。
しまでカフェのレモンポークソテーが人気
グルメスポットとしては、海沿いに佇む「しまでカフェ」が有名です。テレビや雑誌でもたびたび紹介されている人気店で、島で採れた新鮮な野菜や果物、摘み菜、魚介類を使った手作り料理を味わうことができます。上島町自慢のブランド豚「レモンポーク」のソテーも人気メニューのひとつで、島時間をゆったりと過ごしながら食事を楽しめます。店内には東寺献上弓削塩をはじめとした上島町や瀬戸内の特産品も並んでおり、お土産探しにも立ち寄りたいスポットです。宿泊を考えている場合は、松原海水浴場に隣接する「インランド・シー・リゾート フェスパ」も選択肢のひとつになります。小高い丘の上に建つリゾート型の宿泊施設で、天然温泉や瀬戸内の海の幸を生かした料理に定評があり、部屋やテラスから見渡す多島美の景観も評判です。
ゆめしま海道で佐島・生名島・岩城島まで足を延ばせる
弓削島だけでなく、橋でつながった佐島・生名島・岩城島まで足を延ばすのも、上島町の島旅の醍醐味です。ゆめしま海道はしまなみ海道と比較して交通量が少なく、のんびりとサイクリングやドライブを楽しめる穴場ルートとして注目を集めています。岩城橋の開通によって、弓削島から橋を渡り続けるだけで4つの島すべてを周遊できるようになりました。それぞれの島には個性があり、佐島には静かな漁村風景、生名島には海水浴場やキャンプ場を備えた「サウンド波間田」やスポーツ合宿施設「いきなスポレク」があり、岩城島には「青いレモンの島」という愛称の通り、柑橘栽培が盛んな段々畑の風景が広がっています。潮風ウォーキングコースは弓削島だけでなく佐島・生名島・岩城島それぞれにも設定されているため、時間が許すなら島を渡り歩きながら、島ごとに異なるウォーキングコースを歩き比べてみるのも面白いでしょう。
積善山展望台は標高369メートル、桜およそ3000本
岩城島の中央にそびえる「積善山」は標高369メートル、通称「岩城富士」とも呼ばれる山で、山頂の積善山展望台からは360度の大パノラマが広がります。眼下には瀬戸内海に浮かぶ島々、遠くには中国山地や四国山地までも望むことができ、ゆめしま海道随一の眺望スポットとして知られています。春には山頂手前の駐車場付近から続く登山道沿いに、ソメイヨシノやオオシマザクラ、山桜などおよそ3000本の桜並木が咲き誇り、その光景は「天女の羽衣」と称されるほどです。長江港から徒歩ではおよそ2時間ほどの道のりですが、桜まつりの時期にはふもとから山頂近くまで臨時シャトルバスが運行されることもあります。岩城島は柑橘、とりわけレモンの産地としても知られ、そのレモンの搾りかすを食べて育てられたブランド豚「レモンポーク」は、脂身に甘みがありながら後味はさっぱりとしているのが特徴です。港の売店や地域の直売所ではレモンの香りを凝縮したレモンケーキも販売されており、島巡りの合間のおやつとしても人気があります。
サイクリングとシーカヤックも島旅の選択肢になる
上島町では、ウォーキング以外にもサイクリングやシーカヤックといったアクティビティが充実しています。ゆめしま海道はサイクリストの間でも評判が高く、しまなみ海道本線に比べて交通量が少なく走りやすいことから、「ミニしまなみ」として静かな人気を集めています。レンタサイクルも用意されているため、フェリーで手ぶらで訪れても気軽に島巡りを楽しめます。ゆめしま海道エリアには独自のレンタサイクルの仕組みが整えられており、弓削島・生名島・岩城島・魚島に設けられたレンタサイクルターミナルで自転車を借り、エリア内の別のターミナルで返却する「乗り捨て」も可能です。フェリーで弓削島に上陸してレンタサイクルを借り、ゆめしま海道を渡って岩城島のターミナルで返却するといった片道ルートを組めるのは、島を渡り歩く旅ならではの自由度の高さです。シーカヤック体験も上島町の観光メニューのひとつとして提供されています。3〜4時間程度のショートツアーのほか、1日かけて島々を巡るロングコースも用意されており、1日コースでは海に沈んでいく夕日を海上から眺めるという幻想的な体験もできます。ウォーキングで島の内側の風景を楽しんだ後、海上から島影を眺めるカヤックを組み合わせれば、陸と海の両方から弓削島の魅力を味わい尽くせるはずです。
しまなみ海道スリーデーマーチにゆめしま海道コースがある
上島町とその周辺エリアでは、毎年「瀬戸内しまなみ海道スリーデーマーチ」というウォーキングイベントが開催されており、その中には「ゆめしま海道コース」も設定されています。全国から集まったウォーカーたちが、弓削島をはじめとするゆめしま海道の島々を歩いて巡るこのイベントは、島の潮風ウォーキングコースの魅力を全国に発信する機会にもなっています。開催時期や参加方法については、上島町観光協会の公式サイトで最新情報が発表されるので、旅行の時期を合わせて参加を検討してみるのもよいでしょう。サイクリストにとっては、しまなみ海道と合わせて「瀬戸内しまなみ海道・国際サイクリング大会」も見逃せないイベントです。こちらは尾道から今治までの本線を中心とした大規模な国際大会ですが、大会の前後にゆめしま海道まで足を延ばし、静かな島々をゆっくりと走る旅程を組むサイクリストも多いといいます。ウォーキングとサイクリング、2つの視点から瀬戸内の島々を巡ることで、上島町の魅力をより立体的に味わうことができるはずです。
弓削島の潮風ウォーキングコースを歩く日帰りモデルプラン
最後に、弓削島を日帰りで満喫するための簡単なモデルプランを紹介します。まず、因島の家老渡港からフェリーで上弓削港へ渡り、上陸後はゆげ海の駅舎「ふらっと」に立ち寄って最新のウォーキングマップを入手します。そこから潮風ウォーキングコースを歩き始め、法王ヶ原の松林と松原海水浴場の白砂青松を眺めながら港町の路地を進み、弓削神社に参拝します。海に向かって建つ鳥居越しに瀬戸内海を望む景色は、この島を訪れたなら必ず見ておきたい光景です。昼食は「しまでカフェ」で島野菜と海苔、レモンポークを使った手作り料理を味わいます。午後は大谷方面の坂道を上ってビューポイントから燧灘のパノラマを堪能したのち、時間に余裕があればゆめしま海道を渡って佐島や生名島まで足を延ばし、橋の上から多島美を眺めます。夕方には港へ戻り、フェリーで対岸へ戻るというのが定番の一日の流れです。歩く距離やペースはコースによって調整できるので、体力や興味に合わせて弓削島の別のコースを選んだり、翌日には岩城島まで宿泊を伴う一泊二日のプランに広げたりするのもおすすめです。
上島町は移住先としても注目され始めている
近年、上島町には島ならではのスローライフを求めて移住する人が少しずつ増えています。柑橘栽培などの就農にチャレンジしたいという人や、島の空き家を活用してブックカフェやゲストハウスを開業する人など、新しい交流拠点も生まれつつあります。上島町は離島でありながら光回線が敷設されておりインターネット環境も整っているため、リモートワークやワーケーションの拠点としても注目されつつあります。空き家・空き地情報バンク「瀬戸内かみじまライフ」では、移住希望者向けに物件情報や暮らしの情報が発信されており、実際に島を歩いて回った旅人が、その暮らしやすさに惹かれて移住を検討するケースも少なくないといいます。潮風ウォーキングコースで島の路地や港町を歩くことは、観光としてだけでなく、島の暮らしのリアルな空気に触れる機会にもなっています。
弓削島の潮風ウォーキングコースは、しまなみ海道のような知名度こそまだ高くありませんが、瀬戸内海らしい穏やかな海と歴史ある港町の風情、地元の人々の暮らしが息づく道を、自分の足でじっくりと味わえる貴重なルートです。松原海水浴場の白砂青松、燧灘を望むビューポイント、弓削神社にまつわる古い伝説、海苔や塩といった島の恵みを生かした食文化。これらすべてを結びつけているのが、島の中に張り巡らされた潮風ウォーキングコースといえます。上島町は「全部離島の町」という特殊な成り立ちを持ちながらも、橋とフェリーによって旅人を柔軟に迎え入れてくれる場所でもあります。しまなみ海道を訪れた際には、少し足を延ばして家老渡フェリーやゆめしま海道を経由し、弓削島の潮風ウォーキングコースを歩いてみてください。中世には東寺領の荘園として塩を都へ送り、近代には商船学校が数多くの船乗りを海へ送り出し、現代ではウォーキングマップが島の風景を再発見する道しるべとなっています。時代ごとに姿を変えながらも、海と共に生きてきた弓削島の営みは、今も潮風ウォーキングコースの一歩一歩の中に息づいています。









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