みちのく潮風トレイルの大槌町ルートと城山公園・湧水を巡るウォーキングコースは、岩手県大槌町で楽しめる三陸海岸の自然美・歴史・湧水文化を凝縮した東北有数のウォーキングスポットです。全長約23キロメートルの本格的なロングトレイルから、三陸鉄道大槌駅を起点に約6.5キロメートル・所要時間約2時間30分で歩ける手軽な駅からハイキングコースまで、歩く距離や目的に応じて柔軟にコースを選べる点が大きな特徴となっています。この記事では、みちのく潮風トレイルの概要から大槌町ルートの具体的な見どころ、約280年の歴史を持つ城山公園の散策、国内屈指の湧水群と希少な生態系の観察、さらには文化庁「100年フード」に認定された新巻鮭の食文化まで、大槌町ウォーキングコースの魅力を余すところなくお伝えします。

みちのく潮風トレイルとは?全長1,000キロ超の東北沿岸ロングトレイル
みちのく潮風トレイルとは、青森県八戸市の蕪島から福島県相馬市の松川浦までの太平洋沿岸をつなぐ、全長1,000キロメートルを超えるロングトレイル(長距離自然歩道)です。2011年の東日本大震災からの復興に資するため、環境省が策定した「グリーン復興プロジェクト」の一環として整備が進められ、2019年6月9日にナショナルトレイルとして全線開通しました。
このトレイルは4県29市町村にまたがっており、東北太平洋沿岸ならではのダイナミックな海、川、里、森が連続する美しい景観を楽しむことができます。ルートは海岸トレッキングから低山の本格的な山登りまでさまざまで、仙台平野、リアス海岸、海岸段丘など多彩な地形が特徴です。黒崎、北山崎、鵜の巣断崖といった三陸随一の絶景ポイントを含んでおり、歩くことでやませや津波などの自然の脅威、地域に根ざした特有の文化、地元住民の温かなもてなしなど、「人と自然」「人と人とのつながり」を深く感じることができます。
トレイルの運営はNPO法人みちのくトレイルクラブが担っており、最新のルート情報や注意事項の発信、イベントの開催、ハイカーへのサポートなどを行っています。オンラインマップやGPSデータも公開されており、スマートフォンのGPS機能を活用して現在地とトレイルルートを照らし合わせながら歩くことが可能です。
大槌町の地理的特徴とアクセス方法
大槌町は岩手県上閉伊郡に所在し、東側で太平洋(三陸海岸)に面する町です。北上山地に源を発する大槌川と小鎚川の二つの河川がほぼ並行して南東方向へ流れ、町の中心部を貫いて太平洋の大槌湾へと注いでいます。この二つの河川が形成した河口部の扇状地に市街地が発達しており、リアス海岸特有の複雑に入り組んだ海岸線を持つことが地形上の大きな特徴です。大槌湾や船越湾といった美しい湾が点在し、秋になると大槌川や小鎚川には産卵のために鮭が遡上する光景が見られます。
2011年3月11日の東日本大震災では甚大な被害を受けましたが、その後の復興事業により町は新たな姿へと生まれ変わりました。復興市街地整備事業や災害公営住宅整備事業は全地区で完了しています。
大槌町へのアクセスは、三陸鉄道リアス線が主要な公共交通機関となっています。2019年3月23日に、東日本大震災の影響で運休が続いていたJR山田線の宮古駅~釜石駅間が復旧して三陸鉄道に移管され、三陸鉄道は「リアス線」としてひとつにつながりました。釜石駅から三陸鉄道リアス線で約20分で大槌駅に到着できます。新花巻駅からはJR釜石線で約1時間30分(快速利用)で釜石駅に到着します。車の場合は三陸自動車道「大槌」ICを利用すればアクセスが容易です。
大槌駅の愛称は「鮭とひょうたん島の町」です。東日本大震災後に再建された現在の駅舎は、町内にある蓬莱島がモデルとなったNHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」にちなみ、ひょうたん島を模した円形のデザインが採用されており、2019年2月に完成しました。駅舎内には観光案内所や飲食店も併設されています。
みちのく潮風トレイル大槌町ルートの見どころと歩き方
みちのく潮風トレイルの大槌町ルートは、北の鯨山山頂から南の小枕地区最東端まで約23キロメートルの区間として設定されています。海岸沿いの平坦な道から標高610メートルの鯨山への登山まで、多様な体験ができるルートです。大槌町ルートにはMCTサポートステーション(サポーターズ)が11箇所、スタンプポイントが8箇所設置されており、地元住民や商店が協力してハイカーの休憩やトイレ利用、水の補給、携帯電話の充電、無料駐車場の利用、有料の車両移送サービスなどを提供しています。大槌漁港のそばにある魚屋もスタンプポイントの一つとなっており、地元で水揚げされた新鮮な海産物を購入することもできます。また、湧水の町・三陸大槌の天然水を使ったお風呂施設では、スタンプ利用者に入浴料金から100円引きのサービスを提供しているなど、地域ぐるみでハイカーを歓迎する体制が整っています。
東北100名山・鯨山の山頂から望む三陸の絶景パノラマ
大槌町と山田町の境に位置する鯨山は、標高610メートルの東北100名山の一つです。登山口はベルガーディア鯨山(浪板海岸駅から徒歩約7分)にあり、表参道コースで山頂を目指します。山頂には二等三角点標識が設置されており、晴天時には浪板海岸、吉里吉里海岸、大槌湾、船越湾、さらには早池峰山まで見渡すことのできる壮大な絶景が広がります。登山道には定期的に方向を示すマーカーが設置されており、安全に歩くことができます。
ベルガーディア鯨山と復興のシンボル「風の電話」
鯨山の登山口に位置するベルガーディア鯨山は、三陸海岸を見下ろす丘の上にある庭園施設です。ここには「風の電話」と呼ばれる私設の電話ボックスが設置されています。これは2010年に庭師の佐々木格氏によって設置されたもので、東日本大震災以降、亡くなった大切な人に想いを伝える場所として全国から多くの人々が訪れています。電話線はつながっていませんが、受話器を手に取り、もう会えない人へ語りかけることで心の整理をつける場として機能しています。この風の電話は映画や書籍の題材にもなり、復興のシンボルの一つとして広く知られるようになりました。
片寄せ波の浪板海岸と小説の舞台・吉里吉里海岸
浪板海岸はかつて南北800メートルに白い砂浜が広がり、松林と青い海のコントラストが印象的な三陸を代表するマリンレジャーの海辺でした。この海岸の最大の特徴は、寄せる波はあっても返す波がほとんど見られないという世界でも珍しい「片寄せ波」の現象です。東日本大震災による津波と約50センチメートルの地盤沈下により砂浜の大部分が消失しましたが、現在も独特の波の現象を見ることができ、トレイルハイカーにとって印象深いスポットとなっています。
吉里吉里海岸は大槌町の吉里吉里地区にある美しい砂浜が広がる海岸で、井上ひさしの小説「吉里吉里人」の舞台としても知られています。鯨山からの下山後に立ち寄ることができる、みちのく潮風トレイルのルート上の見どころの一つです。大槌湾に沿って歩くルートでは、リアス海岸特有の入り組んだ海岸線の景観を楽しみながら町の中心部へと向かうことができ、途中で漁港や復興の様子を間近に見ることもできます。
城山公園(大槌城跡)の歴史散策と大槌湾の展望スポット
城山公園は、大槌町の中心部に位置する標高約105メートルの山に整備された公園で、大槌氏累代の居城跡である「大槌城跡」を中心としています。平成4年(1992年)9月4日に岩手県の「史跡」に指定された、歴史的に極めて重要な場所です。
大槌城の歴史は建武年間(1334年頃)にさかのぼります。遠野横田城主の阿曽沼朝綱が次男の遠野次郎をこの地に派遣し、遠野次郎が大槌氏を名乗ったことに始まります。以後、約280年にわたってこの地を統治しましたが、元和2年(1616年)に最後の城主である孫八郎政貞が自刃して果てたことにより、大槌氏の支配は幕を閉じました。
現在は城山公園として整備されており、園内を自由に散策することができます。四季折々の草花が楽しめ、特に春にはつつじの回廊が美しい景観をつくり出します。公園内の展望台からは、大槌町の街並みはもちろん、蓬莱島(愛称「ひょうたん島」)が浮かぶ大槌湾の絶景を一望することができます。さらに、根浜や御箱崎方面まで見渡すことができ、リアス海岸の壮大なパノラマを堪能できる展望スポットです。城跡には城址広場や四阿(あずまや)が設けられており、ウォーキングの途中で休憩しながら歴史に思いを馳せることができます。城山公園の麓には城山公園体育館や大槌町中央公民館が隣接しており、地域の文化・スポーツ活動の拠点としても機能しています。
大槌湾に浮かぶ蓬莱島(ひょうたん島)の見どころ
城山公園の展望台から見渡せる大槌湾に浮かぶ蓬莱島は、大槌町を象徴する観光スポットです。周囲約200メートルのひょうたん形をした小島で、NHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルの一つとされています。
蓬莱島の歴史は古く、江戸時代には「珊瑚島」と呼ばれていました。元文3年(1738年)に盛岡藩主の南部利視公が現在の「蓬莱島」と命名しました。島には弁天神社があり弁才天像が祀られており、古くから豊漁と航行安全の守り神として地元の漁師たちから敬われてきました。昭和22年(1947年)に防波堤が建設されて島は陸地と繋がっており、現在は歩いて渡ることができます。
島に立つ高さ7.4メートルの灯台は東日本大震災で倒壊しましたが、その後に再建されました。再建にあたっては、釜石海上保安部と大槌町が協力し、町民からデザインを募集するという形で進められ、復興のシンボルとして新たな姿で生まれ変わりました。蓬莱島へのアクセスは三陸自動車道「大槌」IC下車で約10分で、大槌町赤浜地区に位置しています。大槌町は三陸ジオパークのエリアにも含まれており、蓬莱島はジオサイト72番として登録されています。さらに、2025年5月には蓬莱島周辺の海岸でブルーフラッグ認証を取得しており、環境品質や安全性が国際的に認められています。
大槌町が「湧水の町」と呼ばれる理由と湧水文化の魅力
大槌町が「湧水の町」として知られるのは、その特異な地形と地質構造に理由があります。大槌川と小鎚川に注ぐ雨水が川の伏流水とともに地下に浸透し、河口付近の扇状地から豊富に湧出するという現象が起きています。山から海への距離が短く水が急激に下降するため、海側からの圧力が抑えられ、海岸から50メートルも離れていない場所であっても新鮮な淡水を得ることができるという、地理学的にも非常に興味深い特性を持っています。
町中心部の町方(まちかた)地区では、約170箇所から180箇所もの自噴井(じふんせい)が確認されています。東日本大震災前には約90箇所が知られていましたが、震災後の調査で新たに多くの自噴井が発見されました。これほど狭いエリアにこれだけの自噴する井戸が集中しているのは、国内では他に例がないとされています。
これらの湧水は古くから生活用水として利用されてきたのはもちろん、水産加工業、酒造業、豆腐づくり、さらには鮭や鱒の孵化事業など、さまざまな産業にも活用されてきました。大槌町の名産品である新巻鮭は安土桃山時代から約400年の伝統を持ちますが、その品質を支えてきたのもこの良質な湧水です。近年では、地元で栽培した酒米と源水地区の湧水を使って醸造した純米酒「源水」が地域活性化の取り組みとして2022年に発売されるなど、湧水を活かした新たな特産品開発も進んでいます。
源水川に生息する希少な淡水型イトヨとバイカモ
源水川(げんすいがわ)は、これらの湧水が集まって形成された小河川で、三陸ジオパークのジオサイト71番「源水川(湧水)とイトヨ生息地」として登録されています。源水川とその周辺の湧水域には、絶滅危惧種である淡水型イトヨが生息しています。淡水型イトヨの生息は岩手県内では大槌町でのみ確認されており、極めて学術的価値の高い生物資源です。イトヨはトゲウオ科に属する小型の魚で、水温が一年を通じて低く安定した清流でしか生息できないため、その存在自体が湧水環境の健全性を証明する指標となっています。
また、源水川では冷水の清流のみに育つバイカモ(梅花藻)も観察することができます。バイカモはキンポウゲ科の多年生水草で、初夏から秋にかけて水中に白い梅の花に似た小さな花を咲かせます。清澄な湧水が絶え間なく供給される源水川は、バイカモの生育に適した環境を維持しており、街中にいながら清流の植物を観賞できる貴重なスポットです。
駅からハイキング「城山公園と湧水ハイク」ウォーキングコースの詳細
大槌町では、JR東日本の「駅からハイキング」プログラムとして、城山公園と湧水スポットを巡るウォーキングコースが設定されています。「眺望抜群&自然いっぱい!城山公園と湧水ハイク」と題されたこのコースは、三陸鉄道大槌駅を起点に約6.5キロメートル、所要時間約2時間30分で歩くことができます。
コースの流れとしては、大槌駅を出発してまず大槌町役場方面へ向かい、そこから城山方面へと進みます。城山公園の散策路を登っていくと城山城跡に到着し、展望台から大槌湾や蓬莱島を一望できます。その後、大ケ口を経由して下山し、源水地区のイトヨ生息地へと向かいます。源水川周辺の湧水エリアを散策した後、郷土財活用湧水エリアを巡り、大槌駅へと戻ります。
受付場所は大槌駅で、受付時間は午前9時から午後1時までです。午後4時までにゴールすることが求められています。駅からハイキングアプリで「コースに参加する」を選んで駅スタッフに画面を提示すると、専用のコースマップをもらうことができます。
このコースの最大の魅力は、約280年の歴史を持つ大槌城跡の歴史散策と、国内でも類を見ない湧水群の自然観察を一つのルートで楽しめる点にあります。城山公園では四季折々の草花に加え、特に春のつつじの回廊が見事です。一方、源水川周辺の湧水エリアでは、透明度の高い湧水の中を泳ぐ淡水型イトヨや、水中に白い花を咲かせるバイカモを間近に観察することができ、街中にいながら清流の生態系に触れることのできる貴重な体験となります。
大槌町観光交流協会では、つつじが見頃を迎える時期に合わせて「大槌の自然満喫プチハイク~つつじ回廊と湧水めぐり~」といった限定イベントも開催しており、ガイド付きでより深くこの地域の自然と歴史を学ぶ機会も設けられています。
大槌町で楽しめる2つの主なウォーキングコースの比較は以下の通りです。
| 項目 | みちのく潮風トレイル大槌町ルート | 駅からハイキング「城山公園と湧水ハイク」 |
|---|---|---|
| 距離 | 約23キロメートル | 約6.5キロメートル |
| 所要時間 | 1日~(区間による) | 約2時間30分 |
| 起点 | 鯨山山頂(北端) | 三陸鉄道大槌駅 |
| 主な見どころ | 鯨山、風の電話、浪板海岸、吉里吉里海岸、大槌湾 | 城山公園(大槌城跡)、展望台、源水川、湧水エリア |
| 難易度 | 中~上級(登山区間あり) | 初級(平易なルート) |
| 必要な装備 | トレッキングシューズ、レインウェア、水・食料等 | ウォーキングシューズ、動きやすい服装 |
大槌町の新巻鮭文化と文化庁「100年フード」認定の背景
大槌町を語る上で欠かすことのできない食文化が、約400年の歴史を持つ新巻鮭(あらまきざけ)です。新巻鮭の起源は安土桃山時代にさかのぼり、当時の領主であった大槌孫八郎が、この地で獲れる鮭を江戸に送り特産品として売り出すことを考案したのが始まりとされています。鮭に塩をまぶし、三陸の冷たい潮風で干し上げることで旨味を凝縮させる製法は、現在に至るまで基本的に変わっていません。
大槌町の新巻鮭は「南部鼻曲がり鮭の新巻鮭」として知られています。「鼻曲がり鮭」とは、産卵のために川を遡上する時期になると上あごが鉤状に曲がるオスの鮭のことで、この時期の鮭は身が引き締まり脂の乗りも良いため、新巻鮭の原料として最適とされてきました。大槌町では毎年冬になると新巻鮭づくりの作業が町の風物詩として各所で見られ、潮風に揺れる鮭の姿は三陸の冬を象徴する光景となっています。
この伝統は生産者の間だけで守られてきたわけではありません。大槌町では地元の小学校において新巻鮭づくりの体験学習活動が行われており、次世代への文化継承にも積極的に取り組んでいます。こうした長年にわたる伝統の維持と地域ぐるみの継承努力が認められ、大槌町の「南部鼻曲がり鮭の新巻鮭」は文化庁の「100年フード」に認定されました。100年フードとは、地域の食文化を未来に向けて100年続けていくことを目指す文化庁の認定制度であり、大槌町の新巻鮭が全国的にも高い文化的価値を持つことが公的に認められたことを意味しています。
大槌町の良質な湧水は新巻鮭の生産にも深く関わっています。湧水は鮭の孵化事業に利用されており、水温が安定した清澄な水が稚魚の健やかな成長を支えています。ウォーキングコースで湧水スポットを巡りながら、この地域の食文化の背景にある湧水と鮭の深い関係を理解できる点も、大槌町を歩く大きな魅力です。
文化交流センター「おしゃっち」で学ぶ震災伝承と復興の歩み
大槌町の復興を象徴する施設が、大槌町文化交流センター「おしゃっち」です。「おしゃっち」という愛称は、大槌の中心エリアを指す地名「御社地(おしゃち)」にちなんで名付けられました。木造3階建ての建物で、1階に多目的ホール、2階に会議室と震災伝承展示室、3階に図書館が設置されています。
震災伝承展示室では、東日本大震災の記録と教訓を後世に伝えるための展示が行われており、震災前の大槌町の姿、被災の状況、そして復興への歩みを学ぶことができます。ウォーキングの前後に立ち寄ることで、この町の歴史と現在をより深く理解することができます。
大槌町は東日本大震災からの復興の中で、防潮堤の整備、高台への住居移転、商業施設の再建など、ハード面の復興を着実に進めてきました。同時に、みちのく潮風トレイルの整備やサポートステーションの設置、駅からハイキングコースの提供など、観光面での取り組みも積極的に展開しています。安土桃山時代から400年の伝統がある新巻鮭に代表される食文化、湧水を活かした産業、そして三陸の美しい自然環境を観光資源として活用することで、持続可能な地域づくりを推進しています。
三陸ジオパークのジオサイトを巡る大槌町ウォーキングの楽しみ方
大槌町は三陸ジオパークのエリアに含まれています。三陸ジオパークは、青森県八戸市から宮城県気仙沼市にかけての三陸沿岸地域を対象とした日本ジオパークネットワーク認定のジオパークであり、日本列島が形成された地球変動の歴史を物語る重要な地層や地形が分布しています。
大槌町内では、ジオサイト71番「源水川(湧水)とイトヨ生息地」とジオサイト72番「蓬莱島」の2箇所がジオサイトとして登録されています。これらのジオサイトは、みちのく潮風トレイルや城山公園の湧水ハイキングコースと組み合わせて巡ることができ、地質学的・生態学的な視点から大槌町の自然環境を理解するための格好の教材となっています。
ジオサイトを巡りながら大地の営みを体感し理解するというジオパークの理念は、ウォーキングという体験型の観光スタイルと非常に親和性が高いものです。城山公園から眺める大槌湾のリアス海岸地形、源水川の湧水システム、蓬莱島の地質学的成り立ちなど、歩きながら地球科学を学べる点が大槌町ウォーキングコースの大きな魅力となっています。
大槌町ウォーキングコースの季節ごとの見どころと実用情報
大槌町のウォーキングコースは、季節ごとに異なる魅力を楽しむことができます。春は城山公園のつつじの回廊が見事で、桜の季節も楽しめます。初夏から秋にかけては源水川のバイカモが水中に白い花を咲かせ、清流の美しさを堪能できます。夏は海岸沿いのルートが気持ちよく、鯨山山頂からの眺望も素晴らしい季節です。秋は紅葉に彩られた山道のウォーキングが楽しめるほか、大槌川や小鎚川を遡上する鮭の姿を見ることもできます。冬は三陸の風物詩である新巻鮭の生産風景が各所で見られますが、積雪や凍結には注意が必要です。
服装と装備については、城山公園と湧水ハイキングの約6.5キロメートルのコースは比較的平易なルートであり、動きやすい服装とウォーキングシューズがあれば十分に楽しめます。一方、みちのく潮風トレイルの大槌ルート全23キロメートルを歩く場合や鯨山への登山を含む場合は、トレッキングシューズ、レインウェア、十分な水と食料などの登山に適した装備が必要となります。
宿泊については、大槌町内および周辺の釜石市、山田町には旅館や民宿が点在しています。みちのく潮風トレイルのルート上にはトレイルオアシスやキャンプ場なども設定されています。食の楽しみとしては、大槌漁港で水揚げされた新鮮な海産物、名物の新巻鮭、湧水を使った豆腐や地酒「源水」など、この土地ならではの味覚を堪能できます。大槌駅舎内にも飲食店が併設されており、ハイキングの前後に地元の味を楽しむことができます。
みちのく潮風トレイルを安全に歩くための準備と注意事項
みちのく潮風トレイルは地図を見て歩くことを基本として設計されたトレイルです。歩く前にはNPO法人みちのくトレイルクラブが発行している「みちのく潮風トレイル Hiking Map Book」を用意することが推奨されています。YAMAPやヤマレコなどの登山アプリに掲載されているルートは公式ルートとは異なる場合があるため、必ず公式の地図と照合することが重要です。
計画を立てる際には、歩く区間の設定、水や食料の補給ポイント、宿泊場所などの基本情報を事前に収集しておくことが大切です。特に暗くなる前に歩行を終えるようスケジュールを組むことが安全確保の基本となります。
安全面では、海岸沿いのルートで天候や潮位によって波が高くなることがあり、降雨時には沢の水量が増えて徒渉が困難になる場合もあります。高潮時や増水時には迂回路を利用し、潮位表を事前に確認しておくことが大切です。携帯電話の電波が入らない場所も多いため、GPSと併せて紙の地図とコンパスを必ず携帯してください。防寒着、雨具、携帯ライト、充電器、水、携行食をバックパックに入れておくことも重要な安全対策です。
マナーの面では、みちのく潮風トレイルの多くの区間が人々の暮らしている生活空間の中を通過しているという認識が大切です。休憩時には地面への影響を最小限にするよう心がけ、キャンプは指定されたキャンプ場か土地の所有者や地域住民から許可を得た場所で行う必要があります。ゴミは必ず持ち帰り、地域の人々との交流を大切にしながら歩くことが、トレイル文化を持続可能なものにしていくために大切な心構えです。









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